【感想・ネタバレ】低欲望社会 ~「大志なき時代」の新・国富論~(小学館新書)のレビュー

あらすじ

“アベノミクスのパラドックス”を読み解く。

〈安倍政権が「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」「切れ目のない経済対策」「第2次安倍政権以降最大の28兆円」などと喧伝すればするほど、国民は日本経済の先行きは暗いと思ってしまう。これこそアベノミクスでも景気がいっこうに上向かないパラドックス(逆説)の仕組みであり、私が「心理経済学」として提唱していることである。〉(新書版まえがきより)

なぜ「アベノミクス」では景気が良くならないのか?
日本が“借金漬け”から脱する日は来るのか?
「皆が等しく貧乏になる国」で本当にいいのか?
……それらの難題を読み解くカギは「低欲望社会」にある。

日本では今、世界に先駆けて未曽有の危機が進行している。人口減少、超高齢化、欲なき若者たちの増加……。この国に必要なのは人々の心理に働きかけ国全体を明るくする新たな国富論だ。

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Posted by ブクログ

(2015/10/27)
現状の日本の最大の問題は「低欲望社会」になってしまっていることであるのに、
国の政策は的外れになっている。
ということで諸政策を容赦なく論破。

戸籍をなくし、子育てに厚い政策を取らない限り出生率は上がらない。
労働人口は毎年40万人減っていくのには到底間に合わない。人口は20年の計が必要。
生産性が上がるとは思えないので、移民政策しかない。
2年教育をして合格した者のみ許可すればトラブルは起きない。

などなど、真正面から国の課題を指摘し、改善案を出し続ける大前さん。
大前信者としては頷くしかない。
マイナンバー批判などはいつもの大前節。サイバーゼネコン!

そのほかでは、、、一極集中は大歓迎、私鉄の充実で電車交通網が世界一発展。
その東京、山手線内の容積率建蔽率緩和により経済発展。
そして都心から1時間半のところに別荘を持ち、土日に暮らせば地方も発展。
地方創生は万策尽きた証拠。うまく行った試しなし!
以前は港湾の再開発といっていたが、そこはトーンが変わり、海外の英知を集めよと。
見限った橋下市長の政策案のひとつ、カジノはすでに衰退、論外と。

国が躍起になって進めている法人税減税にもメスを。
今回ここが一番斬新だった。
20%台にするのが国の目標だが、その程度で外国企業が来ることはない。
税金対策はもっと違う観点で各企業、特にIT企業はやっている。効果なし。
労働力、市場という意味でも日本よりアジアのほうがまし。

ピケティのいう格差は事実だろうが、日本の場合は資産を増やしている金持ちはあまりいない。
資産税が効果的というのはその通りだが。
とずばずば斬っている。

1000兆を超える国の借金がいずれハイパーインフレを引き起こす。
そうなったら借金は減り、老人は困り、若者はローンが減り救われるともいう。
それはそれでいいかもしれないが、大前さんは消費税20%しかないという。
税金全体を動かしての話だろうが。

地方自治についても斬新だった。法律は国会議員が決めるから、地方議員はいらない。
いたとしても無報酬でいい。それが2000万円ももらうから、不祥事があとをたたないと。
国から地方に権限を移し、道州制をとることで日本の活力が生まれる。

大前節炸裂!!

第1章 現状分析―「人口減少+低欲望社会」の衝撃
ピケティ『21世紀の資本』をどう読むか
「田園調布」が普通の街になる理由 ほか
第2章 政府の限界―「アベノミクス・ショック」に備えよ
すでに政策は出し尽くした感がある
「第1の矢」はチキンゲーム状態 ほか
第3章 新・経済対策―「心理経済学」で考える成長戦略
あまりにお粗末な規制改革会議
都心大規模再開発プロジェクトを ほか
第4章 統治機構改革―今こそ「国の仕組み」を変える
今日の閉塞は予言されていた
自民党主導の“超肥満体”国家の末路 ほか

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2024年06月27日

Posted by ブクログ

コンサルタントである著者が統計データや世界中を見てきた所感を混じえ論理的に喝破し日本再生の道筋を展開。
そう上手くはいかないとは思いつつ頷ける点もかなり多い。
不安さえなくせば日本は大丈夫!と坂の上の雲を見よ、君たちは大丈夫なのだよ、と最後にはエールも。
思考停止に陥っている日本人には一読の価値あり

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2017年02月03日

Posted by ブクログ

著者は“低欲望”とでも呼ぶべき傾向に関して「内向き、下向き、後ろ向き」と纏め、「それで善い筈もないが、事実なのだから、受け止めて“仕切り直し”をして行こうではないか!そして、今やらなければ本当に“機会”を逸してしまう…」としている。
本書では、“声が大きい”人達が声高に主張することに関して、実はかなり多くのことが“見当違い”とか、“小手先”に過ぎて仕様も無いというようなことが、新書の限られた紙幅の中で手際良く指摘されている。一つ、一つ大きく頷ける話しだ。或いは、そういう状態であるのが“危険”なのかもしれない…
“低欲望”とでも呼ぶべき最近の日本の状況は、著者によれば「古今東西に類例が余り思い当たらない」ような状態なのだそうだ。どういう状態か?何故か?そして様々な分野の状況に関して、非常に詳しく解説され、「こういう考え方は如何か?」と提言が在る…大変に有益だと思う。或いは“声が大きい”人達が声高に主張することに対して「こういう少し違う観方」ということを教えてくれる一冊だ。こういう本は“必読”かもしれない…

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2016年11月18日

Posted by ブクログ

欲望が人生を駆動した時代は過ぎた。物を持つより心地よさを重んじ、挑戦より安定を選ぶ若者が増えている。大前研一はこれを「低欲望社会」と呼び大志を欠いた国の行方を問う。確かに過度な競争や消費の幻想は崩れた。だが欲望の火が弱まれば未来を切り拓く力もまた萎む。個人の幸福を守りつつ国家としての繁栄をどう築くのか――。新しい国富論とは欲望に代わる価値を見いだし共有する道を示すことに他ならない。

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2025年08月18日

Posted by ブクログ

衣食住にはとりあえず不自由を感じることはなく、安全な暮らしができる。だた、経済の成長は見込めず、将来についてはなんとなく不安があり、だから背伸びはせず、貯蓄を抱えて生きていく、そんな「低欲望社会」には、従来の経済学(ケインズ理論など)は効果がない。先送りされ続け、日本の長期停滞、これからさらなる縮小につながる各種の改革(税、教育、農業、少子化対策等)に取り組まなければ、本当に日本は沈没する。。
大前さんが昔から主張してきた内容と大枠はあまり変わっていない。でも、長い間、日本の制度は抜本的に変わることはなかったように思う。気が付けば、先進国といえる地位からは滑り落ち、東アジア、東南アジアの国々の後塵を拝すことになりつつある。高齢化した国民に野心を持てというのは難しいだろう。ならば、今となっては、移民、教育で10年計画で社会の根幹を強化しなおすことしかないのではないか。そう考えさせられた。

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2022年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

豊かな世の中で国民のほとんどが低欲望になった日本。それに合わせた経済政策をすべきなのにできていない日本。


 この低欲望社会という日本の特徴を理解していないと、20世紀の経済成長前提の経済政策は無意味でしかない。それなのに、今の経済担当はそれしかできない。

 結局、新しいことができない日本の悪い癖だと思う。既存の経済政策しかできないのは、言い訳が立たないからである。これはエライ人に独断させられないからでしょう。

 偉い人を信じないなら、国民が自分たちで頑張るしかないのに、国に頼り切っている。国からの補助や給付に喜ぶばかり。そういう大きな政府の日本社会を脱しないとねー。

 今一番必要な政策はあらゆる補助をなくしていくことだろう。

 自立した日本を、国民が作ろうとしなければ、政治家はポピュリズムに走るばかりだ。

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2017年11月24日

Posted by ブクログ

「将来への不安」は個人消費や設備投資の減少など、日本経済にとってはマイナスです。
若者に対しての意識調査に今の社会状況が如実に反映されています。
高校生の7割が「不安を感じる」という結果が出ています。

政府や企業があの手この手を使って消費を喚起していますが、
将来への不安から貯蓄率は増加傾向です。
今の社会状況を変えるにはどうすればいいか?この議論は長い間されています。
個人的には日本社会の適応力は、世界史を見ても群を抜いていると思います、
変わる時は、かなり短期間で一気に変わる(明治、敗戦から復興等)、
ただ今回の変わり方は、大多数の人を幸福にはしないかなと思います。

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2017年06月06日

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