【感想・ネタバレ】仁義なきキリスト教史のレビュー

あらすじ

「おやっさん、おやっさん、なんでワシを見捨てたんじゃ~!」(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)──イエスの絶叫から約二千年、人類の福祉と文明化に貢献したキリスト教は、一方できわめて血なまぐさい側面を持つ。イエスの活動、パウロの伝道から、十字軍、宗教改革まで、キリスト教の歴史をやくざの抗争に見立てて描く、一大歴史エンターテインメント!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書はまさに企画の勝利です。
キリスト教という世界一有名な宗教の歴史をたどれば、裏切り、磔、派閥抗争、魔女裁判、十字軍など血塗られたやくざ抗争とそん色ないという発想から聖書をエンタメ化したのが、本書です。
世界一読まれている聖書ですが、書かれている内容は素人には意味不明。
今なお聖書内の同じ文章でも宗派や解釈によっては真逆の説明も可能になるという玉虫色の経典が2000年にわたって伝承されているという不思議。
私も、高校のころ旧約聖書の頭から読もうとしてわけがわからなくて途中で挫折しただけに、本書のような物語性のあるエンタメ化は大歓迎です。
各章ごとの解説や石川氏のあとがき(文庫版だけかな?)が、想像以上に学術的でまじめな点もプラスポイントです。
広島県出身の作者が怪しい広島弁を駆使し(本人談)、「仁義なき戦い」のセリフを勉強して書き上げた本書は、世界の人口の3人に一人の信者を持つキリスト教が過去に戦争・虐殺・奴隷制・差別・非科学性を正当化しながらも、一方では救いを求める迷える人間に無償の愛を与えるというウルトラCを発揮した聖書の謎の一端に迫ります。

本書が単行本で発売されたのが2014年ですが、次は同じヤハウェという神を持ち、同じエルサレムという聖地を持つ世界第2の宗教、イスラム教(キリスト教信者は23億人に対して17億人)での第2弾のやくざ抗争史をお願いしたいものです。
イスラム教は、現在進行形のスンニー組とシーア組のヤクザの縄張り的な抗争が民族や国をまたいで行われており、異教徒よりも異宗派への憎悪が強いという特殊な武闘組織であるという点では、より複雑でやくざ的な特徴が出ているような気がしますので。

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2019年06月21日

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