【感想・ネタバレ】仁義なきキリスト教史のレビュー

あらすじ

「おやっさん、おやっさん、なんでワシを見捨てたんじゃ~!」(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)──イエスの絶叫から約二千年、人類の福祉と文明化に貢献したキリスト教は、一方できわめて血なまぐさい側面を持つ。イエスの活動、パウロの伝道から、十字軍、宗教改革まで、キリスト教の歴史をやくざの抗争に見立てて描く、一大歴史エンターテインメント!

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キリスト教2000年の歴史を任侠小説に仕立て上げた異色の作品。任侠系団体キリスト組!が登場する。

キリスト教史は、遥か遠い聖なる世界の話のように思われるが、実態は世俗の人間ドラマである。キリスト教も、所詮人が作りし宗教に過ぎないということを否応なく認識させてくれる。独特の宗教用語を、任侠用語に置き換えるだけで急に身近に感じられ、最後まで興味深く読み通すことが出来た。宗教を学ぶ際には、専門語を自身に近い概念に置き換えて考えると、より理解が捗ると思われる。

著者も後書きで触れているように、本書は学術的な正確さよりもエンタメ性を重視しており、鵜呑みに出来ない記述は多々あろう。それでも、キリスト教入門の第一歩として、本書は最良の一冊であると考える。

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2025年07月19日

Posted by ブクログ

本書はヤクザ抗争史として描くキリスト教二千年の歴史であります。罰当たり必至のまさに神をも恐れぬ本書ですが、全編広島弁のヤクザ言葉で聖人達が繰り広げるやり取りに、剥き出しの「人間的」な物を感じます。




いやはや…。こんな罰当たり必至、まさに神をも恐れぬキリスト教史は前代未聞。空前絶後でありますが、ベラボーに面白いことは否定できません。

本書は「やくざ抗争史」として描かれるキリスト教2000年の歴史を「小説」という形で綴ったものであり、僕は一種の背徳感を旨に感じつつ、時に大笑いしながら一気に読み終えてしまいました。

例えばイエス・キリストが磔刑に処された有名な場面。イエスが息を引き取る際、天を仰いで言ったとされる
「エリ。エリ。レマ。サバクタニ。(我が神。我が神。何故に私をお見捨てになられたのですか。)」
も本書における広島弁のヤクザ言葉に翻訳すると
「おやっさん……おやっさん……なんでワシを見捨てたんじゃあ!」
という仕儀に相成ってしまいます。

要を言ってしまえば、徹頭徹尾に渡ってキリスト教における聖人達が広島弁(筆者によると「部分的に福山弁が混じっている可能性は否めない。」とのこと)のヤクザ言葉で語り合い、罵り合う。その様子はまさに「仁義なき戦い」の世界が展開されているのであります。

ただ、浅学ながらキリスト教の歴史を俯瞰しますと、相当血腥い要素を含んでいるという部分は否めないものでありまして、「神」の名の下に凄惨かつ血みどろの戦いを繰り広げているので、本書に記されている広島弁のヤクザ言葉によってその『人間的な』部分が強調されており、より「剥き出し」になっているという感想を持ちました。

イエスの生涯とその死。初期の伝道師達、特にパウロがキリスト教というものを広め、やがてローマ帝国による苛烈な弾圧を経て国教としてキリスト教が認められるようになり、時を経て王と教皇が「叙任権」を巡って闘争劇を繰り広げる様子。世に言う『カノッサの屈辱』のあらましを僕はここで理解することができました。

さらに、ふとしたボタンのかけ違いが重なって同じキリスト教徒がいる街を攻め落とした第四回十字軍。
「あいつら、言うてみりゃ人の罪でメシ食うとるんで」
と不敵にのたまうルター(本書では『極道ルター』となっている)による宗教改革により、プロテスタントが生まれ、カトリックとの宗教戦争へと突入する…。巻末には「インタビュー・ウィズ・やくざ」と題し、バチカンのローマ教皇へのインタビューという形式で現在の
「ローマ・カトリックを中心とするキリスト教世界」
が綴られているのです。ここでも当然、広島弁のヤクザ言葉全開であります。

ここまでのことを通常のキリスト教に関するテキストで勉強すると、まず退屈のあまりに眠くなってしまいそうですが、(かなりのエンターテイメント性を盛り込みつつも)「やくざ」というキーワードの下に力づくで纏め上げて行くとかくも面白いのかと。それを成し遂げた筆者の努力と力量にも、目を向けるべきでありましょう。

ただし、いつ本書が『発禁』の憂き目に遭うかも知れませんので、もし興味をお持ちになって読もうとされる場合には、どうぞお早めにと、最後に付け加えさせていただきます。

※本書は2016年12月7日、筑摩書房より『仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫 か 54-4)』として文庫化されました。

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2025年04月08日

Posted by ブクログ

題名のとおり、キリスト教史を仁義なき戦いのノリで極道に見立てて書かれた一冊。
エンターテイメントとしての完成度が高く、どんどん読める。
主な出来事をかいつまみながらなので、満遍なくとはいかないが、キリスト教にまつわる作品や絵画などをより楽しむことができるようになったと思う。
(ちょうど上野の近代美術館に行ったところだったので絵画を思い出しながら読め、より楽しめた。)
世界史勉強中の高校生にも息抜きにおすすめしたい。

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2022年06月01日

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「キリスト教とは」を分かりやすく
尚且つ広島弁での任侠ヤクザの語り口展開で
非常に分かりやすく描いている本。
キリスト教…と、ひと言で言ってもなかなかその内容まで分かっていなかったというか
えぇ!!そうなの?!という驚きの方が多かった。
著書にも描いてあるけど、まさにLOVE or DIE
愛しなさい。しかし信じないなら滅びあるのみ、等。
そしてずーっとひたすら続く内輪揉めの数々。
創造と破壊というか、破壊してまた創造しての繰り返しで
人類の3人に1人がキリスト教徒というのも妙に納得してしまった。
人は救いを求めるもの。それほど人間は弱いし、でも強くもある。

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2022年04月04日

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好き嫌いがはっきりと分かれる小説だと思います。
テーマはキリスト教史。イエスキリストやモーセの出エジプト、第四回十字軍にルターの宗教改革など、キリスト教の歴史上、多くの人が耳したことがある事件を舞台とした物語です。
そして特徴的な点は『仁義なき』というタイトルにもある通り、登場人物がすべてヤクザであるということ。ヤハウェ大親分の盃を受けた「ユダヤ組」や「キリスト組(もともとはユダヤ組系ナザレ組)」のヤクザたちが、教義(任侠道)の違いから対立し、血で血を洗う抗争(宗教対立/宗教戦争)を繰り返してゆく、という描かれ方です。
章ごとに「解説」もあり、トンデモエンタメ小説のみで終わらないところも、評価できると思います。
「愛」の宗教というイメージの強いキリスト教ですが、世俗権力との癒着があり、宗派どうし(異端排斥)や異教徒への攻撃など、暴力的な歴史が多いことに、あらためて気づかされました。
この本を読んで「キリスト教の歴史がわかった」とは言えないかもしれませんが、「キリスト教の歴史をより深く(正確に)知りたいと思う」ようになる本だと思います。
正確なキリスト教の歴史を学びたい人・またキリスト教を信仰している人には不向きな本かもしれませんが、ちょっと好奇心で読むにはいい本だと思います。

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2020年11月14日

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聖書をヤクザ小説として「仁義なき戦い」風に読み直す作品。読み物としておもしろいし、解説にもあるようにキリスト教が俗っぽい「人の営み」として伝わってくるのがとてもよかった。

自分のお気に入りは、パウロの章。パウロは世界宗教としてのキリスト教の基礎を築いた立役者でありながら、説いている内容がイエスの教義とぜんぜん違っているのが、ずっと不思議だった。それも「幻視したイエスが言った」とか、わけわんないし。この本で描かれるパウロの、「人垂らしで金集めが上手だが、思い込みが強く話が通じないおっさん」というキャラは、そのあたりのことがとても腑に落ちる設定だった。

解説によると、かなりしっかりした知識がベースとなって書かれているようだ。ざっくり楽しく歴史をつかめるけど、そこに書かれている内容は正確。入門書としては最適だな。

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2020年11月02日

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キリスト教をヤクザ社会に置き換えて描かれる全く新しい歴史書。

ヤハウェ大親分へ「仁義」と言う名の「信仰」を誓い、血で血を洗う争いを幾度もなく繰り返しながら現代まで多くの人によって受け継がれてきたキリスト教。教皇は組長、使徒は幹部、教会はヤクザの事務所。そして登場人物の台詞がすべてコテコテの広島弁に置き換えられていて、読みながら笑いを堪えるのも一苦労(笑)

私自身キリスト教について全くの無知でありながら、この作品のコンセプトに惹かれて購入。キリスト教×ヤクザという異様な組み合わせが面白くないわけがない。しかも一見強引に組み合わせているように見えるけれども、意外と彼らの関係性や、しきたりはヤクザのそれっぽく見えるから不思議。

現役のイエスが絶好調に暴れまわっていた時代と、おまけページにある若頭モーセのエピソードがとにかく面白かった。

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2020年03月08日

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ヤクザに置き換えることで、宗教もあくまで人間の営みで、人間らしいところがあると感じながら読むことができた。ある宗教上の対立を生んだ問題に対して、「我々部外者からすれば全くもってどうでもいい問題である」、と言い切ってしまうものがあり、素直な意見で笑ってしまった。

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2019年12月08日

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非常に面白かった。歴史書としても小説としてもコメディとしても楽しめる稀有な良書だと思う。キリスト教史をヤクザに置き換えて描くというアイデア、ふざけてるけどわかりやすく面白いからすごい。
登場人物が全員ゴリゴリの広島弁ヤクザ(笑)しかもどいつもこいつも約束を守らないし、自利のためにすぐ「ぶっ殺せぇ!」とか言い出すし、利他や博愛と言ったキリスト教のイメージが覆される。もちろん誇張して描かれてるんだろうけど、史実に即していることなので実際にこういう血生臭い歴史があったんだなと思う。
文庫版書き下ろしのモーセの章でめちゃくちゃ笑った。

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2019年03月12日

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いや面白いっすよ。初期キリスト教からそれがローマ国教になり、世界に普及していく中でどれだけキリスト教が暴力的だったのか。ヤクザ映画に模した口調が楽しい。しかし十字軍はひどいな。

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2017年09月07日

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読後第一の感想は、これ、歌舞伎にしたらすごくハマるんじゃなかろうか…という妄想でご飯何杯でもいけそうにワクワクしている、というところです(笑)

どういう本かというと、キリスト教2000年の歴史を、恐れ多くもやくざの抗争史に見立てて描いた、叙事詩的?な小説なのですが、タイトルからも明らかである通り、菅原文太主演の映画で有名な「仁義なき戦い」の世界観を模した感じになっています。つまり、
「おゥ、こんなぁがイエスさんかい。のう、一つおたずねしたいんじゃがの、安息日に病人を癒すいうんは許されちょるんかのう!」
「なぁにコキよるんない、くそったれ!おどれらの中によゥ、安息日に溝に落ちたやつがおったらどぎゃんするんじゃい!助けてやらんのんか?安息日じゃ言うての、ええことをして、それで怒るおやっさんじゃ思うとるんか!」
というような感じで全編広島弁で繰り広げられるのです。
広島弁があまり得意とは言えない私は「こんなぁ」とは「YOU」のことであるという基礎知識すら持ち合わせず、始めのうちは難儀しましたが、しかし、やはり言語は耳から。音声に触れてなんぼということで、映画「仁義なき戦い」シリーズのうち、笠原和夫脚本の初期4作をこの読書と並行して視聴することにしました(ただし、2歳の誕生日を1か月後に控え健全に成長中の娘が泣くので、映画による学習は娘就寝後とする、という制限を設けました)。このリスニング学習の効果か、自己評価ではありますが、後半ではテキストを読みながらであればそこそこ流暢に(脳内)スピーキングできていたと感じます。さらに、「出入り」とは「喧嘩」のことであるとか、違う組の構成員同士が「兄弟盃を交わす」とはどういう意味合いを持つのかとか、そういった極道世界の言い回しや文化について知ることができ、テキスト精読の助けとなったことも付け加えたいと思います。

さて、総じてこの本、とても面白かったです。真面目な信者さんや学者さんや、そうでなくとも趣味の合わない人からしてみれば、ふざけた本としか思えないかもしれないですが、少なくとも私にとっては、これまで聖書に触れても理解できなかったことや、世界史で習ったけれどもすっかり忘れちゃったことなどを、それはもう強烈なほど鮮やかに物語ってくれたので、面白いほど頭に入ってくるし(細かいことはともかく大まかな流れは)二度と忘れないのではないかと思います。ユダヤ教社会のなかでイエスの教えがどう新しかったのか、イエスの死後どうキリスト教が広がっていったのか、カノッサの屈辱、十字軍…ってなんだっけ、ルターって何を説いた人なの、などなど…。また1章ごとに解説があり、「冒頭のあれは、演出です、やりすぎました」みたいなことも書かれていて、その距離感も好ましい。
そして見事だなあと思ったのは、すいすい読んできたのに「うっ」と理解を妨げるような宗教用語や概念、これを「極道用語」として解説してみせるそのやり口です。というかここに親和性を見たからこそこういう本を書こうと思ったのかも知れないですが、極道用語ということで説明されると、わかったようなわからんような程度の理解でも、そもそも私極道じゃないので、じゅうぶん分かった気になれるのですね。
「隣人」とは身内の者、組の者といった意味合いであるとか。「使徒」とはナザレ組(後、キリスト組)の極道用語で、イエスから直盃を受けた十二人の舎弟、つまり大幹部のことであるとか。ここにひとりのやくざがいる、男は組長だが、その事務所も権力も本当にささやかなもので、実際の姿も農民と変わらない、彼のような組長を極道用語で「司祭」と言った、とか。

で、本編だけでも十分お腹いっぱいでしたが、文庫版で追加されたという出エジプト記、これもたいへん面白かったです。ヤハウェ大親分というレジェンドやくざが、全時代を通してものすごい影響力を持ち続けているのですが、そのなかでも最強だった時代のお話、ということでしょうか。副題は若頭モーセの苦闘、泣けます。

このヤハウェ大親分がはちゃめちゃに力を持っていて、畏怖の対象となっているわけですが、なんだかそのめちゃくちゃさが歌舞伎の荒事のヒーロー...とも違うけれど、何かと恐れられている平将門の霊とか、そういう存在を思い起こさせ、ハッ、これ、歌舞伎合うんじゃね…?という冒頭のつぶやきにつながるわけです。映画みたいに無理やり2時間に収めたりしなくて良いのだし、忠臣蔵七段目、みたいに人気のある場面だけの見取り狂言という上演形態にもなじみそうだし。
なのでもし、この本を読んで歌舞伎化案に賛同される方がいたら、ぜひ妄想キャスティング会議でともに盛り上がりましょう…!

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2016年12月25日

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 十戒の映画見てヤハウェ怖すぎじゃない?と思い、軽くキリスト教に触れたいと思い手を伸ばす。
 とにかくヤハウェが怖すぎて笑う。多分に演出もあるのだろうがとくにかく人殺し過ぎである。よく世界一有名な宗教の神をやれてると感心する。とくにモーセ編でのヤハウェの活躍はどこまで実際に聖書にかかれているのか虐殺しすぎて疑いたくなる。
 この本のなるべく資料に基づきつつ、分からないところや演出としてヤクザで埋めていくスタイルはなかなかに面白い。とくに破天荒な人物によくあい、キリスト、パウロ、ルターが主人公の話は面白い。一方個性的な人物がいない話はあんまり面白くない。特に国教化してからはヤクザ感減るし。それでも十字軍編は仁義掲げても銭と暴力とヤクザらしくなかなかに馴染む。
 章毎の解説にあるように多くの演出なり物語の都合があるため描写を鵜呑みにできないものの、教科書で見たあの話はそういうことだったのとかわかり、なかなか良かった。ヤハウェが聖書で実際どう活躍してるのかとか読んでみたくなる

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2023年02月06日

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キリスト教史をおおまかに理解したい人にオススメ。文庫版の場合、旧約の出エジプトも収録されている。旧約と新約の入門書みたいなものを読んでもあまりわからなかったが、この本を読んで、ほんとにざっくりではあるがキリスト教の通史をおおまかに理解できた。

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2022年01月31日

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独特な視点から聖書を読み解く物語が非常に読み易く、楽しく読めた。
聖書では一瞬しか出てこないアナニアとサッピラの話をわざわざ取り上げるセンスも面白かった。

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2021年11月10日

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登場人物が多くなかなか頭に入ってきにくいキリスト教史をヤクザの世界に置き換えてキャッチーに描くもの、苦痛なく読み進められてキリスト教史のとっかかりに良い

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2021年09月26日

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キリスト教の歴史について、登場人物を広島ヤクザに仮託して、ヤクザ言葉を喋らせながら軽妙かつ分かりやすいタッチで歴史を解説。

実際に宗教結社って、そのような血の結束を持った集団だったのだろうし、宗派抗争も確かにヤクザの派閥抗争と通ずるところがあって、全く異なる二つを似たようなものとして書いているのは非常に面白い。ヤクザが何のために抗争しているかよく分からないところもあるが、宗派の対立も同様。それを正解は無いがどれだけグッとくるかの納得感の戦いと評価しているのも面白い。

ヤハウェとモーゼの章が最後にあるが、ここを冒頭に出してもらえれば、初心者にとって分かりづらい神とキリストの違いが分かりやすかったと思う。パウロやルターなども、誇張されてはいるものの、為人の方向性がよく理解できた。

不謹慎との見方もあるかも知れないが、個人的には非常に楽しめた一冊。

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2021年01月29日

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「ヤハウェ大親分、ワシを助けてつかぁさいやァ、アーメン!!」
キリスト宗教の複雑な人間模様と歴史を、「極道のお家抗争」劇にそっくり置きかえて描いたキリスト宗教史。親分ヤハウェ、子分、シノギ、シマ…およそ宗教を語るとは思えないフレーズの数々。しかも言葉遣いは全編広島弁。この斬新で無遠慮な設定が許される日本は素敵だなぁと思います。

キリスト教の長い長い歴史と諍いは、大局的に捉えてしまうと「組と組によるシマを巡る抗争」。そんなシンプルな設定を前提にして読み進めていくと、人物相関図が自然と頭に作られていき、聖書や史実に沿ったエピソードに触れることができます。しばらくは頭では理解しながらも気持ちがついていきませんでしたが(笑)、だんだんとこの豪快な世界に引き込まれ(巻き込まれ?)ている自分がいました。
かなり変化球ではありますが、この設定は素直に感心します。ぜひキリスト教以外の宗教でも書いていただきたい。

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2018年01月27日

Posted by ブクログ

完全教祖マニュアルがおもしろかったので、読み始める。全編仁義なき戦いに影響された広島弁でおもしろおかしくキリスト教の歴史をなんとなくわかる構成になっている。ただ、異民族もすべて広島弁なので、あれ、何人と何人の争いだっけ?と一部混乱するところがある。

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2017年08月25日

Posted by ブクログ

面白おかしく、わかりやすい。
映画仁義なき戦いをみていれば、なお楽しく読める。
菅原文太松方弘樹に脳内変換されます。
組織史としては、良書。昔の歴史の先生の教え方のような、
読んでいて、ふふっ となります。

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2017年07月07日

Posted by ブクログ

「ユダ!おどれが密告(チンコロ)しおったんか!」
 途端にペトロがドスを引き抜くと、ユダに向かって躍りかかり凶刃を振るった。ユダはヒィと叫んで身を避けたが、すると後にいたヤクザ者の右耳が削ぎ落とされて、大地に鮮血が散り、闇夜に悲鳴が轟いた。なおもユダを狙わんとドスを振りかざしたペトロであったが、これをイエスが背後から抱きとめた。
「やめぇ、ペトロ!」
「じゃ、じゃ言うて、兄貴!」
「これも、おやっさんの考えのうちじゃけぇ……」
と、イエスは自らを説き伏せるようにそう言うのだ。

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2017年06月20日

Posted by ブクログ

キリスト教については、まあ興味はあって、ざっくりしたあらすじとかは把握してるんだけど、どうにも理不尽じゃね?とかつっかかるとこがあって。ピンと来ないな~(-.-)
と思ってた私のような人間には良書。すんなり腑に落ちたというか。ヤクザ語に慣れてないので、最初そこがとっつきにくかったけど。
参考文献にも上がってた田川さんの本はおもしろくて何冊か読んだのよねん。またちょっとこのジャンルの本も読もーっと。

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2017年03月08日

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宗教はとっかかりにくい。が、この本は抱腹絶倒。ヤクザと広島弁を使ってキリスト教を娯楽小説に置き換える。例えば最後の晩餐でキリストが使途の一人が裏切ることを予告するが、そのシーンは「お前らに言うとくけどの、今一緒にメシ食っとるお前らの中にの、わしのことチンコロするやつがおるけえのう」こんな感じである。著者も書いているがこれはエンタテイメントである。が敬遠しがちな宗教がグッと身近に感じられるようになる。

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2017年01月29日

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ゴルゴダの丘に、イエスの絶叫が響く。
「おやっさん(ユダヤ教の神ヤハヴェのこと)、おやっさん! なんでワシを見捨てたんじゃあ!」

その受難の前夜、イエスは子分たちに言う
「お前らの中に、ワシをチンコロ(密告)するやつがおるけんのう」

忠誠を誓うペドロに言う
「こんなは今夜、鶏が二度鳴く前に三度わしを否むじゃろう」
※こんな=広島弁で「お前」「YOU」という意味。

#

抱腹絶倒、興味津々の386頁。

キリスト教の歴史を、大まか、九つの情景を選んで、九つの短編小説にした本だと思ってください。
(通史、というほど巨大な負担はなく、飛ばし飛ばしして、面白い歴史の場面情景を描いています)

内容は、以下。

●(ユダヤ教だけど)モーゼ、出エジプト記
●キリスト登場
●キリストの死
●初期キリスト教(パウロ以前)
●パウロの活躍
●ローマ帝国がキリスト教を認めるまで
●叙任権闘争。カノッサの屈辱。
●第四回十字軍の迷走
●ルターの宗教改革

そして、9編を貫くのは、

「キリスト教」=「キリスト組」というやくざ団体。
「信仰」=「仁義」
などなど、言葉を置き換えて、キリスト教の歴史を、やくざに見立てて描いていること。厳密に言うと、「やくざ映画の世界観に置換して」というべきか。
そして、更に限定すると、実録やくざモノ、もっと狭くハッキリ言うと映画「仁義なき戦いシリーズ」の世界観に置換しているんです。

※やくざ映画、と一口に言っても、中村錦之介さんの「股旅もの」もありますし。
高倉健、鶴田浩二、藤純子、池部良、という面々がトコロテンのように毎回活躍する「任侠もの」もあります。
その中で、菅原文太さんの「仁義なき戦いシリーズ」は「実録もの」と呼ばれます。

なので、つまりこの本の人物たちは、イエスもヤハヴェもモーゼもパウロも教皇も皇帝もルターも、みんなみんな、広島弁をしゃべります。これが秀逸。

※「仁義なき戦いシリーズ」は、第2次大戦後の広島県のやくざ抗争を描いたもの。みんな広島弁をしゃべります。有史以来、広島弁を日本全国に広げたという意味では最大の功績を挙げた作品だと思います。ただ、それが広島出身の皆さんにとって嬉しいのかどうかはちょっとわかりませんが。

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この話法というか手法は素晴らしいなあ、と感心。その目の付け所が素晴らしい。

別段キリスト教に限らず、歴史や、会社内政治などの話全般に使えます。

つまり、なんだかんだと、身内関係者以外には非常に判りにくい言葉や概念や経緯やら建前が、そこにはあるんだけど。
煎じ詰めれば、誰が美味しい飯を食べれるか、という奪い合い。
誰がカッコつけられるか、という争いなんですね。

国家間の戦争だって、有史以来、どんな時代のどんな国家だって、
「ごめん、俺らこの件については正義ぢゃないんだけど、金とか企業利権とか、政府への批判の目を逸らすため、政権維持するため、そんな理由で戦争するから、軍人と貧乏人のみなさん、死んだり殺したりしてね。ま、俺はそんなことイヤだから自分ではしないけどね」
と、明言して戦争を始めたことはないんです。

つまり、嘘を平気でつきます。

ただその嘘が、正史の、歴史の、正式な文書になっていくんですね。

ただその嘘をめくった風景が見れないと、感じられないと、歴史なんて面白くもなんともないし、教訓にもなりません。

それを「興味を持つ入り口として、面白がるために、えいやっと多少誤謬があってもまくるために、仁義なき戦いのパロディでやってみました」ということなんです。

映画「仁義なき戦いシリーズ」が素晴らしい力のある、オモシロイ映画である、という下敷きがあるからなんですが、
カネと欲と面子とサバイバルとに溢れた剥き出しのギラギラした、ほとんどコメディな世界観。これ、ものすごーく、政治的なお話を解体して娯楽にするための特効薬なんですね。

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もうとにかく、モーゼからイエス、そしてパウロあたりまでの物語は、本当にオモシロイ。そして、判りやすい。
キリスト教っていうのは、ユダヤ教から生まれた、中東地域のローカル宗教だった、ということが良く判ります。

次に触れておきたいのは、叙任権闘争、カノッサの屈辱のあたりも、実にわかりやすい。
教科書にして高校で使った方がいいんぢゃないかっていうくらい。パチパチ。

個人的に抱腹絶倒だったのは、「第四回十字軍」。
キリスト教のために。聖戦のために。
イスラム教徒と闘ってエルサレムを奪還するためにやって来たのに、ヴェネチアで金が尽きて立ち往生、金のために傭兵になって、なぜか同じキリスト教の町であるコンスタンティノープルを攻め落として虐殺狼藉してしまっている十字軍。本当に笑いが止まらない。

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著者の架神恭介さんという方は知らなかったのですが、若いライターさんのようなので、今後が楽しみです。
そして、さすが筑摩書房。ちくま文庫。

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2016年12月31日

Posted by ブクログ

単に、キリスト教史を歴史小説にしたという作品ではないです。
キリスト教を1つのヤクザ組と捉え、キリスト教が成立する時や、成立時に受けた迫害をヤクザの抗争にしているのが斬新でした。
それに、フィクションにまとめている訳でなく聖書や史実通りの内容に留意しているので、小説として楽しめる以外にもキリスト教の歴史も知る事ができる小説です。

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2025年09月30日

Posted by ブクログ

ヤクザの抗争に見立ててデフォルメされたキリスト教史。旧約の時代からローマ帝国での公認、十字軍、宗教改革まで。

一般向けのキリスト教解説のうち、旧約の一部とパウロのあたりの、割とわかりやすく物語要素の強い部分だけをかじると、なんかヤクザっぽいな、という印象を受けることは確かにあるけど、改めて全部ヤクザの話にされてみると、これはこれでなんともはや(笑)。
まあでも、無理はあるけど、面白い。

あとがきの最後で「最後に一点、平謝りに謝さねばならぬことがある」とあるので、真面目な信者に対して不謹慎なたとえでごめんなさい、ということかと思ったら、広島弁が正確ではないことを謝りたいという。
いや受けたわ。
そっちかーい!

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2023年07月17日

Posted by ブクログ

・ヤハウェとイエスの立ち位置、ヤクザに置き換えるとこんなに飲み込みやすくなるとは...。
・激しくて汚い広島弁でキリスト教の話してるだけでおもしろいのずるいよ。すべてのセリフで笑えてしまう。
・キリスト編とパウロ編が物語として特におもしろかった。カノッサの屈辱あたりは状況が複雑でちょっとわかりづらかったな。

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2023年01月03日

Posted by ブクログ

キリスト教については何となく知らなかったので、さらっと勉強するにはいい本。
ちょっと広島弁がコテコテすぎて読みづらいところもあったけれど、宗教団体をヤクザの組として描いたのは面白い。
たしかに少しの考えの違いで殺し合いまでする人たちなので、ヤクザに例えてもおかしくない。

でも思うのは、絶対的なリーダーがいる間は戒律から外れたグレーなことは、リーダーの一存で決まっていた。それに納得できようとできまいと圧倒的カリスマ性で集団をまとめていたが、その絶対的存在の死後は細かいことで内部分裂する。
これは組織のあるあるで、昔から変わらないんだなぁと思った。

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2021年10月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書はまさに企画の勝利です。
キリスト教という世界一有名な宗教の歴史をたどれば、裏切り、磔、派閥抗争、魔女裁判、十字軍など血塗られたやくざ抗争とそん色ないという発想から聖書をエンタメ化したのが、本書です。
世界一読まれている聖書ですが、書かれている内容は素人には意味不明。
今なお聖書内の同じ文章でも宗派や解釈によっては真逆の説明も可能になるという玉虫色の経典が2000年にわたって伝承されているという不思議。
私も、高校のころ旧約聖書の頭から読もうとしてわけがわからなくて途中で挫折しただけに、本書のような物語性のあるエンタメ化は大歓迎です。
各章ごとの解説や石川氏のあとがき(文庫版だけかな?)が、想像以上に学術的でまじめな点もプラスポイントです。
広島県出身の作者が怪しい広島弁を駆使し(本人談)、「仁義なき戦い」のセリフを勉強して書き上げた本書は、世界の人口の3人に一人の信者を持つキリスト教が過去に戦争・虐殺・奴隷制・差別・非科学性を正当化しながらも、一方では救いを求める迷える人間に無償の愛を与えるというウルトラCを発揮した聖書の謎の一端に迫ります。

本書が単行本で発売されたのが2014年ですが、次は同じヤハウェという神を持ち、同じエルサレムという聖地を持つ世界第2の宗教、イスラム教(キリスト教信者は23億人に対して17億人)での第2弾のやくざ抗争史をお願いしたいものです。
イスラム教は、現在進行形のスンニー組とシーア組のヤクザの縄張り的な抗争が民族や国をまたいで行われており、異教徒よりも異宗派への憎悪が強いという特殊な武闘組織であるという点では、より複雑でやくざ的な特徴が出ているような気がしますので。

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2019年06月21日

Posted by ブクログ

最初、え?何でイエスさま広島弁?え?ヤクザ?抗議とか来ないの?でも読み進めるうちに面白くなってくる。もれなくキリスト教についての知識もついてきますよ!

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2017年09月04日

Posted by ブクログ

『よいこの君主論』『完全教祖マニュアル』の著者の新作ということもあり、これまではどれもかなり面白かったので購入。

本書はキリスト教をヤクザの組に例えてその歴史を語るという内容です。
キリスト教をヤクザに置き換えてその歴史を語るというのは斬新ですが、個人的に『よいこの君主論』『完全教祖マニュアル』ほどのインパクトはありませんでした。
本書の肝である、キリスト教をヤクザの世界に置き換えるという試みも、用語をヤクザ的なものに置き換えたり登場人物たちのヤクザ敵な話し方(広島弁?)が読みにくさを助長していると感じました。

内容も、どちらかというとキリスト教について学ぶ入口として読むよりも一通り旧約聖書や新約聖書、世界史的な知識を有している段階で読むほうがより楽しく読めると思います。

※文庫版収録のモーセについての話が私は本編より好きです。
(もうみんな本当にメチャクチャなので)

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2016年12月29日

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