あらすじ
長年連れ添った夫が突然失踪し、思い出の詰まった家も失った。理不尽な状況に、園原聡子は戸惑い絶望の淵に立つが、娘や姪、誠実な弁護士たちの支えで、新たな生活に向かって歩み出す。そして、夫を奪った不倫相手・沼田和恵と、法廷で対峙する日がやって来た。底知れぬ悪意に翻弄されながら、それでも強く生きる人びとの姿を通して、家族、夫婦の在り方を問う感動の長編!
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Posted by ブクログ
突然の夫の家出と離婚と家を失うということから始まる。前半は暗く重苦しいことの連続で、読むのが少し辛かった。そこから周りの助けを得て、自分でも大きく変わっていく聡子。だんだん希望が持てる展開になっていくのが救いで、ホッとした。
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長年連れ添った両親の離婚。きっかけは父親の失踪だった。
別の女性と暮らすことにしたという書き置きを残し、姿を消した父親。知らぬ間に自宅を売り払っていたことから、父親の計画的な出奔だったことを知ったひとり娘の香織は、戸惑う母親を説得し、小さな弁護士事務所を訪れるが……。
ある一家を襲った悲劇を中心に、強い絆があるようでいて、実は簡単に崩壊してしまうという、家族や夫婦の関係の脆さを描いたヒューマンドラマ。
◇
娘たちに夕飯を食べさせ終わった香織が後片付けに入ろうとしていたとき、電話が鳴った。小学3年になったばかりの綾乃がすぐに出てくれたが、顔が急にこわばるのを見て香織はすぐに電話を代わった。
電話は警察からで、石巻章という人を知っているかと言う。聞けば石巻章の手帳には連絡先として香織の電話番号が書かれていたそうだ。
すでに香織の母親である園原聡子には連絡をとったと断ったうえで、中川と名乗った刑事は「石巻さんが亡くなっているのが発見された。ついてはお母様と一緒に遺体の確認をお願いします」と言った。
詳細は直接お話しますということなので、香織はとりあえず池上警察署に向かうことにした。( 第1章「2012年6月」) ※全25章。
* * * * *
物語は、石巻章が孤独死したという警察からの連絡を香織が受けたところから始まります。
章は香織の父親ですが4年前に妻の聡子を捨て、他の女性と一緒になるために失踪しました。その際、章は預貯金をすべて持ち去っただけでなく、無断で自宅の売却までしていました。女性に貢ぐためです。
そうまでして老いらくの恋にのめり込んだ末の孤独死に、聡子も娘の香織もことばがありません。
たちの悪い女に引っかかった。ひと言でいえばそうです。けれど、そんな女に引っかかるだけの隙が章にあったのも確かなのです。
妻と2人の平穏な生活が物足りない。老いを自覚する年齢になり、もうひと花と焦る気持ちもあったのでしょう。濃密な関係を築けそうな ( 素振りを見せる ) 沼田和恵の手練手管に籠絡されていきます。
こうして章は夫婦関係を崩壊させ、娘との親子関係まで壊してしまったのでした。
では、沼田和恵は根っからの悪女かというと、そうでもないようです。
思えば和恵は、性格的なものなのか幼い頃からかわいげがないと言われ、親にも愛されずに育ちました。
和恵は孤独に耐えて看護師の職に就き、出会った男性と結婚。子どもにも恵まれます。けれど和恵がやっと手に入れた家庭は、徐々に崩壊していきます。
風俗通いにのめり込み、稼ぎを家に入れなくなった夫。和恵を小馬鹿にするだけで金をせびることしか考えない2人の息子。
和恵が築いた家庭には、今や和恵を大切にしてくれる人間が誰もいない殺伐たる空間と化したのでした。
ならば自分も誰かを踏みつけにしてもいいだろうという思考に走ったのも、許されることではありませんが、少しは理解できます。
母親の聡子を支え、生活や訴訟の手助けをする香織。彼女も懸命に家庭の維持に努めていました。
パートをしながら幼い娘2人の世話をし、家事に追われる日々。夫は大して協力してくれないばかりか、聡子の支援で家を空けがちな香織に批判的ですらあります。
親子4人の平穏に見える生活。もし香織の忍耐の糸が切れることがあったら …… 。そんなことを考えさせられました。 ( 後半に2人の関係が持ち直すシーンがあり、ホッとしました。)
もう1人、聡子を支えてくれた人物がいます。聡子の姪の優子という女性で、聡子の兄の娘です。
母親を病気で亡くしたのは優子が14歳のときでした。以来、聡子が頻繁に訪ねてきては何くれとなく優子の世話をしてくれるようになりました。
思春期の優子にとって、父親では気の回らないところまで適切に手当てをしてくれる聡子の存在がどれほど大きかったかは言うまでもないことです。
それから現在までの26年間、優子は聡子への感謝を忘れた日はありません。
そんな優子は頭の回転が速く行動力のある女性に成長しましたが、気が走りすぎるところがあるせいか、40歳の今まで恋人ができても長続きせず未だ独身です。
母親の病死。聡子の悲劇。夫婦関係の脆さというものを目の当たりにした優子が、結婚することの意義を父親と話し合うシーンが印象的でした。
そして、シリーズのヒロインと言える人物が、芳川法律事務所に勤める沢井涼子という40代半ばの事務員です。
その涼子も夫の不倫が原因で離婚し、ひとり息子の良平を育てています。涼子の物語は本編の中心ではありませんが、夫婦や家族という関係の脆弱さを感じさせる要素になっていました。
テーマがテーマなので、いかに聡子が前向きに生きていけるようになるというラストを読んでも、少し胃が重くなるような内容でした。
ただし、終盤に涼子と芳川の間にロマンスが芽生えそうな描写が添えられており、続編に希望が持てるようになっていたのはよかったと思います。
個人的には、この園原聡子の案件を芳川と涼子からの視点で紐解いていくリーガルサスペンスを読んでみたかった気がしました。
Posted by ブクログ
現実にこんなことはあり得るのだろうか?と思える老いらくの恋・・
自分だったらやっぱり立ち直れないかな、それともホイッスルと共に自分の人生を生きると切り替えられるかな~
どんな時も支えてくれる人がいるのは大切なことですね。
Posted by ブクログ
70を超えた夫に不倫された挙句
家も全財産も奪われた妻。
一人娘と義姉の娘と力を合わせて
不倫相手の女に立ち向かう。
夫の章が、ゲス看護師の沼田和恵に
溺れるのが、ただただ情けない。
同じ家族でもこうも違うのかと。
妻の聡子が言う台詞
「不幸はみんな同じ量だけど
幸せは心がけで変わってくる」
がグッと来た。
弁護士の芳川と事務員の話は既刊小説
「テミスの休息」で登場してるみたい。
まだ未読なので、そちらも読んでみたい。
タイトルの「ホイッスル」はなんかピンと
来なかった。
「余生」の方が良かったりして。