あらすじ
ピュリツァー賞作家が「戦争の癒えない傷」の実態に迫る傑作ノンフィクション。内田樹氏推薦!
本書に主に登場するのは、5人の兵士とその家族。 そのうち一人はすでに戦死し、生き残った者たちは重い精神的ストレスを負っている。
妻たちは「戦争に行く前はいい人だったのに、帰還後は別人になっていた」と語り、苦悩する。
戦争で何があったのか、なにがそうさせたのか。
2013年、全米批評家協会賞最終候補に選ばれるなど、米国各紙で絶賛の衝撃作!
「戦争はときに兵士を高揚させ、ときに兵士たちを奈落に突き落とす。若い兵士たちは心身に負った外傷をかかえて長い余生を過ごすことを強いられる。その細部について私たち日本人は何も知らない。何も知らないまま戦争を始めようとしている人たちがいる。」(内田樹氏・推薦文)
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湾岸戦争以降の現代における対テロ戦争の、末端の兵士たちが強いられる緊張や目的意識の無さ/虚しさ(HVTだと知らされていた対象を捜索しに、深夜一般住宅を襲撃して見たら実はココ違いました!というオチ)、そして『傷病兵』となって帰還してからの生きにくさ。
複数兵士からの証言を基に克明に描いた作品。
併せてP.W.シンガー『ロボット兵士の戦争』も読みたい。少なくとも、本作にて証言が得られた兵士たちのグループには、タロンも何もなかったらしい。
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文学的なノンフィクション。良質な純文学を読んでいる気分になるが、これはノンフィクションなのだと驚く。
戦争は多くの犠牲を伴うが、その犠牲とは人間の人生にほかならない。
戦争は解のない問題だ。
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著者のデイヴィッド・フィンケル氏はワシントンポストで23年間記者として働き、2006年にピュリツァー賞を受賞。その後退職して従軍記者としてイラクに渡り、そこで知り合った兵士の「戦後」の生活-帰還兵の生活-を具体的に描いている。
戦争そのものが「不幸」だということ。そして、その不幸せな生活を送るのは決まって貧困家庭出身の若い兵士だということが強調されていて、その家族も支援者も同じように不幸になっていくことがよくわかる。悲しい。とにかく悲しい。日本もこれからこうなるんじゃないかと不安になる。
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国会で議論されている今だからこそ
読んでほしい一冊!
どんな戦争でも精神的に傷を負う兵士がいたに違いないけど、日本ではあまり注目されていないように感じる。
というか、見ないようにしている…?この現実を…。
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誤解を恐れずに言えば、今の政府は戦争をしても構わないと考えているのではないだろうか。為政者は絶対に戦場には赴かない、為政者より間違いなく未来への時間を多く持つ若者が行くのだ。突然、自己の未来が消滅する可能性だって勿論生じることになる。運よく戦場から生還できても、PTSDやTBIで人生がボロボロになってしまう虞もある。現に、2003年から2009年までの5年間に亘るイラク支援に派遣された自衛隊員の1割から3割がこのような障害に苦しんでいるようだ。おそらく政府は彼らを見殺しにするだろう。そして、これからも。
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アメリカの対イラク戦争に派遣された兵士たち。
イラク、アフガンで見た惨状。
「敵」の攻撃(爆破)によりむごたらいい戦友の死…。幼児を抱えたイラク兵を撃つ…。
帰国後、PTSDになり、自殺に至った者も多い。
本書で取り上げるのは、自責の念にとらわれ、苦悩する元兵士本人やその家族の苦悩を、淡々とした客観的視点で描く。
「戦争に行く前は『いい人』だったのに、帰還後は別人になっていた」。
「戦争」が、兵士やその家族を「破壊」していく様子が、痛いほど伝わった。
もちろん、アメリカ兵たちも、他国の兵士や民間人を殺害していて、他国側の人々にも肉体的・精神的苦痛を負わせているのも事実。
「国家のため」従軍して、肉体的にも精神的にも「破壊され」戻ってくる…。
格差社会が生み出した「志願兵」。「生きる」ために兵士になった(ならざるを得なかった)アメリカの「ごく普通の」若者たち。
20代の兵士でこのような精神的ダメージを味わっているのだから、中東の子どもたちは、どのような苦痛を負っているのかと考えると、深いため息が出てくる。
ありきたりな表現になってしまうが、「戦争というものは、何も生み出さない、人間にとって必要のないもの」ということをつくづく感じた。
「訳者あとがき」にも触れられているが、後方支援にあたった日本の自衛隊の方々の中にも、自殺、あるいはPTSDになった方々がいる。
「戦争」というものが、いかに愚かしいことかを痛感する。
多くの人に読んでもらいたい。
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帰還兵の物語というとオブライエンの『本当の戦争の話をしよう』が思い出されるが、これはイラク戦争からの帰還兵を追ったノンフィクション。第二次世界大戦、ベトナム戦争からの帰還兵とイラク戦争の帰還兵は当然それぞれの苦悩があったかと思うが、帰還後の精神的ストレスについてはトラウマの症状が異なるという。前線があるかないか、明確な戦場が区切られていないイラクでは360度、気の抜けない環境であったことが指摘されている。
ノンフィクションではあるが、帰還兵のその後の生活、本人を取り巻く家族の苦悩、米軍によるメンタルケアの実情などが生々しく物語られていて、さながら複数の主人公が存在する小説を読んでいるかのようである。描かれている状況は悲惨だが、それにしても、アメリカがここまでのケアを実施するためにどれほどの予算が必要か、その想像にも慄く。
日本では戦争を知る生存者も少なくなり、過去の認識も歪んだまま安易に語られるようになった現在、戦争の爪あとがこのような形で残される、そしてこのような本がきちんと評価されるアメリカに敬服する。
なお訳者のあとがきに記載があるが、日本からイラクへ派遣された自衛隊員1万人のうち、帰還後の自殺者は28人とのことである。
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戦争後に精神を病む軍人に対し(またその軍人に接する機会の多い家族に対し)、どう支援すべきか、どんなシステムを構築すべきか。イラクとアフガニスタンの戦争に200万人のアメリカ人が派遣され、そのうちの20〜30%はPTSDやTBIの精神疾患にかかった。彼らが元の性格に戻ることは困難だ。家族の負担も大きい。精神衛生の問題は陸軍では自殺者の増加が問題となり医療施設ができたが収容者でいっぱいで入れない人もいる。セラピストも足りない。日本もイラクに約1万派兵したが帰還後28人もの自衛隊員が自殺した。派兵では兵士の精神衛生管理は1番重要な問題とみなすべきだろう。
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デイヴィッド・フィンケル(1955年~)氏は、米フロリダ大学卒業後、長年ワシントン・ポスト紙に勤務し、2006年にピュリツァー賞(報道部門)を受賞。
2007年に新聞社を辞めてバグダッドに赴き、1年間、米陸軍第16歩兵連隊第2大隊の兵士たちと生活を共にし、その過酷な日常と凄惨な戦闘について詳細に記した『The Good Soldiers』(邦題『兵士は戦場で何を見たのか』)を上梓(2009年)した。しかし、帰国後、バグダッドで知り合った兵士たちが、帰還後に電話やメールや手紙で不調を訴えてきたことから、戦争の後を記録しなければ、自らの仕事は終わらないと考えるに至り、帰還した兵士や家族、ペンタゴンの上層部や医療関係者に取材を行い、書き上げたものが本書(2013年)である。本書は、全米批評家協会賞ノンフィクション部門の最終候補となったほか、各紙の賞を受賞、また、同年のベストブックのひとつに挙げられた。
イラクが大量破壊兵器を隠しているという理由で、米国がイラクに侵攻して始まった「イラク戦争」(2003~11年)では、イラク(とアフガニスタン)におよそ2百万人の兵士が派兵され、そのうちの50万人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)とTBI(外傷性脳損傷)に苦しみ、毎年200人以上の帰還兵が自殺をしていると言われている。
本書には、5人の兵士とその家族が登場する(一人はイラクで戦死)が、彼らは、爆弾の破裂による後遺症、及び、仲間が殺されたことや敵兵を殺したことによる精神的打撃によって自尊心を失い、悪夢を見、怒りを抑えられず、眠れず、薬物やアルコールに依存し、鬱病を発症し、自傷行為に走り、遂には自殺を考えるようになる。周りがいくら、本人のせいではなく戦争のせいなのだ、と言っても、彼らの戦争の記憶と自責の念が薄れることはない。
私は少し前に、ティム・オブライエンが自らのベトナム戦争の従軍の経験をもとに書いた短編集『本当の戦争の話をしよう』(1998年)を読んでおり、似た読後感を持ったが、本書においてより強く印象に残ったのは、帰還した兵士とともに苦しむ家族の姿である。登場人物の中でも中心的に描かれているアダム・シューマンと妻のサスキアの、帰還後の3年余りの日々は凄絶で、戦争で死ぬことは(言うまでもなく)辛く苦しいことだが、帰還兵と家族が生き続けることも、想像を超えて辛く苦しいことなのだということがわかる。
「訳者あとがき」によると、2014年4月に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、イラクに派兵された自衛隊員の中で、なんと28人もが帰還後に自殺し、1~3割がPTSDに苦しんでいると報じられたのだという。これは驚くべき事実だと思うが、一体どれだけの日本人がこの事実を知っている(覚えている)だろうか。。。
米国では、帰還兵に対するカウンセリングや医療のための施設が整備されつつあるといい、本書にもそのことは登場する。そして、「帰還兵はなぜ自殺するのか?」を一つの社会問題と捉えるなら、そうした帰還兵への対応の充実が大事ということになるだろう。
しかし、おそらく、最も本質的な問題は、そういうことではなく、「人はなぜ愚かな戦争を止められないのか?」ということなのであり、今も続く、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ攻撃に心が痛むばかりである。
(2024年6月了)
Posted by ブクログ
主にイラク、アフガニスタンの戦争から帰って来た兵士は、PTSDや脳損傷により苦しみ、自殺してしまう。
兵士や家族の日々を坦々と記録してある。
戦争は、戦闘が終わってもなお、人々を苦しめ続けるもの。
Posted by ブクログ
イラク戦争に200万の兵士が行き、50万がPTDSになった。その兵士たちと家族の抱えた悲劇。
自衛隊に何が起きるのか、その結果、本人と日本社会はどれほどの後遺症の負担に苦しむことになるのか。想像するに余りある。
戦争はしてはいけないし、本来日本社会の持つ力ではできるものではないのだと痛感する。
Posted by ブクログ
表題の通りである。
非日常は人を狂わせる。(米軍においてはおそらく)心身無事に帰還する兵の方が多いわけだが、PTSDに悩まされる帰還兵は少なくない。
「負傷兵の方がまだましだ」という見方もある。外傷は名誉の負傷であり、誰が見てもすぐにそれと分かる。
「撃たれて死ぬ方がまだましだ」とすら言える。戦死者の記念碑に、自殺した兵士の名は刻まれなかった。
例えばアメリカ領サモア。「彼の育った島には、マグロの缶詰工場以外に働き口がなかった。トーソロはうんざりするまで工場で働き、もっと充実した生き方を求めて島の募兵係のもとに出向いた」心の底から兵士になることを望んだわけではない。
否応なしに戦場で殺し、殺される。昨日まで一緒に飯を食っていた隣人が今日は死んでいる。
帰還兵はなぜ自殺するのか。それは予想通りでもあり、平穏に暮らす我々の予想の埒外でもある。
Posted by ブクログ
戦場から帰還した兵士の苦しみが胸に刺さるが、兵士の妻の苦悩もまたいかばかりかと思う。夫は大変な仕事をしてきた。地獄を体験した。身心ともに疲れきっている。
しかし、生きていれば嫌でも生活というものをしなくてはならない。なのに、夫はあてにできないどころか、夫がいることで負担が増す。家事も、育児も、生計も全て自分にかかってくる。夫は国費で治療が受けられるが、自分は頼れる人もいない。苦しんでいる夫には当たれない。
夫を思いやり、顔は笑って家族を支えるのが、いい妻、いい母だとわかっていても、皆ができるわけじゃない。
それにしても。生きて帰ってきても幸せになれない人が多いのに、なぜ戦争を続けるのか。なぜ戦争が始まるのか。そこを真剣に考えないと、不幸な人の数は増えるばかりじゃないか。
アメリカは帰還後の医療体制も(ずっと戦争しているから)整っているが、日本は整っていない。恐らく帰還した兵士が死ぬまでかかるだろう医療費も税金から出ることを考えても、そもそも戦争しないのがいいに決まっていると思う。
アメリカの普通の人はどう考えているのだろうか。
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やっぱりどんな理由があっても、戦争はいけない。人を殺すことは自分も殺すこと。自分の周りの大切な人の心も殺してしまう。正義の戦争なんて無い。
では、どうやって戦争無き世界にするか?
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たとえ、戦場で死ぬことがなかったとしても、無事帰国したあとに、自殺する兵士たち。
なんとか、自殺の手前でとどまっていても、何年も苦しみ続ける兵士たち。そしてその家族。
のこのこと海外まで行って、するべき戦争なんてないと思う。戦争を決める人たちは、決して最前線で戦うことはないのだ。やってられない。
そして、日本。のこのこのと海外にまで行って戦争する国の、子分としてついていくなんて全くばかげている。情けない。そんなことにならないようになんとかしなくては。今が瀬戸際。
Posted by ブクログ
SNSでよく帰還兵と家族の感動の再会、みたいなやつ流れてくるけど、取り上げるべきはその瞬間じゃなくて、そっから先の彼らなのよね
帰還兵のケアしたり支援するのはわかるけど、そもそも論、戦争をいつまでしてんのよって話
過去から何も学ばないのアホかよまじで
Posted by ブクログ
主にイラク戦争の帰還兵の生活や家族、心的療法プログラムなどについて、実際に起きたことをまとめ上げた内容で、非常に読むのが辛くなる
海外には本物のジャーナリストがいるってことが分かる書籍でもある。 カタカナの名前が覚えきれなくて若干相関関係が分からなくなっちゃったりもする
Posted by ブクログ
イラク戦争でPTSDを発症した米兵や遺族のドキュメンタリー。感動的な脚色などはなく、ただ淡々と彼らの苦悩や悲しみを書き記している。登場人物が複数人いるので、散漫的で少し読み難い。心が戦場から帰って来れずにいる彼らの苦しみや、支える家族の不安は解消されそうにない。PTSDの治療法や解決策などもなく、読み終わった後はやるせなさだけが残る。
Posted by ブクログ
久々に完読を諦めた本。
イラク戦争などで精神的外傷を追って米国に帰国した軍人の実話。ドキュメンタリーで取材した事実を丹念に丁寧に追っていて、すんなりと日常生活に戻れない軍人とその家族の苦しみを書いているのだけど、軍人を4人か5人か追っていいっているのだけど、錯綜していて、どれが誰の話なのかわからなくなる。これに加えて、話の進展がエンドレスな精神を病んだ人の日常がどこまでたっても足踏みをしているような感じのためにいつまでたっても同じ場面ばかりを見せられているような気分になり苦痛が倍増する。
ただ、この本を読んで思ったことは、PTSDなる概念がでてきた背景にはアメリカ独自のものがあると思った。戦争立国・戦争大国で世界に戦争をしかけているからこそでてくるもので発想そのものが違うと感じた。そのことは、国軍専用の精神病院なるものが設立されたという点でも感じられた。
Posted by ブクログ
軍隊における医療は、一般の医療とは性格が異なる。
なぜなら、一般の医療の目的は病気や怪我をした人を、治療し、元の生活に戻すことが目標なのに対して、軍隊の医療の目的は、傷ついた兵隊を、また戦えるように整備し、戦闘に投入することだから。
本書には、主にイラク戦争で戦い、肉体的、或いは精神的に負傷した兵士とその家族が、どのような日々を過ごすことになったか、兵士はどんな風に破壊されてしまったのかという記録が書かれている。
全ての兵士が戦争に行くことによって、破壊されるわけではない。
しかし、たまたま激しい戦闘の中に送り込まれた兵士のうちかなり多くのものは、肉体的、精神的に破壊される。
その、破滅的現実から逃れるために、あるものは廻りの者を、そして自分さえも、傷つけ、破壊することがある。
Posted by ブクログ
戦場の過酷さと共に、雄々しくあらねばという考えも、帰還兵を苦しめているように思える。助けを求めることを不名誉と思い、苦しい思いを抱えることは自分の弱さと考え、何に苦しんでいるのか語ることができない。戦争は戦場にだけあるのではないということを、ただただ兵士たちの帰還後を辿ることで突きつけてくる。
こうやって苦しんでいるのは、アメリカ兵だけではないだろう。相対して戦ったアフガニスタンやイラクにも、今のシリアなどにも、過酷なものを抱えている人たちがたくさんいるのだろう。私たちはどうすれば、戦わずにすむのだろうか。
Posted by ブクログ
アフガン・イラクに派兵された米兵士200万人中50万人がPTSDとTBIに苦しんでおり、毎年240以上が自殺している。5人の帰還兵とその家族の日常を描写することで見えてくる、本人だけでなく家族も苦しめる障害、経済的苦境。
タイトルと中身がちょっと違うなと思いましたが、翻訳で変えたんですね。後遺症の現状、社会的負担の大きさを知ると、次に、何故と思いますが、それを科学的に説明している本ではないので。