あらすじ
未知の荒野を目指して歩く男を描いた五木寛之の代表作。
ジャズ・ミュージシャンをめざす二十歳のジュンは、新宿のジャズ・スポットで
「お前さんには、何か欠けたものがあるんだよ」「あんたは苦労がたりない」と
言われ、外国へ飛び出した。
横浜港からシベリアへ渡り、そこからモスクワ、ヘルシンキ、ストックホルム、
コペンハーゲン、パリ、マドリッド、リスボン・・・。ジャズとセックス、ドラッグ、
酒、そして暴力にいろどられた放浪の旅は続く。
世界とは? 人間とは? 青春とは? そして音楽とは?
走り続ける60年代の若者たちを描き、圧倒的な共感をよんだ名作。
解説は植草甚一
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
テーマ「若者の狂気」
ビブリオバトルで知った小説。
青年が行き先を決めずに"旅することそのもの"を目的として日本を出る所や、自分も住んでいたことのある北欧に長く滞在するらしいことを知って興味が湧いた。
主人公のジュンはジャズとトランペットをこよなく愛する高校生だが、なじみのバーでバンドを組む仲間からは「音がお坊ちゃんすぎる」と評されてしまう。どうしても本物のジャズが知りたい彼は旅に出て自らを試そうと決意するが、善は急げとばかりにわざわざ大学受験に失敗するところは尊敬する。わざとだとは書いていないがどう考えてもわざとだ。
自分もいい加減無鉄砲だが、そこまでの勇気は出なかった。
せいぜい失恋が理由で留学した程度。しかも自分で稼いだのではなく奨学金を使うあまちゃんぶり。まだまだ修行がたりない。
あふれる情報にともすれば溺れてしまいそうにもなる昨今、「目的意識を明確に」とさかんに言われている。
しかし、選べないなら選ばずに浮遊してみても悪くないのでは?と思わせてくれる書だと思う。
冒頭では大事そうにトランペットケースを抱えた「男の子」だったジュンまが、ロシア、フィンランド、パリ…と進むに連れて「若者」になり「男」へと成長していく様が清々しい。
キザで良いカッコしいで女からすれば天敵だとしか思えない人物ではあるが。
彼は各地でキーパーソンと出会っては偶然の再会を繰り返している。出会いの中には一夜限りの恋も多数含まれているが、あれだけバッタリ会うことを繰り返せばデート中に前の国の元カノと出くわしそうなのに一度もない。
このあたりを紀行小説における男のロマンと捉えるか、都合が良すぎると批判するかは分かれるところだと思う。個人的には、いけしゃあしゃあとそんな展開にする作者は女で苦労したんじゃなかろうかとふんでいる。でなければ愛憎劇だってたっぷり描くはず。リア充は往々にしてめんどくさいことを語らない傾向にあるものだし。
16歳で刹那的に留学した私には共感できる部分も多いが、堅実で計画性のある人々にとっては時として相手の気持ちを省みない…特に女心を鳥の羽根よりも軽く扱うジュンの言動に苛立ちを覚えるかも知れない。
ただ、他人とぶつかることがあっても良いのだということを彼は教えてくれる。
仲良く和気藹々とやっていくだけが正しい方法ではないし、そういったやり取りだけでは見えて来ない部分もある。
ぶつかりあうことで粉々に砕け散ることもあるだろうが、割れたその断面にはこれまで姿を見せていなかった面が現れていたりする。
宝物はそれなのではなかろうか。
根はそんなに悪いやつではない。ナチスドイツの収容所で心に傷を負った芸術家や、黒人のバンド仲間が白人から貶められた時に加勢したりもする。
これらのエピソードに関してはグロテスクだが、この経験があったからこそジュンは人の痛みが分かるようになったように私は感じている。
可も不可もなく過ぎていく毎日が何故か不安だけれども、行動を起こすだけの勇気がないという時にはぜひこの作品を手にとって見て欲しい。その後何かをするか、やはり何もしないでおくかは自由だ。
どれを選んでも正解かも知れないし、もしかしたら間違いかも知れない未来。それこそが荒野であり、誰の目の前にも平等に広がっているものだと思う。
Posted by ブクログ
ジャズミュージシャンを目指す20歳のジュン。
行きつけのBarで「お前さんには何か欠けているものがある」
「音がキレイすぎて、こっちに共鳴させるものがないわ。鑑賞用演奏なのよ」
と言われ自分はもっと苦労しなければならないとソ連へ旅立つ。
旅はソ連からヨーロッパへ続くが、その先々でハプニングや強烈な人々との出会いに遭遇することになる。
自分は、ジュンがそれらの出会いを通じ一歩一歩成長していく姿にとても励まされた。
自分もジュンの様にチャレンジ精神を持って、生きていきたいと強く思った作品。
名言が沢山ちりばめられていて大学生活の中で出会った本で一番心に残っている本です。
人生のバイブルにします・笑
Posted by ブクログ
主人公であるジュンは「大学の講義を聴くよりも、数倍良い経験が出来た」と言う。
旅を通して色々な経験をし成長していく。
旅の魅力、そしてなにか煽動力がある。
今まで読んだ旅物語の中でも最高の作品であることは間違いない。
一晩で読みきってしまった。
Posted by ブクログ
「善い事とか、悪い事とか、そんな事はどうだっていい事だ。おれたち人間は、自分の生命をおびやかす行為を悪、その反対を善と名づけただけさ。」
「音楽は、クラシックも、ジャズも、ポピュラーも、みんなひっくるめて、やはり人間だという感じがするのです。道徳的な意味や、教養とは別な、人間性。どんな飲んだくれの魂の中にある、あの広い永遠の荒野。どんな無知な人間も持っている、その深い魂の淵。国境や、肌の色をこえて、なにかの共通するものが、そこにあると僕は思うのです。そして、それを音で表現するのが音楽だと考えるようになりました。」
ユダヤの若い娘の肌全身にタトゥーをほどこし、その皮を剥ぎランプを作ったナチスの将校がピアノを弾くシーンで、それをたまたま聴いたユダヤ人は不覚にも感動してしまう。
常識的に考えた世界で行われる、善悪の行為を超えたところに音楽はあって、人を感動させる。
具体的な例を挙げれば、Sex Pistolsのシド・ヴィシャス、THE LIBERTINESのピート・ドハーティ。彼らはドラッグにはまり、破壊的な行為を繰り返していたが、彼らの音楽は魅力的で人気を博している。
槇原敬之もドラッグを使用していたが、「世界に一つだけの花」などの曲を作り出した。
人の感動なんて善悪を超越したところにある。
この小説で大切な部分は次の詩が良く表していると思う。
この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ
Posted by ブクログ
「五木寛之」を代表する作品のひとつ『青年は荒野をめざす』を読みました。
昔っから、読もう、読もうと思っていて、なかなか読めてなかった作品… ようやく読みました。
-----story-------------
青春の冒険を描き共感を呼んだ「五木寛之」の代表作
モスクワ、ヘルシンキ、パリ。
ジャズとセックス、薬。
20歳の「ジュン」の冒険を求めた青春の彷徨。
熱狂と頽廃の先にあるものは何か
ジャズ・ミュージシャンを目指す二十歳の「ジュン」は、ナホトカに向かう船に乗った。
モスクワ、ヘルシンキ、パリ、マドリッド…。
時代の重さに苛立ちながら、音楽とセックスに浸る若者たち。
彼らは自由と夢を荒野に求めて走り続ける。
60年代の若者の冒険を描き、圧倒的な共感を呼んだ、「五木寛之」の代表作。
解説「植草甚一」
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「五木寛之」が、実際にソ連と北欧を旅した際の経験が下敷きになっており、主人公の青年「ジュン」が、横浜~ナホトカ(当時のソ連 極東シベリア)~モスクワ(当時のソ連)~ヘルシンキ(フィンランド)~ストックホルム(スウェーデン)~コペンハーゲン(デンマーク)~パリ(フランス)~マドリッド(スペイン)~リスボン(ポルトガル)~ニューヨーク(アメリカ)と旅する模様が描かれた作品です。
■第一章 霧のナホトカ航路
■第二章 モスクワの夜はふけて
■第三章 白夜のニンフたち
■第四章 地下クラブの青春
■第五章 人魚の街のブルース
■第六章 パリ・午前零時
■第七章 南ヨーロッパへの旅
■解説・植草甚一
「ジュン」に感情移入しつつ、次はどんな出来事が待っているんだろうかと、ワクワクしながら読みました。
様々な土地を巡るだけでなく、移動手段もフェリー、貨物船、国際急行列車、航空機、乗用車等々… 多様なところも、旅情をかきたてますね。
そして、自由と夢を求めて、もがきながらも前に進もうとする姿勢に共感… 愉しく読めましたね、、、
十代のときに、この作品に出合っていたら人生が変わっていたかもしれないなぁ… と思いました。
もう冒険できる年齢じゃないけど、、、
もう一度、青春時代をやり直せるなら、こんな人生を歩んでみたいな… と思わせる作品でしたね。
読んでいると、ジャズ聴きたくなりましたねぇ… 自分で演奏できるのが理想だけど、楽器を奏でることなんてできないもんね、、、
久々にジャズに浸りたくなったな。
「青年は荒野をめざす」… イイ言葉ですね。
Posted by ブクログ
高校生の子どもの学校の先生が推薦していた本を手に取ってみた。副作用があるかもと添えていたが、さすがに高校生にはそうかもしれない。なかなかなハードボイルド感あふれる名著。
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とても気持ちの良い青春小説。ひねくれたところもなく、グロテスクでもなく、等身大の目線で見たものを描いている。
自分の中のもやもやに苛立ちつつも向き合い、夢を追いかけるのが危なっかしくもあるが清々しい。
Posted by ブクログ
「1960、70年代の青年のバイブルだった」と帯にあるように日本が敗戦から、いや敗戦後に生まれた世代にとって海外に出て行くことが新しい価値観や思想を手に入れていく過程であり、今ならば外こもりと言われるような旅の中で出会う人たちと様々な出来事は未知である部分が多かったのがデカいのだろう。
日本が内籠りになってしまった前の十年は海外の文化を取り入れて熟成されたガラパゴス的な日本文化のひとつの形だったが世界へ目を向けれる人が、若い世代が減ったようにも感じられた。世界に目を向けなくても日本自体が進んでいる国で面白いのだから、でも内側からも外側からも見える客観性が必要だと思うのは僕がやはり年をとって青年ではなくなったからか?
いろんな視線、角度を持てる方がきっと世界はまだ拓けるしもっと近くなると思いたいし、そっちの方が面白いはずだ。
今、読むとやっぱり旅に出たいよねって思うし、出たら帰らないのだろうなとも思う。
Posted by ブクログ
・この前読んだ「荒野」って小説に出て来た超然とした少年がいつも読んでいたので、気になって読んでみた。そしたら高度経済成長の日本にぼんやりとした不満を持った中流育ちの青年が海外に飛び出して魅力的な金髪女性とセックスするって内容だったから、正直に言ってあの少年にはがっかりした。中学の頃からこれ熱心に読むとかどんな設定だよと…
・それを抜きにして読むと、結構面白かった。ハタチ前後で読んだらきっともっと面白かっただろうな。真に受けて海外に飛び出したかもな。
・今現在これを読むと、なんか甘ったれた奴が海外に飛び出してって良くある話なんだけど、昭和40年代に書かれてるところを考えてみると、かなり挑戦的な内容だったのかなとも思う。40年前に、今読んで「よくある設定」の本ってのは刺激的だったのかも。ハタチの童貞が金髪のスチュワーデスと夜の公園で初体験するとか、当時の若者の心を鷲掴みにしたに違いない。
・それにしても五木寛之って適当だよな…細かい話だけどクリスチーヌとはセックスしてないよね?ラストの手紙と本編矛盾してるし。すっごい気になったわ。
Posted by ブクログ
本が呼ぶのか自分が呼び寄せるのか、そのときにベストな本と出会うことがたまにある。タイトルや表紙に惹かれる本は大概当たりだったりする。この本がまさにそれだった。
斜に構えれば主人公の辿る道筋にいちいち難癖を付けたくもなる。しかし、舞台は60年代なんだからこれでいいのだ。当時に生きていなかったから、いくら現在の尺度で判断しようとしても無駄だ。
変などんでん返しもなく、純粋に最後までトントン拍子にストーリーが進んでいって読んでいて気持ちがよかった。
その順調な展開が、時が経てばずいぶん青臭いと苦笑するかも知れない。だけど、青臭さを感じられることを大真面目に言葉にできたこの小説が生まれた時代がうらやましいことに変わりはない。
60年代や70年代辺りに、ジャズ喫茶でコーヒーを片手にこの本に熱中して異国に夢を求めて旅する主人公に憧れていた若者がいたかも知れない。そんな過去の若者たちとの交錯に思いを馳せられるのもまたよかった。
Posted by ブクログ
若い頃の五木寛之作品はとがっていい。ロシアが好きになった。旅に出たい情熱がある人や、夢中になれる力強い作品が読みたいとき。人生の創成期におすすめ。
Posted by ブクログ
面白いとは思う。60年代の若者たちが熱狂した理由もわかる。彼らは本書を読みナホトカ航路を目指した。当時の船上には何人のジュンがいたことであろう。
しかし御都合主義が過ぎる。本物のジャズを求める旅がなぜセックス三昧になり、ジュンは挫折もなくこれほど万能なのか。荒野が人工芝のように感じる。そうか。平凡パンチに連載されていたのか。謎が解けた。否定するわけではない。極めて漫画的なのだ。現代であれば子供だましのフィクションと割り切れるが、情報の少なかった60年代、本書が若者たちの放浪の後押しになったことを考えれば多少の無責任さを感じてしまった。期待値が高かっただけに。
破天荒な60年代はこれでよかったのかもしれないが、個人的には『深夜特急』のような苦悩と喜びを内包した作品のほうが好みであった。
Posted by ブクログ
自分のジャズトランペットに足りないものは何か?
を求めて旅に出たジュンイチロウ。
ロシア、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、スペイン、ポルトガルと旅を続けながら様々な人に出会い経験を積む。
音楽とは人間である。技術や知識も大切だが奏者の苦しみや喜び、葛藤を込めれなければそれはいい音楽とは言えないことを実感する。
まだ若い主人公は生きる意味を求め、自分の中の未知なる荒野を目指して旅を続ける。
ストーリーも登場人物もよかった。読んでいてのめり込むような面白さがあった。日本人の主人公がやたら外国でモテるのは ? だったが。
自分の中にもまだ荒野はあるのだろうか?