あらすじ
不安と恐怖に駆られ、良心の呵責に耐えきれぬラスコーリニコフは、偶然知り合った娼婦ソーニャの自己犠牲に徹した生き方に打たれ、ついに自らを法の手にゆだねる。――ロシア思想史にインテリゲンチャの出現が特筆された1860年代、急激な価値転換が行われる中での青年層の思想の昏迷を予言し、強烈な人間回復への願望を訴えたヒューマニズムの書として不滅の価値に輝く作品である。
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Posted by ブクログ
ドストエフスキーの起点となる小説の下巻。物語のリアリズムに引き込まれる。老婆と女殺しをした主人公ラスコーリニコフの心境の変転が感動を与える。愛は善悪を超えることがラストの場面で暗示される。
Posted by ブクログ
白状したら罪が軽くなったってラスト
結果だけを見て、一律に罰の重さは計れない。
どんな境遇、状況で実行するに至ったか、精査するために警察・検察・裁判官がいる。罪に対して、然るべき罰を与えることが重要だと言われているようだった。
検察官をやっている親戚がこの本を大事に持っていた理由が少しわかった気がした。
みんな悪いことをして生きている。
罪の意識に苛まれながら、忘れた頃にまた思い出しながら。
私も今までたくさん無邪気に悪いことをしてきた。
主人公のラスコーリニコフは、ある学生のそそのかすような意見に乗っかって、貧困の元・学生を苦しめるクズみたいな人間なんだから殺していいじゃんって、ハエを殺すかのように高利貸しの女を殺した。
悪いことをしないと生きていけないくらい困窮はしていた。
私たちだって、世界中の全員にとって良い行動なんてできない。誰かにとって善良な行動は、他の誰かにとって悪い行動になる。仕事をしていると、そんなことばかり。
ラスコーリニコフみたいに、わたしもとっくに頭がおかしくなってる。自分って悪い人間だ〜って、寝込んだり、人殺してなくてもいくらでもある。
悪いことをしなくて済む世の中だったらいいのに。でもそんなことは無理だから、悪いことと同じかそれ以上いいこともたくさんするように心がけるしかない。それ以上気にしていたら、自分のことを殺してしまう。みんなおあいこ。
Posted by ブクログ
印象に残った本ベスト5に入る。
特にスヴィドリガイロフがドゥーニャから拒絶されたシーンが印象に残った。スヴィドリガイロフはどんな人物だったんだろうか最後にわからなくなった。
愛を得ることができずに亡くなったスヴィドリガイロフとソーニャの愛によって救われたラスコリニコフを対比させて考えてしまった。
Posted by ブクログ
監獄に入っても変わらなかったラスコーリニコフの思想が、ソーニャとの愛の力によって遂に崩れるという結末が好きだった。「どう終わるんだろう?」という興味で読み進めていたけど、個人的に刺さる終わり方だった。また、1860年代ペテルブルグの社会風刺や、ポルフィーリーとの対決といった、色んなおかずがある小説だと思う。ドストエフスキー自身の「暴力をも辞さない」思想がラスコーリニコフに投影されていることを知ってより好きになった。
Posted by ブクログ
貧しい学生ラスコーリニコフが、金銭目的で高利貸しを殺害する。彼は罪悪感に苛まれ、精神的に苦悩する。
道徳、自由、救い、愛と友情の描写や、ポリフィーリーとの緊張感のある対峙は、読み応えがある。
Posted by ブクログ
圧巻だった。そこらの本とは一線を画してる。
読んでからいろいろ考えたけど、解説にほぼ書いてあったのであれ読めばここに書かなくていい。自然に考えさせられるってこと自体まで書いてあった。
翻訳は少し古い感じがするけど、そもそも作品自体も古いのであんまり気にならない。今だったら尼さんとは言わない気がする。
エピローグに入る前、本編の最後が本当に凄かった。あのあたりのどこか半ページだけでも星5は決まる。
スヴィドリガイロフが本当に良いキャラクター。あまりに下卑てるけど人間らしい。
覚えておきたいのはラスコーリニコフが後悔していないということで、罪の意識に苛まれて自殺するんだろうなという当初の予想とは全然違ってた。100人殺せば英雄、といった軽い言葉で片付けられるような思想じゃない。
ずっと内容が濃い。日本中の文系の卒論これだけで補えそう。
Posted by ブクログ
本書のタイトルは罪と罰だが、テーマとして「愛と許し」があげられる。
殺人を犯した主人公は、ソーニャの愛に触れることで自首へと至り、互いに愛し合っているこを自覚することで希望を見出す。愛されていると感じたからこそ、川へ身を投げることをやめることができた。
一方、スヴィドリガイロフについてだが、解説の中で、ニヒリズムの行き着く先の暗示として彼の自死が述べられている。彼もソーニャと心を通わす前の主人公と同じく、世の中を悲観的な目で見ているが、彼は主人公とは対照的な最期を迎える。彼はドゥーニャを愛していたが思い届かず、拳銃自殺を選ぶ。ニヒリズムが法的な罪ではないにせよ、悲惨な答えに行き着いてしまうことの表れなのだ。放心と疲れ、虚無が私を定めないように、祈る気持ちを忘れずにいたい。
Posted by ブクログ
読み終わったあとの解放感が凄かったです。
当時のロシアの情勢を知っていたらもっと楽しめたかも?
私の学がなさすぎて…!
ラスコーリニコフ自身、一応罪を認めたということですかね?
本作は「罪と罰」の罪の部分が強いイメージです。
物語が終わった旨で括られていますが、続きがあるとしたら、罰の部分はもっとしんどい気がします。
ラスコーリニコフ程ではなくとも、彼との共通点を見つけては1人焦ってました(笑)
光属性のソーニャといることで、その罰に苦しむか、きちんと更生されるか…。
後者であってほしいですね。
Posted by ブクログ
青空文庫で読んだので下のみ登録。
元々海外文学はカタカナの名前が覚えられず苦手だったんだけど、ロシア文学は輪をかけて覚えられない!あだ名もあるので呼称がコロコロ変わるし。長いけど、結構駆け足で読んでしまったので何度か読み直すべきだなあと思った。話の流れをさらったから次はもう少しかみ砕いて読めそう。まあ長いからなかなか手が出しづらいけど……。以下、感想。
・皆貧しく悲惨な暮らしだけど、みんな発狂していくので、貧しさに伴う不安っていうのは人間を狂わせるものなのかなと思った。自分に置き換えて考えても、お金がない時の焦燥感といったら尋常じゃない。官吏の奥さんとか気の毒過ぎた。
・罪を犯した後のラスコーリニコフの描写がリアルでよかった。罪の意識に耐えられないものなんだな、人間は。逃げ続けて時効に至った人とかすごすぎると思う。何かが麻痺しているのか。
・スヴィドリガイロフといいルージンといい、ドゥーニャはカス男に好かれすぎではないか。スヴィドリガイロフの「15歳くらいの嫁を貰おうとしてんだぜ~(ニヤニヤ)」トークは本当にきつかった。ドゥーニャも何もされなくてよかったけど、スヴィドリガイロフの自殺はどれだけショッキングだったろうと思う。
・最終的にはラスコーニコフもきちんと裁かれ、良い兆しを抱いて終わったことはよかった。お母さんには幸せに死んでほしかったけど。ソーニャの兄弟たちも幸せに暮らしているといいね。