【感想・ネタバレ】史上最高に面白いファウストのレビュー

あらすじ

かつて『ファウスト』を手に取りながらも、途中で挫折したあなた!
読み通せなかったのは、あなたのせいではないのです。

投げ出してしまったのは、これまでの重々しく格調の高い“古典文学的な”翻訳と、「人格形成を目指して努力する人間の物語」と日本で勝手に神格化されてしまったから。
そもそも『ファウスト』はお芝居なので、字面を追っても本当の面白さは伝わりません。そこで演劇にも通じたドイツ文学者が、演じられる情景が目に浮かぶような訳文と、ていねいな解説をまじえながら原作を一気に紹介。

悪魔メフィストと契約して二十歳そこそこの青年に若返った老博士ファウストが、ギリシャ神話の古代から未来まで時空を超え、美男美女、神や魔物が入り乱れる世界で、欲望のままに少女をだまして捨てさったり、人を殺したりと自由奔放に活動する--歌あり踊りあり、マジック、サーカス、ストリップ、お笑い、剣劇を織り交ぜた最高のエンターテインメント『ファウスト』をついに読み通せます。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

【人生を賭けるファウストと悪魔の劇作品】
ゲーテの「ファウスト」は、とても分厚く読みにくい印象があって、読んだことがないのですが、
この本で、ざっと設定やあらすじを楽しむことができたと思います。
ファウストは、小説ではなく、劇作なのですね、そんな形式では普段にも読んだことがないので、
この本では、そんな環境設定にも触れつつ、とても分かりやすく、それぞれのシーンを思い浮かべやすく、とても分かりやすい解説が簡潔に加えられていて、助かりました。

・・・
ファウスト、という主人公と、メフィスト、という悪魔の間の「賭け」のお話。

本来、キリスト教だと契約、日本・仏教的だと絆や信頼、輪廻?みたいなところが、
「賭け」というところでユーモアセンスが見られることも知りました。

ファウストという16世紀の実在人物をモデルとして書かれ、ゲーテの作品は1800年に初版が発行されています。

これを作るにあたったゲーテの基本思想が、
天国、現世から地獄に至るファウストのストーリーについて、そこから一貫した理念を見いだそうとする学者などを揶揄し、単なる「筋書き」に過ぎない、と語っているとのこと。

ファウスト伝説なるものを私はあまり理解していなかったのですが、
「Es irrt der Mensch, solang' er strebt.」の意味するところがキーとなっていることについて、あとがきでの著者なりの解説も興味深かったです。

日本語訳ではさまざまな訳がこれまでなされてきたようですが、
著者は、この主の文を、
「人間が、野心に駆られて奮闘努力すれば、必ず、罪を犯す」
という、人間の業を指摘する側面を強調しています。
そしてその後に続く言葉について、
「わしの見込んだ者であれば、悪の道から正道にもどるじゃろう」
と、フォローが入っているという。

以下、あとがきより。

__…一般的な「よい人間」の範疇で考えたとしても、ファウストは最後まで「よい人間」にはなりません。このあと「暗い衝動に駆られて」悪魔と結託し、我欲の充足の「活動」に終始していきます。…
…ファウストはこのような主の意図に沿って、悪魔という仲間を同伴し、悪魔の仕事」を続けることになります。そして一度も正道に戻ることなく、間違いだらけのまま生涯を終えます。…


・・・

これは観劇を目的として書かれた作品だとのことなので、
舞台が見たくなりました。

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2024年06月10日

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