あらすじ
犯人逮捕は事件の終わりではない。そこから始まるもうひとつのドラマがある。──息子を殺された男が、犯人の自供によって知る息子の別の顔「真相」、選挙に出馬した男の、絶対に当選しなければならない理由「18番ホール」など、事件の奥に隠された個人対個人の物語を5編収録。人間の心理・心情を鋭く描いた傑作短編集。
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Posted by ブクログ
短編ですが、ぐぐっと引き込まれてあっという間に読み切りました。警察によって、犯行の真相を明らかにするのではなく、犯罪者側かその近親者側から犯行の真相にせまる展開です。最後は含みを持たせて終わる話もあり、きっと読む人により想像する結末が異なると思います。どの短編もとても心に残るけど、「18番ホール」は、疑心暗鬼の心で破滅に突き進んでしまう主人公がとても怖かった。人を信じることができなくなり疑い始めたら、歯車も狂ってしまう。ミステリー好きの友達にも進めたい本です。
Posted by ブクログ
おもしろかった。
横山秀夫作品を読んだのは、「臨場」に続き2冊目でした。
短編集で全部おもしろい。
タイトルからしてイヤミス風ですが、本当にそうでした。
知らなきゃ良かった、知りたくなかった。後悔先にたたず。
「18番ホール」と「他人の家」が、特に秀逸だと思いました。
18番ホール・・・
県庁を退職して、地元の村の村長選挙に出馬することになった男。
当選確実と言われ仕事を辞め、妻子を連れて地元に戻ったが、予期せぬ対抗馬の出馬により、当選の行方があやしくなっていく。
仲間への不信、過去に犯したことが露呈しているのではないかという疑心暗鬼の中、投開票の日を迎え、結果は・・・。
人間の心理がすごい。焦りの中で周囲に腫れ物として扱われ、そんな中で変わらず彼に接する健気な障害者の従兄弟が切ない。
他人の家・・・
過去に強盗致傷罪で服役した男が、賃貸アパートの大家から退去を求められた。
インターネットで過去の事件が載っており、住まわせられないということらしい。
インターネットが分からない男と妻は、朝のゴミ拾いの際に出会った佐藤老人に事情を話して教えてもらったところ、老人から思いがけない申し出をされ・・・。
想像だにしない結末!正直なところ、これくらいの分量の短編で、ここまで「やられたー」を感じられるとは、それすらも想定外。
インターネットが生活の一部でない時代の小説ということだよね?
2003年刊行ということは、書かれたのは2000年前後だろうか。短編集だと、1篇だけ結構古いものを入れていることもあるが。
しかし全く古く感じられない。むしろ、「忘れられる権利」が普通に認められていた時代を思い出されてハッとする。
大家のとんでも言い分とか、現代なら住んでいる家を追い出すって出来ないし、まぁありえないよねとは思うが、人間心理としては今も昔もおかしい話ではないだろう。
タイトルもいいよね「他人の家」って。
令和風の言い方をするならば、控えめに言って天才。
この話が最後に掲載されていることで、本全体の読後満足感が上がった。
横山秀夫作品、ひと昔前の本だけどすごい良いよね。
臨場も、追い臨場したくてドラマの再放送を待ちわびている。
有料のテレ朝チャンネルが無料で見れる日に見たけど、超良かった。
原作も映像作品も良いって、すごくないか。
Posted by ブクログ
収録作品
真相/18番ホール/不眠/花輪の海/他人の家
*****
今回の『真相』は警察小説、ではない。
重いお話が多いのだけれど、後味が悪くないところがお気に入り。
全ての物語にドラマがあり、更なる謎や登場人物の思惑が浮き彫りになっていく様に引きずり込まれていく。
『真相』で先ずじんわりと涙し、『18番ホール』、『不眠』でハラハラドキドキし、『花輪の海』でひんやり、じんわりし、『他人の家』でまた息を呑む。
『花輪の海』は前半、読んでいて痛々しい描写があったものの、ラストまで読み、収録作品の中で一番好きになった。
青空を駆けるメール…ここが好き。
横山さんの作品は全てのお話に”救い”があるわけではなく、”光”に到達しないままに物語が終わることもある。
でも、読後感は悪くない。
物語が進むにつれて力が入り、終わるとようやく緩む感じがする。
ちょっぴり間は空けたいけれど、また近い内に読みたい作家さん。