【感想・ネタバレ】愛の年代記のレビュー

あらすじ

かくも激しく美しく恋に身をこがし、生きて愛して死んだ女たち――歴史資料の片隅に、わずかに残されたその華麗な生の証しをもとに、欲望・権謀の渦巻くイタリアの中世末期からルネサンスにかけて、《恋の歓び、哀しみ、憤り》など、さまざまな愛のかたちを抽出する。『大公妃ビアンカ・カペッロの回想録』『ドン・ジュリオの悲劇』など、胸ときめく恋の物語9編を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

久々に塩野七生を読みたくなって、手に取った1冊。中世ルネッサンス期近辺のヨーロッパ(主としてイタリア半島の都市国家)を舞台に、愛に翻弄され、愛を持って翻弄した女性たちの物語である。

恋愛沙汰ってのは、もうどうしようもない。惚れた腫れたの話になると理性やら理屈は吹っ飛びがち。それでもまあ、渦中の人たちは仕方ないとして、そこに、関係ない人が善意や損得勘定やもろもろから下手に関わると、大概ろくでもない(あるいは実にくだらない)結果に終わる。

部活やサークル活動、SNSやら、社内恋愛であれば、まぁまぁくだらなくても取り返しもつきやすい。芸能界やらであれば話題になっても1年もたてば禊もすむ。
ところが、歴史を動かしたり、国家存亡の危機になったりするから、恋愛沙汰もあなどれない。

額田王をめぐる兄弟の話
傾国の美女楊貴妃…
史上エラいことになってしまった恋愛沙汰って結構転がってる。

この本に出てくる話は史実のはざまに埋もれてしまったような、西洋史裏話(ゴジップ)みたいなものなのだが、塩野マジックにかかると、なんとも味わいのある物語になるねんなぁ。ちょっとした落とし噺風もあり、ホラーもあり、王道の大河恋愛風もあり。

1970年代に初刊行された本だからずいぶん古い本、ひょっとしたら最近の人にとっては古典であってもエエような本かも知れないが、今読んでも古さをあまり感じないのは、歴史を扱っているからや、俺がじじいだから…だけではないと思う。
人類不変の一大テーマを扱っていることと、塩野七生の筆の冴えが不変であることもきっと大きいんだと思う。

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2019年12月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中世末期からルネサンスの時代に愛に生きていったイタリアの女性たちを描いた短編集。

最初の『大公妃ビアンカ・カペッロの回顧録』から、『ジュリア・デリ・アルビツィの話』へのつながりが面白かった。主人公だったカペッロが次の話では悪役のように描かれていて、視点が変わるとここまで変わるのか、とこの時代のイタリアの恐ろしさを感じられた。
他にも『エメラルド色の海』では海賊に惹かれる女性を描いたり、恋に踊らされる女性のみならず男性も描かれており多彩な物語を読めて面白かった。
最後の『女法王ジョヴァンナ』も史実か伝説かわからないところが非常に興味をそそられた。塩野先生も書いていたが、現代の中でずっと男性社会を貫いている教皇庁においてこれが史実ならば本当に痛快な皮肉のであろう。『ダビンチコード』でも、実は教皇の座は女性になるはずだったということを描かれており、つながりが見え面白かった。

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2016年01月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

イタリア中世末期からルネサンスを舞台にした9編の故意の物語。結末は全部ハッピーエンド、という安いものではなく、あくまでその時代時代の世相・風習・民衆意識・世界観を忠実に反映したものになっている。
どれもフィクションのはずなのに、どこか欧州の博物館などに大事にしまわれている資料に書かれているかのごとく、鮮明に迫ってくる物語でした。
どれもその時代に降り立ったかのような、新鮮な風が吹いていました。

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2014年10月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

結構面白かったです。
ひとことでいうと、イタリア版まんが日本昔話(アダルト)、みたいな。

「デカメロン」「カンタベリー物語」的なのですが、塩野氏の揉みこみがありますので、より読みやすい感じです。

・・・
ということで内容ですが、一部連作ですが、短編集といったところ。

浮気の話が多いのですが、最後の女法王ジョバンナなどは活劇的面白味のあるお話でした。あとはジュリア・デリ・アルビツィの話。これも現代では考えられませんが、ちょっと面白かったです。

大公妃ビアンカ・カペッロの回想録・・・駆け落ち同然でフィレンツェに来たら、玉の輿で再婚!

ジュリア・デリ・アルビツィの話・・・妾腹の子として生をうけ日陰に生きたジュリアが命じられたのは、とある大公の性的能力証明のためにヴァージンを捧げる事とは!

エメラルド色の海・・・サヴォイア公へ嫁いだフランス王女を装うピアンカリエリ伯爵夫人。対峙するのは、イタリアの漁村生まれのトルコ海賊ウルグ・アリ。たった一目の邂逅に潜む恋の話。

パリシーナ侯爵夫人の恋・・・後妻として嫁いだ夫人と義息との禁断の恋。隠すものは見つかる運命。

ドン・ジュリオの悲劇・・・フェラーラ公国の跡取り四兄弟。優男のジュリオの身から出た錆、ないしは出る杭は打たれる的な悲劇。

パンドルフォの冒険・・・貞操で名高かったキアラが、こっそりと働いた不貞。ところが余命を知ったキアラは不貞相手のパンドルフォをあの世の道連れにしようと企むが。。。

フィリッポ伯の復讐・・・フィリッポ伯に嫁いだうら若いイザベッタが企てた不貞。勘づくフィリッポ伯は泳がせ、暴き、3倍返しで妻と相手を処刑します。

ヴェネティアの女・・・有望な修行僧ガレアッツォが陥った妖艶なグリマーニ夫人の蜜。嫉妬の念は危険であることが良く分かる話。

女法王ジョバンナ・・・修道女ジョバンナが恋に落ち、男装して駆け落ち、ギリシアでその才能に花開き、遂にはローマに舞い戻り女(男装)法王として君臨するサクセスストーリ。

・・・
ということで塩野氏によるルネサンス期イタリアの艶話集でした。

カトリックのおおらかさは、この年になると悪くないなあと感じる今日この頃。逆にプロテスタントは一つ間違えるとすべて怒られそうな印象ですね。

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2024年06月13日

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