【感想・ネタバレ】史上最高に面白いファウストのレビュー

あらすじ

かつて『ファウスト』を手に取りながらも、途中で挫折したあなた!
読み通せなかったのは、あなたのせいではないのです。

投げ出してしまったのは、これまでの重々しく格調の高い“古典文学的な”翻訳と、「人格形成を目指して努力する人間の物語」と日本で勝手に神格化されてしまったから。
そもそも『ファウスト』はお芝居なので、字面を追っても本当の面白さは伝わりません。そこで演劇にも通じたドイツ文学者が、演じられる情景が目に浮かぶような訳文と、ていねいな解説をまじえながら原作を一気に紹介。

悪魔メフィストと契約して二十歳そこそこの青年に若返った老博士ファウストが、ギリシャ神話の古代から未来まで時空を超え、美男美女、神や魔物が入り乱れる世界で、欲望のままに少女をだまして捨てさったり、人を殺したりと自由奔放に活動する--歌あり踊りあり、マジック、サーカス、ストリップ、お笑い、剣劇を織り交ぜた最高のエンターテインメント『ファウスト』をついに読み通せます。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

これはよくできた本。タイトルのポップさを鵜呑みにせず、最後まで通読すると得られるものが大きい。

抄録に解説が適宜織り交ぜられ、最後にこの作品の本質を著者なりの解釈で解き明かす。抄録の部分も舞台感がリズミカルにうまく表現されている。

はじめて『ファウスト』が分かった。どんな形でも、これまで『ファウスト』は分からなかったのに。

0
2021年08月25日

Posted by ブクログ

「まんがで読破 ファウスト」と「手塚治虫ファウスト」という、マンガ2冊に続いての、活字の入門本へのステップアップとして購入しました。
===
著者は、ゲーテひと筋60年という教授の先生。
高尚な人格者による、ものすごく難解な大長編の文学作品という、誤ったイメージがあるけど、そうじゃない。
退屈で苦しいだけの日々に忙殺されている庶民に、笑い転げたり、怒ったり、泣いたり、心の底から楽しんでもらいたいという一心で、ゲーテが生涯をかけて取り組んだエンターテイメント作品。
もっとガードを下げて、1人でも多くの人に気軽に楽しんでほしい。
この点を、この本の中で何回も強調しています。
===
例えば……
序盤、悪魔メフィストは、プードルという犬に化けて主人公ファウストに近づきます。
ググってみたら当時、プードルは新しく開発されたばかりで、庶民の間で大人気だったそうで。
向こうの人達なら誰もが幼い頃に慣れ親しんでる、(ギリシャ神話ベースの)童話と同じシチュエーションで、童話と同じ名前の老夫婦も登場します。
なるほど、続編なんだね、と思うじゃないですか。
ところが、その直後、悪魔がこの老父婦を焼き殺します。
そもそもの基本的な構成が、旧約聖書のヨブ記のパロディだそうで。
ラストも、カトリック全盛の神聖ローマ帝国の時代に書かれたとは思えない、キリスト教の根底になってるタブーを侵して幕が降りる。
さすがに殺されると思ったのか、後半(第2部)はゲーテの遺言に従って、ゲーテの死後に公開されたそうです。
===
たぶん、今でいうと、高名な会社経営者がタピオカドリンクを片手に楽器箱に隠れようとしたところでそのドリンクが大爆発するような展開。
しかも、鶴が恩返しではた織りしている小屋ごと火事で燃やして登場人物みんな殺しちゃうような、破茶滅茶の連続。
よくわからないカタカナ語を1つ1つググりながらなので、2週間ぐらいかかっちゃいましたが、すっかり虜になりました。
「なるほど、いかにもキリスト教の発想だね」「そうか、キリスト教社会の連中はこう考えるのか」という、新しい気付きもいっぱいありました。
この本のおかげで、次は森林太郎さん(後の森鴎外)訳の「本物」を読んでみようと思い立ち、(絶版なので)中古で探し回っているところです。

0
2020年01月22日

Posted by ブクログ

新潮文庫の「ファウスト」(高橋義孝訳)と並行して読んだ。
とてもわかりやすくて入門にはよかったが、これだけだとちょっと味気ない。並行読みオススメです。

0
2019年10月14日

Posted by ブクログ

多くの人が難解としてなかなか手が出せないだろうファウストを、分かりやすく噛み砕いて紹介している。言葉も現代の表現にされており、非常に読みやすい。
情景描写が分かりやすく、頭の中で舞台上の演者や観客を想像しながら楽しく読めた。
こうして世界の名著に親しめることを嬉しく思う。
これは確かに、「史上最高に面白いファウスト」かもしれない。

0
2017年01月25日

Posted by ブクログ

久々に☆5つ!
とっても面白かった!

<本から>

神秘な合唱

 移ろいゆくものは、すべて
 影にすぎない。
 我欲のために悪にまみれた
 迷える魂もここでは赦され
 永久の営みに組み込まれる。
 ここに軌跡が起こる。
 命を生み育む慈愛、
 この永遠にして女性的なるものが
 わたくしたちを滅びから救うことができる。
 母たちよ
 栄光の聖母よ
 至福の光で
 この世を永久にご照覧あれ!

0
2017年01月07日

Posted by ブクログ

ファウストは、哲学や進学に打ち込んだ堅物のファウストに対して、神と悪魔(メフィスト)が彼を堕落させられるか否かをテーマに賭けをして、賭けに勝つためにメフィストがあの手この手でファウストの希望を叶えながら進んでいく物語。

恋多き作者ゲーテの個人の記憶も投影しながらも、人間のどうしようもなさ、一方で意思に導かれる部分を描き、また絶妙な神学批判も織り交ぜながら、神学やギリシャ神話にも言及して進む物語。

元々劇の台本の様な形式で書かれた作品のため、作者の構成の仕方は非常に分かりやすく、初めてであっても入り込むことができた。

0
2025年04月28日

Posted by ブクログ

ファウストが史上最高に面白いのか・ファウストをこう解釈すると面白いのか~1部:魔女の薬で20歳の若者になったファウストは14歳のマルガレーテ(グレートヒェン)に一目惚れし,眠り薬を母親に仕込んで思いを遂げるが,妊娠を兄に責められ,ファウストは逃亡し,マルガレーテは嬰児殺しの罪を負い,ファウストも救えなかった。2部:皇帝の側近になったファウストは皇帝の命で呼び出したヘレナに惚れ込み,人造人間ホムンクルムと古代ギリシアの世界に,スパルタに戻って殺されそうな所をゲルマンの騎士になりきって攫う。男児が飛び降り自殺をしてヘレナも消え,現代に戻ったファウストは戦争に荷担して海沿いの領土を得,理想郷を作って満足して死ぬが,魂は栄光の聖母とグレーチヘンと呼ばれた女によって天国へ~まあ,どっちもなんでしょうね。高校の時に岩波文庫で読んで,暫くとっておいたんだけど今は行方不明。捨てたんでしょうね。改めて,どういう内容か思い出せて良かったけど,どんでん返しさえ憶えていなかった。エンターテインメント戯曲で良いじゃん!と1933年生まれのドイツ文学者の託宣!

0
2017年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【人生を賭けるファウストと悪魔の劇作品】
ゲーテの「ファウスト」は、とても分厚く読みにくい印象があって、読んだことがないのですが、
この本で、ざっと設定やあらすじを楽しむことができたと思います。
ファウストは、小説ではなく、劇作なのですね、そんな形式では普段にも読んだことがないので、
この本では、そんな環境設定にも触れつつ、とても分かりやすく、それぞれのシーンを思い浮かべやすく、とても分かりやすい解説が簡潔に加えられていて、助かりました。

・・・
ファウスト、という主人公と、メフィスト、という悪魔の間の「賭け」のお話。

本来、キリスト教だと契約、日本・仏教的だと絆や信頼、輪廻?みたいなところが、
「賭け」というところでユーモアセンスが見られることも知りました。

ファウストという16世紀の実在人物をモデルとして書かれ、ゲーテの作品は1800年に初版が発行されています。

これを作るにあたったゲーテの基本思想が、
天国、現世から地獄に至るファウストのストーリーについて、そこから一貫した理念を見いだそうとする学者などを揶揄し、単なる「筋書き」に過ぎない、と語っているとのこと。

ファウスト伝説なるものを私はあまり理解していなかったのですが、
「Es irrt der Mensch, solang' er strebt.」の意味するところがキーとなっていることについて、あとがきでの著者なりの解説も興味深かったです。

日本語訳ではさまざまな訳がこれまでなされてきたようですが、
著者は、この主の文を、
「人間が、野心に駆られて奮闘努力すれば、必ず、罪を犯す」
という、人間の業を指摘する側面を強調しています。
そしてその後に続く言葉について、
「わしの見込んだ者であれば、悪の道から正道にもどるじゃろう」
と、フォローが入っているという。

以下、あとがきより。

__…一般的な「よい人間」の範疇で考えたとしても、ファウストは最後まで「よい人間」にはなりません。このあと「暗い衝動に駆られて」悪魔と結託し、我欲の充足の「活動」に終始していきます。…
…ファウストはこのような主の意図に沿って、悪魔という仲間を同伴し、悪魔の仕事」を続けることになります。そして一度も正道に戻ることなく、間違いだらけのまま生涯を終えます。…


・・・

これは観劇を目的として書かれた作品だとのことなので、
舞台が見たくなりました。

0
2024年06月10日

Posted by ブクログ

時代背景やゲーテの意図しようとしてたものが解説付きで物語が進んでいくので大変にわかりやすかった。

現代一般人の自分にとって、原作を読んでも本当の面白さはこれっぽっちも理解できないだろうし、理解するだけの知識を得る時間もそんなにない。

ファウストの物語自体が色々な含みを持っているようなので、今回はこの作者に依存した理解、これまでの手塚治虫に依存した理解でいったんファウストは読み納めてもいいかな。

今回読むことでだいぶファウストの印象は変わった。それだけ手塚治虫のファウストは脚色もしっかりされていたし、それなりに面白かった。

いつかは原文をゆっくりと紐解いていくか?いや多分時間も、紐解いていくだけの根気も能力もないかな。。。

0
2019年06月05日

「エッセイ・紀行」ランキング