あらすじ
▼第1章/アナログ温泉▼第2章/肉彦くんとせんせい▼第3章/隣町から来たスパイ▼別章1節/世界最後の日々 出発▼別章2節/世界最後の日々 コンビニ▼別章3節/世界最後の日々 川▼別章4節/世界最後の日々 パーティー▼別章5節/世界最後の日々 世界最後の日●主な登場人物/浦山雪子(親の借金のカタに町長の妾になる。町長の家で暮らしながら、高校に通う)、海場太郎(海場町の町長。妻は元同級生)、鳴子(町長の正妻。毒薬マニア。元は妾だったが、元々の正妻を毒殺し、現在は正妻の座におさまっているという噂を持つ)、肉彦(町長の息子、のはずだが、母親が誰なのか、父親も町長ではないかもしれない、という不思議な存在の子)●あらすじ/ある旅館でのこと。映画撮影をしながら旅を続けている微藤、加藤、無藤の学生3人組と麻雀卓を囲むことになった海馬太郎。微藤、加藤の男二人は、理屈ばかりこね回していて、結局映画を完成させないまま、何年も撮影の旅を続けている。麻雀を進めているところへ、郵便局からラッシュ・フィルムが届き、突然上映会が始まってしまう。上映後、あいまいに言葉を濁す海馬に対し、加藤は「つまらないならはっきりそう言え」という。そして「見せ場が無い」という海馬の言葉を「濡れ場」が足りないというふうに解釈した微藤は、嫌がる無藤に「濡れ場の演技」を強要しようとするが…(第1章)。▼青木先生は、肉彦くんの担任の先生です。半年前、青木先生のうちに遊びに行った肉彦くんは、そこで先生の日記を見てしまいました。その日以来、青木先生は肉彦くんの家庭教師をすることになりました。そう、肉彦くんは青木先生をおもちゃにしているのでした(第2話)。●本巻の特徴/1999年の7月。ちょうどその話題で持ちきりの頃、ある少年が、授業中に突然現れた神様から「恐怖の大王」をやっつけろとの啓示を受ける『世界最後の日々』を後半5話にわたって収録。
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Posted by ブクログ
山本直樹の作品には毒がある。
それも人間なら誰しもが秘めている毒なのではないか。
世界の終わり———もしそんな日が本当に来たら。
作者は人間の深層心理を探っている。作中の登場人物が非道な行動に取り付かれる精神異常者に見えるだろうか。そうだとは断定できないのではないか。
どうせ世界が終わるならと考えたとき、心の奥深くにある狂気はいつ誰の身に目覚めても不思議ではないのかもしれない。
自分にも心当たりがある……そう気づいてしまったとき、驚愕する。
Posted by ブクログ
山本直樹のマンガに出てくる人物たちは
いつも閉塞された空間の中でセックスしている。
家、車の中、学校、漁師小屋、田舎という閉じられた世界・・・。
彼らはどこにも行くことができず、逃げることもできない。
淫靡で悲哀に満ちたセックスを繰り返しては別れていく。
ただただそれだけだ。
それは少し情けなくもあり、やるせなくもある。
けれど、結局のところ世界とはそういうものなのかもしれない。
「この先、死ぬまでほかの誰かと、こんなふうに過ごし、
こんなふうな気分になることは、もう二度とはないのだろう。
そんなことを考えると、なんだか悲しくなってしまって、気持ち良いほど涙が出た。」
(「肉彦くんとせんせい」P71)
やりきれない感情が痛々しくて
手に取るようにわかる自分が哀しくて、
でもわたしはその世界に触れたくてまた彼の作品に手を伸ばす。
その繰り返し。
Posted by ブクログ
かなり傑作短編集。
つーか、山本さんのマンガって人の名前のネーミングがすごいよね。
この作品集だと「肉彦」とか「微藤」とか。
絶対いなさそうだけど、妙に笑える。
しかも、肉彦くん小学生だし。
なんか妄想大暴走の短編集。ですな。
Posted by ブクログ
前半は「雪子さん」シリーズの外伝になるのだろうか。第1章:町長がとある温泉町の宿で同宿した奇妙な三人組「アナログ温泉」、第2章:町長の一人息子の小学生と担任の女性教師の倒錯した性関係を描いた、おそらくこの巻の白眉「肉彦くんとせんせい」、第3章:過激派のアジトに拉致された雪子「隣町から来たスパイ」。
後半は、夢と現実の境界が失われた、現在の山本直樹の作風の最初の完成形である「世界最後の日々(5編)」
Posted by ブクログ
その続編的な短篇集。にしても、僕の中でよく覚えているなぁって思った。そのくらい、以前に読んだものをちゃんと僕の頭の中には刻み込まれている。一方で、読んだことないであろう作品なのに、あれ、読んだこと、あるかもっていう感じがする作品も。つまりは、山本直樹はある意味で反復の作家なのかもしれない。(12/2/18)