あらすじ
著者の初期最高傑作が復活!
8歳で児童文学賞を受賞し天才少年と呼ばれた小松原淳は、なぜ富士の樹海に消えたのか? 母親の依頼で淳の伝記を書くことになった作家志望の島崎は、膨大な資料を読み、関係者に取材して淳の人生に迫るが、やがて不気味な“異人”の影が彼の周辺に出没するようになり……。
解説・小池啓介
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
折原一さんの文章はすごく読みやすいので複雑なストーリーだったけど、ぐいぐい読めた。
なかなか驚く展開でびっくりさせられた。
ユキはなかなかだなあ。
Posted by ブクログ
分厚い本だったが続きが気になってサクサク読めた。
ライターが1人の人物を追って、インタビューとかして謎に迫っていく系の話好きかも。
ただラストの結末は衝撃度が少し弱いかな〜という気もした。
譲司が外国人なの何となく分かってたし。
でも1冊の本の中に、インタビュー記事や作中作やモノローグや島崎視点の文章など、多種多様な文章があり読んでて面白かった。
Posted by ブクログ
今まで読んだ折原一作品の中でいちばん好き。自分で推理できる部分と、予想外!と驚く部分のバランスが絶妙だった。
まず淳の性別がいまいちハッキリしないかと思えば母親がしきりに「女の子だ」と強調しているのでこれは性別の叙述トリックで実は男パターンのやつだなと思いながら読み進め、実際その通りだったわけだけど意外とこれは物語にあまり関係なくあっさりとネタばらしされ。
モノローグは小松原淳以外の人物が自分を小松原淳だと思い込んでる、もしくは作中作かな〜程度に推理。
譲司が外国人で異人の正体、というのは途中から確信があったので島崎とユキの前に現れた異人が譲司ではなく淳だったのは驚いた。しかも淳が親殺しをしていたなんて展開が面白すぎる。
ユキみたいな男たちを虜にする魔性の女ってミステリー作品によく出てくるよね 笑
もっと裏の顔があるのかと思いきや(それこそ幼女連続殺人の真犯人とか)そこまで悪い子じゃ無かったのが逆にびっくり。
すごく長い作品だけどどうなるの?どうなるの?と先が気になってどんどん引き込まれ、2日で読み切った。
Posted by ブクログ
1番の驚きは、伏線の多さかなと思いました。
最初に
「かあさん たすけて こまつばらじゅん」の
文字を見つけた警察が
「書いている途中で枝が折れたんでしょう」と
言っているんですね。
書ききってるじゃん?と漠然と思ってましたが、
確かに途中だったし、
珍しく、作中に勉という名前の人が3人も
出てきて、
名前に何かあると思わせるところとか、
2人とも「じゅん」ってことにもっと
注目すべきだったなぁ。
永い文章の中で数多くの伏線があり、
しっかりとつながるところは、さすがでした。
Posted by ブクログ
半年程前に富士の樹海に消えた作家志望の男「小松原」、かつて神童とまで呼ばれた才能の持ち主であった彼に何が起こっていたのか? 同じく作家志望の「島崎」は彼の母親から依頼を受け彼の伝記を書くことに、調べるうち明かされていく小松原家の歪んだ過去と彼の周りに巣食う謎の「異人」。 そして島崎の周りにも「異人」の影が現れ・・・。 過去、現在、手記、インタビュー、数多の断章で構成された謎の記録。
多重視点ながらインタビューと現在の視点はきっちり交互に展開されむしろ読みやすかったです。 序盤は主人公と共に過去の詮索を行っていき、徐々に主人公は事件の渦中に巻き込まれ、終盤は読者に大きな謎を投げかける。 全容の見えないホラーでもあり、主人公が災禍に追われるサスペンスであり、ラストに衝撃を控えるミステリーに仕上がっています。
折原さんの作品では古い部類に入るのですが、集大成と言って良いと思います。 技巧はもちろんですが、樹海に作家主人公に現実の事件をモチーフにしたり得意な事を詰め込んでみた感じ、それでいてストーリーの破綻もなく600pの大作ながら綺麗にまとまっています。 読み終わると「異人たちの館」を書いた作者の想いがぐっと伝わる。 文句無しで折原氏の傑作と呼べますね!!
小松原淳が生きている可能性、一度死んだ幽霊のようなライターとゴーストライターのダブルミーニングは自分も思い至って愉快な推理だなぁと満足したのですが、まさかもう一人幽霊作家になれる人間が残っていたとは!!
「潤一」と「淳」の名前被りは気にかかっていましたがどこにも隙がない、と思ったらまさかのモノローグ。 潤一が島崎姓を捨てるまでの伏線と言うか展開が最初の方から始まってるのでこれは相当上手いと思う。
読み終わると「異人たちの館」を書いた作者、息子の名誉を守らんとする母親の想いがぐっと伝わる。 やっぱり叙述物って面白い。
Posted by ブクログ
これはまたすごい作品を読んでしまいました。
ストーリーは単純で、1年前に富士の樹海で行方不明になった作家志望の青年の伝記を、彼の母親の依頼で書くことになったゴーストライターが取材をしていくにつれ、徐々に明らかになる青年の周囲にある過去の闇と、ライター自身が巻き込まれていく現在が混じり合い…。
あれ?全然単純じゃないね。
まず、天才少年だった過去を持つ作家志望の小松原淳というのが、幼年期から内向的で虚弱体質で、だけど自尊心が強くて生意気で、お坊ちゃん育ちだから余計に鼻持ちならなくて。
天才の自分が書いた小説が認められないのは、見る目がない編集者や読者たちのせいだと信じ、自らを省みることがない。
貧しい母子家庭に育った淳は、その後母の再婚により新しく父親と妹ができる。
ゴーストライターの島崎は、実業家の父と大学教授の母の間に生まれたものの、親の期待に応えることができず、家を出て作家を目指している。
純文学とミステリで2回新人賞を取ったものの、原稿の依頼は小説ではなくゴーストライターとしてのもの。
作家を目指しながら結果を出せていないという点では、島崎もまた淳と同じ鬱屈を抱えている。
ミステリなので詳しくは書けないけれども、何に圧倒されたかというと、一つ一つの謎は割と簡単に解けるのに、全体像が全く見えてこないところ。
地の文の外に、淳が書いた小説、島崎の書く伝記など何種類もの文章が錯綜し、現在と過去が捻じれていく。
例えば、淳が学生時代に書いたミステリが作中に出て来るが、その後さらに十数行をラストに追加したバージョンが出てくると、見えていた世界が一変してしまうのだ。
淳をはじめとして、小松原家の誰一人として好感を持てる人物がいないんだよね。
っていうか、異常。
異人じゃなくて、異常。
さらに島崎とあともう一人もやっぱり異常。
何かにとりつかれるというか、妄執って、人を異常にするのね。
ミステリだけど、サスペンスホラー寄り。
そして子離れのできない親は、害毒であるということ。
Posted by ブクログ
最初のページから叙述トリックが使われていたとは恐れ入りました。
物語の序盤から伏線を忍ばせ、途中に何度か挟まるモノローグ。このモノローグにもやられました!
終盤の怒涛の伏線回収、真実解明は気持ちの良いものでした。
島崎が死んでしまったのが悲しい。
Posted by ブクログ
どんでん返しものだと聞いて購入。
ものすごい面白いというわけでもなかったけど、終盤は展開が気になりすぎて一気読み!
どんでん返しは以下の2つ?
・遭難者の手記は淳ではなく潤一のもの
・葵が復讐をすること
1つ目はなんとなく分かってしまったのであまり驚かなかったなー
2つ目は全然予想もしてなかったけど、でもだからと言ってそれが面白いかと言われたらよくわからなかった
淳が賞を取れなかったときに受賞してたのは潤一だったっていうのが分かった時はかなりドキドキした!!まさか2人に接点があったとは!!的な!!
タイトルに館って入ってるから館ものなのかと思って避けてたんだけど(館もの苦手)、全然館ものじゃなくてそれは良かった!!
Posted by ブクログ
個人的・夏のホラー特集。霊的な現象とか、なんとなく不気味な館の存在とか、富士の樹海とか、気持ちをホラーな気分に傾かせる要素がふんだんに散りばめてあるせいで、てっきりスーパーナチュラルありきの物語なのかと思いきや、最終的にはミステリとして着地。なかなかにアクロバティックだけど反則ではなくて、納得の出来。
Posted by ブクログ
【一言で評価】
折原一の作品らしく,読んでいるときのサスペンス感は抜群。しかし,オチが釣り合っていない。竜頭蛇尾というイメージの作品
【感想】
1993年に出版されたが,あまり売れず2002年に講談社文庫版が出版されたが,これもあまり売れず。2018年に本屋大賞の発掘部門で「超発掘本」となり,文春文庫で3度目の文庫化。あとがきでは,著者の折原一自らが,マイベストに挙げている作品
あとがきによると「倒錯の死角」や「倒錯のロンド」のような叙述トリックの創出に汲々とするようになっていたところで,複数の太いスト―リーを並行して書いていき,途中で混ぜ合わせ,叙述トリックはサスペンスを盛り上げる要素とするという作風を確立させた作品とのこと。確かに,今後に書かれた「○○者」シリーズに通ずる作品のように思えた。
個人的な感想をいうと,折原一は,やはり初期の作風が好みであり,多数のストーリーや作中作などの様々な文体を併せ,叙述トリックはサスペンスを盛り上げる要素とするようになってからの折原一の作風はあまり好きでない。読んでいる途中は面白いのだが,オチがそれほど面白くなく,読み終わってからがっかりする作品が多い。
異人たちの館もそうで,読んでいる途中は面白いのだが,オチの部分がイマイチ
この作品のメインプロットは「小松原淳」と「島崎潤一」を誤認させる叙述トリックだろう。小松原淳も島崎潤一も富士山麓の樹海で遭難しており,母親から「じゅんちゃん」と呼ばれている。島崎潤一の母親も,やや病的な人物で小松原潤一のアパートに忍び込んで原稿に手を入れるなどの奇行をしている。
小松原淳の父親が「ジョージ」という外国人で連続幼女殺人事件の犯人。小松原淳をイジメていた少年なども殺害しており,小松原淳に殺害されているというスジは折原一らしいというか,かなり無茶なスジ。その後,ユキとの関係を責められ自殺しようとした小松原淳が,実は生きており,小松原家に帰ってきて地下室で生活をしているという展開も,折原一らしいと思うけど,かなり無茶なスジである。
最後に小松原淳が島崎潤一の作品を乗っ取ろうとして,島崎葵(島崎潤一の母)とユキの逆襲に会うというオチがなんとも弱い。小松原淳の父が外国人のジョージで,謎の異人が小松原淳だということが,ラストに至るまでの段階で分かっているので、最後の終わり方がさっぱり意外性がない。
トータルで感じることは,冗長だということ。読んでいるときは,サスペンス感があるのでそれほど感じないが,読んでから振り返ると冗長さを感じる。作品を支えるプロットが小松原淳と島崎潤一を誤認させる叙述トリックと,小松原淳の父がジョージという外国人で連続幼女殺人事件などの犯人だったということ。ジョージが外国人だったので,小松原淳もハーフで異人だとして登場していた人物が小松原淳だったというところ
いくつかの作中作もあり,それらも若干スジに絡んでいるが,さほど効果的でない。作中作はなくても全体に影響がない。これも冗長さを感じさせる。読んでいるときは,もっと大きな伏線があるのかと思って読んでいるので,最後で作中作にあまり意味がなかったと分かると拍子抜けしてしまう。
トータルの評価としては,ギリギリ及第点というイメージの★3。