【感想・ネタバレ】デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論―潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋のレビュー

あらすじ

ベストセラー『新・観光立国論』の著者、30年間の集大成がついに刊行。

日本はいま、潜在能力をまったく活かせない「日本病」に陥っている。
その原因を特定し、「あたりまえの政策」を実行するだけで、
【平均年収2倍】【GDP1.5倍(770兆円)】が可能になる!

データに基づく客観的な分析で解説する、日本に輝かしい未来をもたらす方法。

■潜在能力を活かせば、日本はこうなる
・平均給与は男性が1.6倍、女性が2.7倍に。全体では約2倍に拡大
・GDPは1.5倍の770兆円に
・貧困問題、国の借金の問題、社会保障費問題も解決する

■筆者のコメント
皆さんが学校でこんなに熱心に勉強して、塾にも通って、就職してからも毎日長い時間を会社で過ごし、
有給休暇もほとんど消化せず、一所懸命働いているのに、「生産性は世界第27位」と言われて、悔しくないですか。
先進国最下位の生産性と言われて、悔しくないですか。
こんなにも教育水準が高い国で、世界の科学技術を牽引するだけの潜在能力がありながら、
1人あたりのノーベル賞受賞数が世界で第39位というのは、悔しくないですか。
「ものづくり大国」を名乗りながら、1人あたり輸出額は世界第44位と言われて、悔しくないですか。

私は、悔しいです。日本は、この程度の国ではありません。

日本の実績を「この程度」に押しとどめている原因を特定し、改革を実行すれば、日本は必ずや、劇的な復活を果たせるはずです。
本書がその一助となれば、筆者としてこれほど嬉しいことはありません。

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人口や1人あたりのGDP・生産性といったキーワードをもとに日本経済を紐解く、デービッド・アトキンソン氏の著作。
氏は多面的に日本経済へのアプローチを行っているが、その主張、論拠は一貫しており、客観的な数字に基づいた説明がなされている。そのため、これは氏が手がけたどの著作にも共通している点だが、論調にブレがなく、納得感のある説明には毎回舌を巻くばかりである。
詳細は本作をお読みいただければと思うが、もはや世界における日本の優位性は揺らぎ始めており、他の先進国から取り残される未来も近くなってきている。その現実に対して警鐘を鳴らす本作は、今まで日本人が盲目的に信じ込んできた日本像を考え直す機会を与えてくれるとともに、日本という国が進むべき将来の針路について、有益な示唆を与えてくれることだろう。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「新・観光立国論」等の著書で日本の観光産業の問題点を舌鋒鋭く指摘し、そのあるべき姿を提唱してきたイギリス出身で元証券アナリストの著者が、「生産性」の観点から今日の日本が抱える根本的な課題を分析し、その解決に向けた処方箋を示した一冊。

日本は戦後の高度成長期を通じて奇跡的ともいえる経済的成功を収め、90年代以降は低迷しているとはいえ、GDPでは世界第3位を維持する経済大国であるが、人口一人あたりでみるとGDPは世界第27位であり、著者は人口の絶対量による規模ではなく、一人あたりでみる生産性に着目すべきと指摘した上で、戦後の日本の経済成長が実は人口の爆発的増加による「人口ボーナス」効果によるもので、他国が取り組んできた生産性向上に向けた努力を怠ってきたため、前例踏襲主義や官僚主義、変化への抵抗感が根強く、今日の低迷に繋がっているとする。

そのため著者は、まずは経営者が生産性向上に本気で取り組むことを提唱し、移民の前に女性の労働力を質的な面でもっと活用することなどを通じて企業価値を上げることが不可欠であると説く。多くの日本人にとって耳の痛いアドバイスが多いが、豊富な定量的分析によって支えられた分析と論理展開は説得力があり、また単なる批判で終わらない著者の日本に対する愛情の強さも感じる。

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2018年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルに惹かれて読んでみました。
所得倍増論という昭和の古き良き時代の響きを感じたので。
しかし内容はその古き良き昭和の日本の凄まじい成長は
日本型資本主義や日本の技術力、国民性によるものではなく
先進国では異常なまでの人口増に支えられたものだった
という事実が淡々と語られます。

あまりにGDP至上主義な話の展開ではありますが
日本人の一人当たりの生産性が低いという指摘は
間違っていないと思います。
私も社会人になって10数年が経とうとしていますが
無駄と思われる手続きや慣習の何と多いことかと
日々感じています。
まさに人を雇用している大義名分が立つように仕事を
作り出しているような感じで。

人口減の道を進んでいく日本としてはやはり著者の言う通り
個々の生産性を上げていく努力をしていくしか
明るい未来は無いのではないかと思います。
著者は経営者の責任だと述べていますが労働者一人一人も
意識して生産性を上げていかなければならないと思います。
ともすれば私益に走ってしまう心を戒めて公益のために
どうすればよいかを考えることも必要だと思います。
かなり当たり前のことを述べた本なのですが目からウロコで
とてもためになりました。

また、正直途中の話の展開から日本も人口を増やしていくために
移民を受け入れるべきという安易な結論に達するのかと
ひやひやしていたのですが真逆な展開となってちょっと安心しました。

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2017年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

イギリス人元アナリスト兼文化財修復企業代表兼、政府成長戦略会議メンバー(だったらしい。今はどうだか知らない。)たる、異色外国人活動家(でいいのかな)による日本改革論。

・良かった点
8章「経営者と政府の動機の乖離」
「(※競争や圧力に晒されない状況下の)経営者は自分のことだけ。変わることへのメリットがない」という指摘にあーまー確かにね~というのは思った。
だから政府が介入し生産性の向上を促すべき、らしい。
ここ最近の最低賃金上昇とか電子帳簿保存とかああせいこうせい言ってくるのはこういう意図なんだなーと。こういう方向性については今更ながら頭の隅においといて損はないと思う。

・よくなかった点
倍増も夢じゃないぜ!という希望的観測しか書いてなかったので「新・所得倍増論」のタイトルは大風呂敷すぎかなあと。現政権の「微増でも目標達成」的発言よりかはましですが。あと1~8章までが現状分析で倍増論は9章だけだったのでペース配分おかしくね?という気も。

総評
2016年初出の本だということで、当時の「失われた20年」が「失われた30年」となってる状況を見ながら読む。
接客業のタッチパネル注文とか、IT化・省人化はちょっとづつ進んできてはいるけどまだまだ「自己改革はしない(したくない)が公的支援は欲しい」気質は根強い気がする。
本文にもあったけど「何でも反対して何でも守ろうとするから生産性があがらない」ていうのは「改革後のバラ色の未来」が見えないというのと、それがうまくいったとして「全体最適であって自己最適じゃない」からかなーと思った。そして飴と鞭の「鞭」の話ばっかだったので、幻想でいいからもっと皆に欲をかかせる「所得2倍やで!倍増やで!」ビジョンがあれば説得力が増すのにな~という所がちょっと残念だった。

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2022年01月10日

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