あらすじ
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【シリーズ累計30万部突破!】
【2014年度日本数学会出版賞受賞!】
現代を生きるすべての人にとって必須の教養と言うべき「統計」をテーマに、
「僕」と三人の数学ガール(ミルカさん、テトラちゃん、ユーリ)が楽しい数学トークを繰り広げる、最高の統計入門書。
▼本書の構成
あなたへ
プロローグ
第1章 グラフのトリック
第2章 平らに均す平均
第3章 偏差値の驚き
第4章 コインを10回投げたとき
第5章 投げたコインの正体は
エピローグ
解答
もっと考えたいあなたのために
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●登場人物紹介
「僕」
高校二年生、語り手。
数学、特に数式が好き。
ユーリ
中学二年生、「僕」の従妹。
栗色のポニーテール。論理的な思考が好き。
テトラちゃん
高校一年生、いつも張り切っている《元気少女》。
ショートカットで、大きな目がチャームポイント。
ミルカさん
高校二年生、数学が得意な《饒舌才媛》。
長い黒髪にメタルフレームの眼鏡。
母
「僕」の母親。
瑞谷女史
「僕」の高校に勤務する司書の先生。
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感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
平均、偏差値という言葉について、日本人の多くはその数値が持つ意味を理解していると思います。特に平均についてはその意味は正確に理解しているはずです。一方偏差値については教育の現場で使われていたし、自分のテストに対して「国語のテストの偏差値は60でした。数学のテストの偏差値は65でした。」といったようにスコアリングされていたので馴染みがあるものだと思います。
しかし偏差値がどのように算出されるか?については数学を基礎から学んだ人しか説明できないでしょう。
(偏差値)
偏差値=50+10×(Xk -μ)/σ
ただし、平均点=μ, 標準偏差=σ, Xkは本人のテストの点数
例えば 平均=60、標準偏差=5、Xk=70とすると、
偏差値=50+10(70-60)/5 = 70
となります。
ここで標準偏差=σ(シグマ)という耳慣れない用語があります。これはどのように求められるかというと、
(標準偏差)
σ=√V
ただし、Vは分散。分散の平方根(√)のうち負でないほうを標準偏差とする。
ここでまた分散=Vという用語が新たに出てきてしまいました。
(分散)
V = ((X1-μ)^2 + (X2-μ)^2 + … +(Xn-μ)^2) / n
ただし、平均点=μ, X1,X2,,,はそれぞれの生徒のテストの点数、nはテストをうけた生徒の総数
分散の意味はそれぞれの生徒のテストの点数が平均とどれだけ乖離しているかをプラス、マイナス両方について考慮できるように各々の差の2乗をとって計算したものであり、今回行われたテストは平均値と比較してどれだけ乖離が大きいか、データの散らばりが大きいかを平均的に表したものになります。
乖離の状況は各々の乖離の状況について2乗した形となっているため、その平方根をとった値が実質的な乖離状況を表しておりそれを「標準偏差」としています。用語が表す意味としては「全部のデータを見たときに、標準(平均点)と比べてどのような偏りの状況にあるか?」と理解するとよいと思います。
さて偏差値の定義に戻ってその値がとる意味について考えてみると、
偏差値=50+10×(Xk -μ)/σ という式で表されますから、
自分のテストの点数Xkが平均から離れていればいるほど、50という偏差値の中央値から乖離します。また分散が小さければ小さいほど自分のテストの点数は50という偏差値の中央値から乖離します。
他の生徒のテストの点数が平均と比べてばらつきがないほうが自分のテストの点数のばらつきが際立って偏差値は50という中央値から外れていくことになります。
さてこういった統計を考えるにあたって基礎的な用語について計算を通してしっかり理解した上で、コインを何度か投げた時に表、裏が出る確率について考えます。ここでとても面白い考え方が示されます。コインを投げた時に表が出る確率はいくつか?という大変基本的な問題です。コインの裏表に有意な差がなければ、その確率は50%です。しかし、その試行回数が少ないとき(1回)と多いとき(例えば100000回)で違いはあるのでしょうか?違いはありません。しかし期待値を使って導出する式を見ると、また違った意味が現れるのです。ここはぜひこの本を読んでその不思議に触れてほしい部分です。自分は読んでいてぞくぞくしました。
導出までの説明は省略しますが、
E[Y] = p
(Yは確率変数、Eは期待値、pはコインの表が出る確率)
V[Y] = p(1-p)/n
(nはコインを投げる回数)
√V[Y] = √p(1-p)/n
さて最後の式は分散の平方根ですから、標準偏差を表しています。nはコインを投げる回数です。分母が大きければ大きいほど標準偏差は小さくなるということが読み取れます。つまりコインを投げる回数が多ければ多いほど標準偏差が小さくなるということです。とても不思議であるとともに、コインを投げる回数が多くなるほどに表、裏が出る回数に偏りが小さくなるというのは経験的にも納得がいくものではないでしょうか。これは「大数の弱法則」と呼ばれるそうです。