あらすじ
女は小さな声で、マリモ、と言った――。家具ショップで働き、妊娠中の妻と何不自由のない生活を送る悠太郎。ある日店に訪れた女性客と二度目に会った時、彼は関係を持ち、その名を知る。妻の出産が迫るほど、現実から逃げるように、マリモとの情事に溺れていくが……。(「雨のなまえ」)答えのない「現代」を生きることの困難と希望。降りそそぐ雨のように心を穿つ5編の短編集。
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Posted by ブクログ
何の気なしに読み始めたが、ものすごくおもしろくて2日で一気読み。
どの短編も雨がキーワードで出てくる。
全てがハッピーエンドで終わらないところとか、アッと言わされるような物語の展開がおもしろかった。
Posted by ブクログ
最近になって急に窪さんが気になってきて、そういえばずっと読んでないあいだに何作品か出てるし、ひさびさにどれか読むかあ〜 なんて思ってた。
昨年窪さん自身がツイッターで自分の作品紹介をしてて、こういった気持ちで書かれたのか… と思うと心が揺れ動き、読みたくなってきたのもあった。
旅行中に古書店で、窪さんの、水やりはいつも深夜だけど、を発見。でもなんとなくやめた。手のひらの大きさの方をまた、古本屋で買うかな。と決めたけど、次の日旅帰りの駅付近で本屋があったのでふらりと入った。またなんとなく窪さんのコーナーへ。何冊かあり、水やり… はなかったので、雨のなまえ、を手にした。最初のページを読んだら、わっ、となった。そうそう、これだよー、みたいな。窪さんてロックしてる!と思える描写からのはじまり。それで胸ぐら掴まれて購入。読んだらやはりおもしろかった。
わたしはリリーさんや藤代冥砂さんの短編読んでたときも思ったのだけど、Hな… 18禁的な?描写をもりこんだお話のほうがリアルで嘘がない気がして好きになってしまう。読みたくなる。何故ならそれは窪さんもリリーさんも冥砂さんもエロ小説を書きたいのではなく、伝えたいものがある上でその描写を盛り込んでいることを知っているから。
窪さんの作品はいまとても読みたい気持ちだから、ガガガッと三作品くらい読みたい◎ハードなものもあるから、そのへんは気をつけて。。
短編の感想▽
・雨のなまえ
最初から引き込まれてグングン読んだ。かわいい純粋な奥さんと精神不安定だけど身体の相性がいいマリモのあいだで揺れる主人公。リアルやった。マリモと寝てるときが何より落ち着くって、男じゃないけど分かる気するし、ピュアすぎる奥さんやお金持ちの奥さんの家族に馴染めない気持ちも分かる。主人公の彼の性格がものすごくイメージできて、明るい話ではないけど楽しく読んだ。最後は、で、どっち?!てめちゃ気になった。
個人的にマリモは人間くさくて好き。極彩色に生きてる感じする。
・記録的短時間大雨情報
主婦が若い男子に恋してしまう&痴呆と一癖ある義母と冷めた旦那さんに悩まされる話。リアル。
特に若い男子に恋するのとか、わたしはないけど恋する気持ちは分かった。思わせぶりな態度や中途半端な優しさ見せやんといて欲しいけど、主婦なのに最後はまさかのアパート直撃でびっくりした。思い込み激しすぎー!さすがにそれは。でもおもしろかった。やけど胸痛い。年下男子は苦手なんよね。最近美容師さんも年下多くなってきてるし、、。わたし割と自然に話してたら相手に気があるように見えてしまうぽいから、好きなわけないの当たり前やのに、若い男性美容師さんに微妙に距離取られたように感じたり。わたしも自意識過剰やけど若い男性美容師さんてモテるから、そういうのに過敏で、好かれてるかも?て思いやすいこれまた自意識過剰なんよね。。嫌なことを思い出してしまったけど、窪さんのこのお話は誰でも何かしら引っかかるのではと思った。
・雷放電
最初は話の内容を信じて読んでたけど、最後、あ!なるほど~。。と納得がいく終わりだった。むなしい。。このむなしさの描写も窪さんうまいなと思った。
・ゆきひら
このお話も、最後すこしだけどんでん返し系。わたし自身はこういう形で終わって欲しくなかった。哀しい。でも、積もり積もったものが、こういう形で仕打ちとして表れてしまう結末を思うと、人生こわいなって思ったりする。誰かにしたことは自分にも返って来る、というけど。。せっかく生徒であるみるくを助けに行った、先生である主人公臼井。なのに、最終的にはセクハラされた形になって周りからも妻からも白い目で見られる。みるくが嘘をついたのかと思ったけれど、無意識のうちに眠っているあいだに手を出していたようで。心のなかで思っていることはついつい出てしまうんだなって思った。わたしがこの話なかで少しシンクロするとすれば、職場で隣に座っている男性社員さんのことすこしいいなとか思ってしまっていて。それが態度に出てないか不安になってしまうこと。最近打ち解けすぎてきて、うれしそうに会話してしまう自分に内心引いてるときあるんじゃないかな?と不安になってしまったりする。「思ってることは出るよね」そう思わされる話だった。
「ゆきひら」というタイトルがまた素敵なんだよね。
・あたたかい雨の降水過程
このお話で終わってよかった。そう思った。5つの短編のなかでいちばんまだ救いがある方の話。
特に何をされたでもなく一緒に暮らせなくなり、旦那に離婚届を書いてもらうようにお願いしてもなかなか書いてもらえずキレられる主人公繭子。
離婚できずとも別居して、シングルマザーで男の子をひとり育てている。ママ友との複雑な関わり。息子がいつか自分の元を離れていくことへの不安、など。
最後、みつきちゃんのお母さんの一言があたたかかった。「うん。あんたばかだよ。あたしのことも、人のことも、みーんなばかにしてさ。でも、わかってるなら、まあいいか」そう。ばかにしてることも、ばれてるんだよね。でもそれさえも包んでくれた。