あらすじ
476年、西ローマ帝国が滅び、地中海は群雄割拠の時代に入る。「右手に剣、左手にコーラン」と、拉致、略奪を繰り返すサラセン人の海賊たち。その蛮行にキリスト教国は震え上がる。拉致された人々を救出するための修道会や騎士団も生まれ、熾烈な攻防が展開される。『ローマ人の物語』の続編というべき歴史巨編の傑作。※当電子版は単行本上巻(新潮文庫第1巻、第2巻)と同じ内容です。地図・年表なども含みます。
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Posted by ブクログ
塩野七生さんの「ローマ亡き後の地中海世界」を読み終わった。
彼女の著作を読む上でのバックボーンを構築し、ガイドラインにもなるという、塩野七生ファンには重要な本となりそうだ。
細切れの時間を使って読んでいたので、えらく時間がかかってしまったが、それでもやっぱり、感慨は深い。
8世紀から18世紀までの地中海世界でのオスマントルコとキリスト教諸国との千年にわたる葛藤を大きく描いている。
一神教を奉ずるこの2大勢力は、その原理主義に従って、互いに略奪、拉致、暴虐を永きにわたって繰り返してきた。海は地中海全体、陸はウィーン近郊に迫るイスラムの伸張に歯止めをかけたのが、有名なレパントの海戦だ。世界史の教科書には、キリスト教側の主役として、法王庁とスペイン国王の事は描かれているが、実際に勝利の立役者になったのは、原理主義から離れ、ルネッサンスの花開いた、ベネチアの船と将兵だった。
ここがまさに、塩野七生さんのテーマであるといえる。
その締めくくりに書かれてある内容に胸を打たれた。
「現代のイスラム諸国とキリスト教諸国を分けるのはルネサンス時代を経たか、そうでないかという違いである」と彼女は述べている。
そのとおりかもしれない。
翻って日本を考えると、他のアジア諸国と違って、日本は、ヨーロッパ同様に封建時代を経験し、江戸時代という、人間を見つめる芸術が花開いた時代を経験した。
なんと幸せで豊かな過去をもつことができたのかと思う。
自由と人間の大切さを忘れた国民は危機に弱い。
それは世界の歴史が証明してきた。
日本は今、どちらなのだろう。
忘れかけているけれど、しっかりDNAに刻み込まれてると、ボクは思っている。
だから、今度の危機も日本は強く立ち向かえるし、最後には勝つと信じていられる。