あらすじ
神保町の古書店「泪亭」二階に住む謎の美女・白井沙漠。学生時代に同じ部屋に下宿していたことから彼女と知り合った翻訳家の解(さとる)は、訝しく思いながらも何度も身体を重ねる。二人が共通して抱える「借金」という恐怖。破滅へのカウントダウンの中、彼らが辿り着いた場所とは――。「消費者金融」全盛の時代を生きる登場人物四人の視点から、お金に翻弄される人々の姿を緻密に描いたサスペンス。
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Posted by ブクログ
古書店の二階にひっそりすむ謎の女・白井沙漠。
沙漠と知り合い、体の関係を持つようになった吉野解。
二人はそれぞれ、多重債務で苦しんでいた。
沙漠の正体がわかったとき、今までさりげなく出てきていた部分がすべて伏線なんだと気付いた。
さりげない描写の沙漠はすべて偽者で、
そのにせものの自分をさらにきれいにするために、お金を求めて消えた。
それに対して解は、由乃に拾われ、表面的にお金持ちのコーティングをされ、心は開けず、生活費と奨学金で多重債務に陥っていく。
二人が行く末が交わったとき、
300万円で運命が変わった。
二人ともバラバラで、しっくりこない人生を生きていたのかもしれない。
二人以外の大家と里子の視点で、より重層的に物語が語られていた。
沙漠が怖い。お金で人って変わるんだ。
一気読みしてとまらなかった。
Posted by ブクログ
再読。消費者金融、多重債務、サラ金といったテーマを描いているのに、その社会問題に重心がないところが桜庭さんらしい。登場人物たちが堕ちていく暗さにひきずりこまれそう。犯罪者は捕まるか、死ぬかという結末が一般的だが、このラストは暗示的でよい。この曖昧さが倫理的に許されるかどうかは疑問だけど。
Posted by ブクログ
私の男以来の桜庭さんでした。
描く世界観と、男と女の関係、性描写、どれをとっても一級品です。しかし、好みは分かれるかなと。私はとても好きです。このどうしようもない人間感が。
消費者金融を題材にはしてますが、根幹にあるのは人間の底知れぬ哀愁。人はこんなにも落ちぶれるし、生きるのはこんなにも大変なのだということ。砂漠の人生は哀しすぎますね…。
解の殺人の動機が語られないのがまた我々読者の想像を駆り立て、人の心の闇を感じさせますね。狂っているのに、狂ってる描写はない。あくまで裕福な妻をもらい、その箱庭に閉じ込められている解の心情だけ。人を殺すということに対して強く焦点を当てないのが、個人的には好きです。それでも最後のepilogueはしっかり落とす。齢にそぐわぬ容姿になってしまった解。その理由を知ってるのは…
nostalgia。個人的に、パワーワードでした。これから先忘れることはないかなと。自分にとってのnostalgiaを思い出しました。辛い記憶ではありますが、それを否定することはできない。この小説に、思い出さしてもらいました。
Posted by ブクログ
ばらばら死体というタイトルからミステリーかと思っていたら、群像サスペンスだった。借金追われてどうしようもなくなった人々の顛末。全体的に薄暗く私の好みではなかった。犯人がのうのうと生きているのも個人的にはちょっとあれ。
Posted by ブクログ
ステキタイトル選手権が開かれれば上位にくるはず。
しかし内容は。……。
カネの問題に切り込む、という姿勢のためか。
ともかく徹頭徹尾カネ、カネ、カネの話ばかり皆が皆している。
さらには多重債務に陥ったときの対処法までレクチャーしてくれたりして。
一体、こんなに日々カネの話ばかりする?
謎な女がいて、謎な生き方をしている。
その裏側にはセオリー通りのカネ絡みの平々凡々な失墜のお話があるばかり。
うーん。その月並みさが狙いなのか。
サイコパスっぽい男や、犯されながらもマニキュアの乾き具合の心配をする序盤が素晴らしかっただけに。
ただし一点、最後の最後にぞっとする場面があって、そこは素敵だった。
また、カバーは単行本のほうが素敵。