【感想・ネタバレ】ブータン、これでいいのだのレビュー

あらすじ

クリーニングに出したセーターの袖は千切れているし、給湯器は壊れてお湯が噴出するし、仕事はまったく思い通りに運ばない。「幸せの国」と言われるブータンだけど、現実には社会問題も山積みです。それでも彼らは、「これでいいのだ」と図太くかまえ、胸を張って笑っている――初代首相フェローとしてブータン政府に勤務した著者が、日本人にも伝えたい彼らの“幸せ力”とは。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

GDPではなくGDHを追い求める国として一躍注目を集めた国=ブータン。しかし、後発開発国であり、問題も山積み。というのは、我々の観念や考え方が支配しているのかも?と思わせてくれる新たな発見がある。ユニークな国=ブータン、そしてそこに住み人々の生活と暮らし、そして考え方が筆者の視点から綴られている。

0
2018年11月27日

Posted by ブクログ

今度ブータンに旅行に行くので手に取った本だったがとても面白かった。
ブータンといえば国民総幸福量GNHを基準にして運営されている理想主義国家というのが私の印象だった。それは間違えてはいないがこの本を読むともっとブータン人のリーダー達は現実主義でしたたかだった。
ただ一般の人々は割り切りが早く「これでいいのだ」となってしまう。だから物事が進まない。日本にいると便利なのだが、自分もその便利な社会に貢献するために苦労を強いられる。便利になればなった分さらに苦労する。この本を読むとブータンが羨ましくなる。
旅行が楽しみになった。

0
2016年06月20日

Posted by ブクログ

知りたいことがあまり書かれてなかったので中断しました。
ここまで★一つ。
 ところが、その後読む本が無くなったので、またこの本を中断したところから読んでみました。やっぱり興味のないところは飛ばしながら…。
 すると読んでよかったなとなりました。ブータンの人たちの金銭感覚(これはちと問題あり)、死生観、幸福感には目からうろこが落ちました。11章は白眉です。「自分の幸せを祈っていたら幸せになれない」なんて、よくわからないけれど、とても含蓄がある。多少自分にいやなことや不幸なことがあっても近所の人たちが幸せだったらそれでいいなんて、素晴らしい人格者、国民性だ。読後、とても気分がよくなった。やはり、本は最後まで読んでみるものだ。★四つに格上げしました。

0
2024年01月11日

Posted by ブクログ

2016/12/05
ブータンってどんな国なんだろうという漠然とした興味から手に取った一冊。
何と言っても御手洗さんの冷静な分析と筆力がお見事。
でもブータンへの愛もひしひしと伝わる。
ブータン、一度行ってみたい。

0
2016年12月05日

Posted by ブクログ

「幸福の国」ブータンは、リアルな問題を抱えた、現実の発展途上国だということがわかる。我々が勝手にイメージしている像は、我々自身の中にある郷愁が生み出したものに過ぎない。
にもかかわらず、ブータン人、ブータン王国という組織から学ぶものは多い。幸せに対する考え方、コミュニティのあり方など、同じ大乗仏教を根底におくもの同士、共有できるはずだと思ってしまう。

そして、あきらかに心情的にはブータンに加担しながら、客観的な視点を失わずブータンを描く御手洗さんの筆力も素晴らしいと思う。

0
2016年11月02日

Posted by ブクログ

ブータン王国の初代首相フェローとして、1年間ブータンに滞在した御手洗瑞子氏の著書。

コンサルタント会社マッキンゼーから、一国の政府職員への転身なのだが、まるでド田舎の零細企業に転職した都会のお嬢さん、みたいな感じでブータンでの仕事や生活の様子、そしてブータン国民の気質について綴っている。

農村部では今も続いている夜這いの習慣、隣国であるインドとの微妙な関係、快楽主義で刹那的な国民性、若干都合の良い生死感などなど、ある部分ではイメージ通りであり、またイメージとは少し違うブータンについても知ることが出来た。

たまたま高野秀行氏の『未来国家ブータン』の後に続けて読んだので、なんだか急激にブータンという国に親近感が沸いてしまった。経済バブルなど心配な部分もあるが、伝統と近代化そしてGNHとGDPのバランスの取れた、理想的な国家を実現してほしいと思う。

0
2016年10月26日

Posted by ブクログ

ブータンがなぜ幸せの国なのか、ブータン政府やブータンの人たちの様子を通してその理由が見えてくる。ブータンの現実に日本人の視点からだと本当にそれでいいのかと思ってしまうけど、冷静に考えればどれが正しいとかはない。どっちがいい、悪いではないんだよなあ…。

0
2016年07月23日

Posted by ブクログ

2010年から一年間、ブータンで首相フェローを勤めた、
マッキンゼー出身の著者による「幸せの国・ブータン」体験&考察記です。

ブータンが国をあげてかかげる目標として有名なのが、
GNH(国民総幸福量)の拡大です。
GNHという指標自体が珍しいですよね。
日本やアメリカのようなGDP(国内総生産)拡大、
すなわち経済最優先ではなくて、
経済はもちろんみんなの幸せのためには重要なのだけれど、
そこを一番にもってこないのがブータンの流儀でした。

そんなヴィジョンで国民を引っ張る国ですし、
のどかで牧歌的で、そして幸せにほのぼのと国民が暮らす国、
というようなイメージを僕は持っていました。
物質的には恵まれていなくても、精神的には豊かなのだろう、と。
それはそれで当たっているところもありますが、
だからといって、純朴で素朴で清廉で、というわけではありません。
そこのところは、本書で現実のブータンを読んでいくことでわかっていく。
僕らが抱いているブータンのイメージは「夢の国」としてのものですが、
実際は、現実として、危うさや歪みをかかえた世界だったりもするようです。

でも、彼らの「幸せ力」については、見習うべきところがあります。
楽観的で、ある種の諦めがよい方向に働いている。
これには、ブータンの人々が信じているチベット仏教の影響が多大にあるようです。
チベット仏教は命は輪廻転生すると説く宗教で、
たとえば、そこを飛んでいるハエは何年か前に亡くなったお隣さんのおじいちゃんかもしれないし、
そうじゃなくても誰かの生まれ変わりだろうから叩いて殺したりしない、
殺生はしない、というような特徴があります。
そして、生まれ変わることが前提なので、現世への執着がなく、
それがよい意味での諦めに繋がっているように本書から読めました。

ただ、僕個人としては、生まれ変わりなどを信じず、
一回性の人生を生き抜くことが大事だと考える方なんです。
生まれ変わりを信じると、
今生きている自分や他者の命がいくぶん軽く感じられてしまいます。
本書にも、全力で患者を助けないブータン人医師がいたことが、
極端な例として紹介されていましたが、
生まれかわるんだからいいだろう、というような悪い諦めにも繋がっていくのが、
この死生観かもしれない。
ですが、チベット仏教はそこを解決するのに、
功徳を積むことが来世の幸せにつながるとすることで、
刹那的に過ぎないように、しっかり生きるように人の気持ちを差し向けるようにできている。
それでも今度は現世よりも来世に執着して、
来世のためのお参りばかりして過ごして、現世自体の人生をしっかり生きない、
という人たちもでてくるわけです。
まあ、ブータン人の楽観性と幸せ力は素晴らしいけれど、
完璧ではないということです。
というか、完璧など存在するものではないのだから、
完璧を求めはせずに、それがアンバランスであったとしても、
どんな姿勢を自分は選択するかを考えるべきですよね。

著者は、ブータン人の在り様をそのまま取り入れようとしてもそこには歪みもあるし、
他文化との相容れ無さもあるので、
ひとつのモデルとして参考にするというように捉えることをすすめています。
そのうえで、ベンチャー企業や小さな組織に組織論として応用可能ではないか
という話もしています。
本書にはなかったですが、ブータンの人たちの周囲が幸せになることを願い、
それが自分の幸せになるという価値観は、日本だと介護の現場、
それは施設でも在宅でもですが、
そういうところにすごくマッチするのではないかと思いました。
ブータン流の幸せ力と超高齢社会の介護の現場との結びつきは、
とてもよい効果を生みだしそうな気がするのですが、どうでしょう。
そのために、まず本書を手に取るのも好い手段になり得ると思います。

ブータンは後発開発途上国とされています。
いいかえると、最貧国なのだそうです。
つまり、金銭的、物資的に恵まれていない部分がある。
それでいて、国民はちゃんと幸せを自分のうちにつかまえている。
この事実が問いかけてくるものを受けとめることを、
本書が助けてくれます。

「夜這い」に関する章だとか、衣食住に関する章だとか、
おもしろいよみものとしての性格の方が強いですが、
いろいろな考えのヒントにもなりました。
おもしろかったです。

0
2020年10月31日

Posted by ブクログ

「世界一幸せな国」と言われていて、どんな生活をしている国なのだろうかと知りたかったが、今回この本を読んで自分たちの価値観とは全く違っていて面白かった。

ブータンでは、1週間以上先の予定は覚えられないから約束しない。
仕事もほとんどの人が定時で帰り、19時まで仕事をするとワーカホリックと言われる。
など、基本的には皆、自分のペースで仕事をするため、基本的に目標も達成するまで数ヶ月・数年と遅れるのが基本となっている。
マイペースで無理をしない、仕方ないと受容する。森鴎外の「高瀬舟」のように足ることを知っている民族なのだと思った。

ただ、「仕方ない」と何事も受容する精神で、失敗にも寛容で怒ることもあまりないが、仕事や業務などある一定以上の負荷をかけられると逆ギレすることがある。

個人的にはブータンの人たちのように何事も「仕方ない」と受容できるようにもなりたいと思うけれど、受容できないからこそ頑張ってそれを良くしようとする気持ちも生まれるから、その間で揺らぎながら自分なりの良いバランスで進みたいと思った。

0
2017年01月08日

「エッセイ・紀行」ランキング