あらすじ
社員、株主、社会に支持されるリーダーになるには。
その全ての条件をまとめた必読書。
新規事業、人材育成、株主対話……
長期成長の要諦を語り尽くす
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
今日の書評レビューは「私の経営論」宮内義彦。宮内さんと言えば、大野の母校・関西学院大学を卒業後、アメリカでリース業を習得し、日本でそれをいち早く展開したことで有名な方。
そんな日本一のリース業・オリックスを50年余り率いてきたという、名実ともに日本で、もっとも優秀な経営者の一人なのだ。その宮内さんの経営哲学がギュギュっと詰まった本である。
では早速紹介します。
まず宮内さんは、経営者たるもの中長期的な視野で企業業績を上昇させるべきだと考えられている。そのためには日々常に変わる必要があるそうです。
またオリックスの株主に外国人株主比率が大変高いのはIR(=インベスターリレイションシップ・株主対話)を充実させたことに帰すると言います。
それでは以上のことを証左するため、具体論に入っていきます。
まず、宮内さんは知的集約型社会の組織を作れ!と説きます。なぜなら、現在の世界の需要は1980年代のような、工業型社会は終わっているからだと言います。
つまり、旧来の日本企業の得意だった、モノの大量生産+輸出という構造という式は成り立たないからだと述べておられます。そのため必要な人材は、因襲的な大企業志向の学生より、優秀で多様なバックグラウンドを持った人材が必要であると仰っています。
具体的には、オリックスでは4月1日に入社式は一応行うものの、宮内さんの挨拶はとっくの昔に止めてしまったそうです。なぜなら、中途採用が多いからだそうです。
そこで宮内さんの言う”優秀さ”はなんであるかと言うと、具体的には「専門性」だとのことだそうだ。実際オリックスでは、最近太陽光発電ビジネスに参入したが、そのような分野の知見が豊富な方々をたくさん雇い、従来の社員と混合させて、ポジティブな効果を得るそう。
さらにオリックスの本質について突っ込んだ議論がされています。すなわち、「会社は誰のものか?」を考える時、宮内さんが嗜好する企業の中長期的な成長を考慮すると、利害関係者のうち、従業員(即物的な考え方でなく)や地域の下請け先(下請けなどいくらでもあるといった考えではなく)を大事にすべきだと説いています。
そこで、宮内さんはどこまで先を見通して経営を行っているかというと、ズバリ「7、8年先」だそうです。具体的にはCEO的な立場のかたは3~5年先、長老的なポジションの方は10年先を見通すべきだと。宮内さんの場合、シニアチェアマンであるので、その間だそうだ。
そのためには経理部長的な社長であったらダメだそう。具体的には、「日本が伸びない。だから売り上げが上がらない。コストカットをしよう。じゃあリストラね」というのが最も悪い経営者だそう。
そうでなく、経営者たるものつねに「こうしよう、ああしよう」と新規事業にリーダーシップを発揮するべきだと断じています。(太陽光発電事業とか。あとオリックスは福祉事業も行っている)
そのような経営者になるためには、経営者たるもの常に感性をとがらせている必要があると説きます。例えば歴史観や地政学的なリスク。さらには宇宙の構造等への好奇心が必要だと述べています。
オリックスのような金融業は極めて法律や制度によって、環境が変わってくるので、宮内さん曰く「人より三歩先でなく、半歩先を歩く」ぐらいがちょうどいいそうだ。
そのようなオリックスであるが、宮内さんは社内に向けては具体的に経営哲学はもっぱら語らなかったそう。それよりも自分のやっていることを見せるのが一番だと仰っている。
そのかわり社外の株主には、自らも言うように「日本一」対話してきたようだ。例えば、「収益が落ちても、これこれには投資を続けます」とか短期保有目的の株主には「株を買ってもらわなくて結構です」と言わんばかりの対話をしてきたとのことです。
次に後継者育成について語っている。これについては「ベストを尽くしても、結果はわからない」というのが宮内さんの認識らしい。
宮内さんは「常に後継者のことを頭の片隅に」入れておいたそうだ。また、不測の事態とバトンタッチとの間では差異をもうけ、海外出張の時など、秘書室長に「私に万が一のことがあればXさんに任せます」と書いた封筒を委ねたこともあったそうだ。
そこで宮内さんが提唱するのは「リーダーは人間性を磨こう」である。彼曰く、日本人が寝ている間、地球の裏側では現地の社員が働いているのだから、情熱が必要だ、と。つまり血と涙。社員と共感すること。一緒に泣き、笑うことだそうです。しかし、浪花節のバカ殿様では経営は勤まらないので、状況を正しく把握できる聡明さも必要とのことです。
以上、宮内さんの書籍の中をかいつまんで、抽出したが本ブログでは、ほんの数パーセントしか述べていません。これを見て興味を持たれた方はぜひ、宮内さんの書籍を読むことをお勧めします。