あらすじ
スペインはミハスに住まう大富豪に突如呼び寄せられた青年、ジュアン。面識もない老紳士が語るのはジュアンの亡き母との苦い記憶だった。三十年の月日を隔てて密室殺人の謎が明かされる表題作の他、青年と警察の視点で綴るストックホルムの悲劇的な殺人、疑惑の未亡人を探るサンフランシスコの保険調査員、ジャカルタで発生した連続娼婦殺人事件、カイロを訪れたアメリカ人美女の秘密など、ストーリーテリングの名手が異国を舞台にその土地で生きる人々の悲痛な叫びをすくい取る。あまねく襲う衝撃の結末が深い余韻を残す、至高のミステリ全5編。/解説=村上貴史
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Posted by ブクログ
短編5作収録の作品
いずれも舞台は海外となっている
後半の3作品がよかったと思います
結末で明かされる真相には驚かされるものも
著者のあとがきも楽しめました
Posted by ブクログ
貫井作品の中で珍しく今作は全編、外国を舞台にした短編小説だ。
日本人作家が書く海外を舞台にした作品(しかも登場人物の殆どが外人)というのは、さながら外人作家が日本を舞台にした作品を書くことに等しく、そういったシチュエーションには個人的に僅かながらの不安感を覚えてしまうのだが、読み終わった今ではそれも杞憂に過ぎなかったと思う。
もちろん読後感の重さに定評のある貫井作品のスタンスは健在だ。
観光小説的なパートと話の核心を織り成すミステリーパートの陰影がしっかりしているので、海外に行った気になりつつミステリーにソワソワしながら結末に打ちのめされるという重層的な読書体験ができた。
完全に著者の術中にはまった読者である。
Posted by ブクログ
貫井さん、短編は初読み。表題作。舞台はスペインのミハス。老紳士の一人語りから始まるため、新月譚を思わせた。第三者(ジュアン)がいることで“アリーザとオルガス”の互いを想う心の描写の表現に感嘆した。最後のジュアンの敢えて言わない優しさ。二編目、ストックホルム。ビデオショップに勤めてる男と偉大な父を持つ男(彼もまた刑事)の二視点から綴られる物語。前者が殺した相手には驚愕したが、それ以上にストーリィがホント巧いわ。三編目、サンフランシスコ。三人目の夫も事故で亡くした女とそれを不審に思った保険調査員の物語。まさかの犯人に声を失う。彼は罪悪感すらなく、ただ魔法を使った?だけだと思っているよう。将来が大変心配である。四編目、ジャカルタ。連続娼婦事件の間に、娼婦ディタの元夫が絞殺されるー。前者の事件はこの土地でしか殺人の動機に説得力を持たない。トシもディタと似た犯行をし、高飛びしたようだ。五編目、カイロ。旅行客のナンシー(アメリカ人美女)に指名され、ガイドをすることになったマフムード。失踪した夫を探しに来たそうだ。最後は嗚呼・・なるほど。エジプトの男性社会も大変だなぁ、と思った次第。著者が自信作しか短編集として本にしたくないと言っていただけあってとても面白かった!その地を訪れたような感じもし、軽く旅行気分も味わえる・・かも?w
Posted by ブクログ
海外を舞台にした短編集。密室殺人の謎が明かされる表題作を含む5篇から成る。いずれの短編も貫井さんらしいどんでん返しがあり、楽しく読めた。海外モノだから、ちょっと読みにくいかなと思いつつ本書を読み始めたけど、とても読みやすくまたしても一気読み。表題作や「カイロの残照」が気に入ったかな。どれもがいたたまれなくなる読後感。貫井さん、長編が好きだけど、短編もなかなか読み応えありでした。
Posted by ブクログ
海外五ヶ国を舞台とした短編集。全ての国へ実際に足を運んだというだけあって、情景描写が秀逸。読み易い文章で翻訳小説の雰囲気が楽しめるのもまた一興。あの不運な保険調査員(中編集「光と影の誘惑」にて登場)に再会するとは思っていなかったので、嬉しいサプライス。全編短編としての完成度は高いものの、コンパクト過ぎて今ひとつパンチが足りない印象も。また、犯行動機や行動原理が日本人然としていて、異国を舞台にする必然性をあまり感じられなかったのは少々残念。男の哀愁を描いた「ストックホルムの埋み火」は味のある結末で好きだな。
Posted by ブクログ
貫井さんの作品では珍しい短編5作品が収録された作品です。”ミハスの落日”はスペイン、”ストックホルムの埋れ火”はスウェーデン、”サンフランシスコの深い闇”はアメリカ、”ジャカルタの黎明”はインドネシア、最後の”カイロの残照”はエジプトと全て海外が舞台となっております。短編ですが、どの作品も個性的な登場人物が読者を現場へ引き込んでくれますよ♪