【感想・ネタバレ】金子兜太 いとうせいこうが選んだ「平和の俳句」のレビュー

あらすじ

俳句の達人をうならせた平和のうた352句。

東京新聞・中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井の朝刊1面に一日一句が掲載中の人気企画「平和の俳句」が一冊の本になりました。

連載が始まったのは、戦後70年にあたる2015年。その前年に、現代俳句の第一人者である金子兜太氏と、作家のいとうせいこうさんは語り合います。
戦争体験を、また体験していないけれど戦争体験をどう考えるかということ、平和を願う気持ちを、俳句にしてはどうか。
それを新聞で募集して載せたらいいのではないか--と。

言葉の力に期待したふたりの声かけにこたえ、2015年末の時点で5万7000通の「平和の俳句」が寄せられました。
下は3歳から上は106歳まで、日本だけでなく世界中から、ドキドキする俳句が集まったのです。

この本では、2015年に選ばれた352句を一挙掲載。

選者ふたりによる選評や対談記事もあわせて掲載!

いとうせいこうさんは、この投稿を「軽やかな平和運動」と呼んでいます。
“戦後”が71年、80年、100年、永遠へと続くよう、あらためてこの年に選ばれた「平和の俳句」を、ぜひまとめて、声に出して読んでみてください。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 地元紙『北陸中日新聞』の第1面に紹介されていた「平和の俳句」の1年間分の作品をまとめた単行本です。このコーナーは,2017年いっぱいまで続きました。本書は,その中の2015年の1年間に紙上で紹介された俳句が集められています。
 川柳や狂句など風刺の効いたものが好きな私ですから,もともと俳句にはあまり興味がありませんでした。というのも,俳句というのは日本の四季を詠んでいるだけのものであって,自然とじっくりと向き合う時間のある人の高尚な趣味だと思っていたからです。俳句なんて,社会に対しても,あんまり力を表さないし…みたいに思っていました。
 しかし,「平和の俳句」は違っていました。限りなく川柳に近いような作品もありました。「平和の俳句」は,時代を捉え,しかも,社会に働きかける力まで感じるものでした。「俳句もなかなかやるな」と思った次第です。
 選者のいとうせいこう氏と金子兜太氏については,対談集も出ています。その本も,ユニークな二人の刺激的な本でした。
 本書でも,選んだ俳句についての両者の選評がちっちゃな字ですが載っていて,これを読むのもまたたのしいです。
 私のお気に入りを5つくらい紹介します(たくさんありましたが)。

○平和には主義などないと大根干す
 右派だとか左派だとか,すぐにレッテルを貼って差別をしようとするネットの人たち。これは日本だけではないのかな。でも,平和を求める気持ちは,みんな同じはず。

○戦争はすべての季語を破壊する
 これは,俳人しか読めない句でしょうね。そうか,季語ってやっぱり大切なんだな。日本の四季を楽しめるのは平和だからだなと思いました。かっこいい。俳句っていいな。でもこれって川柳っぽい。

○うたってよピースソングを忌野忌
 忌野清志郎,大ファンです。数年前の5月2日,ラジオから彼の死去を知ったのでした。「愛し合ってるかい~」という声が聞こえてきそう。個人的に趣味が同じなので記憶に残りました。

○若者よ銃など抱くな人を抱け
 自然な姿が一番。銃など抱かないで下さい。昔,銃を抱きながら「人」を抱いたこともあったようです。それがいまだに尾を引いている―慰安婦―のです。ここでいう〈人〉は〈愛しい人〉。人を抱けば新しい生命が生まれる。銃を抱けば,命を奪い奪われる。これも川柳に近い。

○戦争はしないと言ったではないか
 これほど直接的な言葉はない。
「あんた,あのとき,軍隊は持たない,我々は戦わないと言ったでしょ。なんで気が変わったの。」
「またバカなことをするの? 時代が変わったなんてこじつけでしょう。この嘘つき!」
「私は,あなたの言葉を覚えていますよ。」
「戦争をしないといったから,この国をもう一度好きになろうとしたのに…。なによ今さら」
「〈本当は70年前から,また戦争したかったんだ〉〈戦争のできる国でいたかったんだ〉〈あのときはあいつが怖かったので,そう言っただけだ〉なんて,言い訳しないでね!!」

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2018年03月08日

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