あらすじ
世界の始まりの国・パンゲアで、中に入った人間の時間を止める魔法の箱がつくられた。王様は愛する姫を箱に入れて、いつまでも若く美しいままでいられるようにする。やがてその箱は王や姫の運命を揺さぶり、世界のあり方を大きく変えることに。そしてその呪いは、はるか先の現代にまでふりかかることになるのだった……。時空を超えた壮大な旅を通して、ほんとうの幸せや豊かさに気づかせてくれる1冊。
アイスランドで国民的人気の傑作ファンタジー!
フィリップ・K・ディック特別賞受賞の著者による最新刊
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
悲しく壮大なファンタジーで、とても感動的な物語なのだが、とにかく読んでいておもしろい。次はどうなる!と先を知りたくて知りたくて、一気に読んでしまった。ラストシーンが美しく、心を打たれる。読後のあまりの感動の大きさにその日の夜なかなか寝付けなかったほど。個人的にはここ数年で一番のお気に入り。この作品に出合えて良かった。
Posted by ブクログ
経済危機をやり過ごすため、世の中のみんながタイムボックスに入る。
その間誰も何もしなかったので、当然世の中はめちゃくちゃに。実は、それは遥か昔、世界の始まりの国パンゲアで起こったことに端を発していた。
現代社会への痛烈な批判と示唆が含まれた意欲作。
個人的には、登場人物に共感できなかったのと、場面展開の荒さが気になって、心から入り込めなかった。
Posted by ブクログ
ミヒャエル・エンデの『モモ』のような話?と思いながら読み始めた。
経済危機が悪化した現在から逃れようと、人々はタイムボックスに入る。ボックスから出てきたシグルンは、変わり果てた町でグレイスに出会う。グレイスは、シグルンら子どもたちに「オブシディアナ姫の物語」を聞かせて…。
動物に人間を襲わせ世界征服を果たしたパンゲア国の王、ディモンと、時間の箱に閉じ込められたオブシディアナ姫を中心に物語は進むが、一番おどろいたのはこの場面!
「こびとの首がころがった瞬間、刃の下で石の床が割れ、裂け目がひび割れ、谷間になり、深い峡谷になる。そこに水が流れこんで水路となり、ついには波だつ海となった。パンゲア国はまっぷたつになり、現在の南米大陸とアフリカ大陸に分裂したのだった——」
試しに二つの大陸を合わせてみると、確かにピッタリだ!
大西洋中央海嶺が島の中央を貫くアイスランドは著者の出身地。今も島では噴火を繰り返しているそうで、自然の脅威を知る著者だからこの作品を生み出すことができたのだと思う。
タイムボックスに入り、都合の悪い時間をやり過ごそうとした人々。
モモのように奪われた時間を取り戻すどころか、何もしないまま「時間に滅ぼされる」ことの怖さを感じる作品だった。
グレイスは何者なのか・・
終盤を二度読みして、シグルンのタイムボックスがなぜ開いたのか?その理由がわかった気がする。
幻想
長いながいファンタジー。
幻想的で,残酷で,悲しくて,道徳的。
宗教的で,哲学的。
あまりにも悲惨な運命を辿ったオブシディアナ姫。
時間を征服することとは,天国に行くことなのかもしれない。
Posted by ブクログ
物語の中に物語があると思っていたら,物語の前に物語があった.永遠も自分の時だけが止まるという事では悲劇でしかない,タイムボックスは呪いである.
Posted by ブクログ
アイスランド文学賞を受賞した、との事前情報なしで読めばよかったかも。
いきなりフケイキが終わるまでタイムボックスに逃げ込む選択をする大人たち。はて?タイムボックスに経済危機が去ったと知らせるのは誰なんだろう。
昔話風に始まる今はないパンゲア国のオブシディアナ姫の物語。父のディモン王は妻に先立たれた悲しみを癒すため、動物に人を襲わせてはならぬ、という戒めを破る。更に姫を大切に思うあまり時間を止められる箱に姫を閉じ込める。そして世界征服のため、戦いに明け暮れる。
オブシディアナ姫は何も聞かされず、箱から出る度にどんどん周りの人たちは歳をとっていく。知らぬ間に再婚していた父王と新しい王妃の間には2人の妹も産まれていたが、もはや自分より年上になっていた。アノリという少年が味方となってくれるが、アノリにも事情があって、なかなか会えない。
どんなブラックジョークだ、と感じた。姫の恐怖というか焦りというか、その事だけが気がかりで途中から一気に読んでしまった。最後の部分は一番大事だと思われるのだが、おまけ程度しか書かれてなかった。グレイスがどんな時を過ごして、何を考えて、シグルン達の前に現れたのか、もう少し書き込んで欲しかった。最後は帳尻を合わせて美しく終わるのだけど、作中の物語の中で主体的に動けないオブシディアナ姫に、読んでいて、つい焦れてしまった。
苦しくても他人任せにしないで、子孫のために頑張る大人は今だって多分世界中にたくさんいる。著者の周りにはそういう人がいなかったのかなぁ。