【感想・ネタバレ】pink 新装版のレビュー

あらすじ

岡崎京子のあの名作が、電子版となって登場!
2ヶ月連続(7月末、8月末)リリース。

89年初版の発売と同時に岡崎京子の名を文学界にまで知らしめた、傑作中の傑作を新装版で出版。評論家たちから「マンガは文学になった」と言われ、その完成度の高さが彼女のマンガ界での地位を確立したといっても過言ではない。ふだんはフツーのOLユミちゃんが、密かに自宅でワニを飼い、エサ代のため、自分の好きなものを我慢しないためにホテトル(!)嬢をしている。そこに作家を志しながら義母の愛人をしているハルヲ、義理の妹ケイコ、決して相容れない義母がからむ。リアルなセックス描写を交えながら、お金とは、本当の愛とはを描いた作品。彼女が敬愛するジャン・リュック・ゴダールを思わせるコマ割、真実をつく乾いたセリフと人物描写や時代性が、岡崎京子ならでは。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

私は濃いピンク色のルイヴィトンのヴェルニの二つ折りのお財布を使っている。
お母さんが韓国旅行のお土産で買ってきてくれたお財布で、最初は気に入らずに仕方なく使っていたけれど、友人にはなかなか好評で、色をほめられているうちにそれなりに気に入った。
でも、かれこれ三年もそのお財布を使っていて、飽きちゃったのだ。次に欲しいのはクロエのリリィの長財布。うすいピンク色で、リボンモチーフにはたっぷりのビジューがついている。とびきりかわいくて、それを持っている自分を思い浮かべただけでうっとりする。値段はだいたい7万くらい。びっくりするくらい少ないお給料しかもらっていない新社会人の私には、ちょっと手が出ない。
ユミちゃんだったら、きっと手にいれている。知らないおじさんと寝たお金で。私だってその気になれば、ホテトル嬢になってクロエの財布を買うことはできるんだろう。そうしないのは、なぜ?たぶん、シアワセを恐れているからだ。ユミちゃんは言う。「シアワセなんて当然じゃない?」。
夜はホテトルやって、昼間は変わり映えのしないB定食みたいなOL。それらを繋ぐのは、なんでも食べる強いワニ。シアワセを恐れる私は、手に入れられないものを我慢して、そうして自分を積み上げていくけど、ユミちゃんは違う。我慢もしないし、積み上げるべきものを食べるワニがいるからだ。「欲しいものを手にいれる」という至極シンプルなシアワセを突き進むユミちゃんが、なくしてきたいくつものものも、ワニが食べてくれる。

2
2011年12月11日

Posted by ブクログ

ワニを飼う、たったそれだけのことに主人公がどうしてこんなにも命を燃やしたのか。

複雑な事情、理不尽な環境、そういったジレンマに対峙するとき。
自分をすり減らして魂を削ってそれに向き合ってしまう人と、見ないふりをするのが上手な人に分かれるのだと思う。

この主人公は、後者だし、いつも他人のせいにしない。
だからこそ、あえて鈍くしておいた感性を、唯一取り戻せる方法が「ワニ」だったのだ。生きている実感を、可視化するための存在だったのだ。

自分の機嫌を自分でとることができない人は、こういう人間のことをヒリヒリするほど妬ましく羨ましく思ってしまうのだな。(義母)

彼女は、正しい生き方ではないにしろ、美しい生き方をしていた。
岡崎京子の作品はいつでもバッドエンドだけど、結果よりもその過程が人生の「らしさ」なんだろう。


1
2021年07月12日

Posted by ブクログ

岡崎京子さん好きー。

「幸せなんて、当然じゃない」

そういってのける主人公が格好いい。


 「女の子ってどーしてこーゆーフリルのついたぼーりょくを振るうんだろう」

激しく同感。


 結構前のお話なのに、身につまされるようで。

愛と資本主義のお話らしい。

彼女の見た資本主義と、今の資本主義は一緒かな?

かわいーもののために、オンナノコは働く?
今は、生きるために働くオンナノコが結構多い気がするな。

かわいーもの、キレーなもので自分を固めたってさ、

ほしーもんは、もっと強欲に、執着して、ブン取らなきゃ、手に入んない。

そのウラまでもう明るみにされて、

それでもキレーに着飾んなきゃ、話になんない。

生きづらいのって。



キレーごとじゃ、生きらんないくらい、窒息しそうな今に、もがきながら生きてる。


消費されながら、私たちは生きてる。
年齢を、労働力を、小さなゴシップを。

そこに「愛」なんてもの、いるんだろうか、なんて嘯きながら。


愛なんて、いらない。
欲しいのは、ともに前を見て生きてくれるパートナーだ。

そう思う私は、どうやら、愛というものは「依存」ありきだと、考えてるんだろうね。


もっと力強く、たくましく、私は生きるわ。

1
2014年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1990年代。
作者は絵をかくのが好きで、高校時代にエロ雑誌にエロ漫画書いてたって、読んだことある。うろ覚え。
主人公は、ワニとアパートに住むOL。金持ち父と優しい母。優しい母は早世し、金持ち父の愛人が継母。継母は嫌いだが、継母が作るアップルパイと継母の子と好き。お金でこんなキレーなものが買えるなら私は働く、と売春。テキトーに生きて彼女作ってる大学生と出会い恋。大学生、文学賞をとる。幸せの絶頂の彼と彼女。ワニ、継母に殺される。彼女の過去が暴かれる。二人で逃げよう。パパラッチから逃げる途中で交通事故の彼。空港で待つ彼女。永遠の袋小路ファンタジーなんだよな。これが90年代かなぁ。少女漫画でここまでやっちゃうの?の最後の漫画家と思ってる。

0
2024年04月21日

Posted by ブクログ

資本主義の中で生きる人々の幸福ってあまりにも歪で、残酷だってことを改めて客観視できた。

ユミちゃんの「自身の欲望にとことん素直」であることの純粋さ・恐ろしさに面食らってしまった。

「全ての仕事は売春であり、愛である」の真意は分からないけれど、もしそれが自分の命を切り売りするような愛だとしたらあまりにも悲しいと思ってしまう。

0
2022年11月02日

Posted by ブクログ

岡崎京子のpink のコメントまとめ

全ての仕事は売春である ゴダール

愛と資本主義の物語

シアワセなんて当然

漫画も文学になる時代が来た

樋口一葉のにごりえ

乾いた諦観

どーして女はこーゆーフリルのついたボーリョク平気で使うんだろ?

バブルの消費社会の環から抜け出せない

0
2022年01月30日

Posted by ブクログ

バブルの頃?の欲望があふれる消費社会の空気をスタイリッシュに描いている、と思う(生まれる前だから憶測)。ユミちゃんの――消費でなく――愛の対象は残酷な結果になってしまうのは切ない。そういう意味ではユミちゃんは消費社会の円環から出られない存在だった。
ハルヲくんの切り貼り小説というのは自己言及的でおもしろかった。

0
2021年10月15日

Posted by ブクログ

一読ではこの作品が、「漫画も文学になる時代が来た」と言われる所以をつかめなかったが、深く掘り下げようとすると、愛と資本主義をテーマに、時代の風刺画のような作品なのかな、と理解した。
30年も前の作品だけど、読み応えがあり、ギャグ漫画や恋愛漫画ばかり読んできた自分には、未知領域の開拓で面白かった。

0
2021年06月17日

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こういう風に住みたいっていう感情がすごくよく分かる。日々を構成する音楽とか映画とか部屋のにおいとか夜の帰り道とかそういうもの全部が自分の思い通りだったら幸せなのにって考える。

0
2018年09月30日

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今まで読んだ岡崎京子作品では一番読みやすかった。
ユミちゃんもその周りの人たちも、関わりたくないけどどうしようもなく魅力的。
正に愛と資本主義の物語。

0
2014年12月19日

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血まみれ白雪姫 in 20th century。

pink はお姫さまの好きな色。
お姫さまのしあわせの色。
やさしかったお母さんの爪の色。
経血と精液が混じりあう色。

働き者のお姫さまは売春します。
「お金でこんなキレイなもんが買えるんなら
 あたしはいくらでも働くんだ。
 よし! 明日もがんばるぞ!」

どんなにつらいことがあっても
お姫さまはくじけません。
「それは頭が悪いせいと
 目の前の事しか考えないから」

考えないのは
考えたくないから。
考えたくないのは
考えたら壊れるから。

昔のひとも言っています。
『自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は、
 その犠牲としてみんなこの淋しみを
 味はわなくてはならないでせう』

どうかお姫さまを責めないでください。
意地悪な継母も無力な王子さまも
みんなゆるしてあげてください。
彼らはすでに罰を受けているのです。

「すべての仕事は売春である。」
愛と資本主義のおとぎばなしでした。

0
2013年05月14日

Posted by ブクログ

ユミちゃん…。思うところかぶるところありすぎて「ユミちゃん」の一言しか出てこない。

ユミちゃんは手に入れることの価値を見失ったとき、発作に教われた。

とんでもない既視感だ。

で、その後読んでいるマンディアルグが岡崎京子風に再生されるという。

0
2013年02月14日

Posted by ブクログ

個人的に,それでもいいじゃん!生きてればいいじゃん!ていう気がして救われたマンガです。
女の子は,可愛いもの,綺麗なもの,気持ちのいいものが好きで。
弱いようで逞しくって,でもやっぱり弱くって残酷で。

話の展開よりも,主人公のユミちゃんのちょっとしたモノローグが好きです。こうして「普通に」こわれていけるから,生きてられるんだと思います。

1
2011年02月22日

Posted by ブクログ

この消費社会では愛は、別の消費によって代替できるのではないだろうか、と、これがこのマンガが描く余韻から伺える「”愛”と”資本主義”」なのではないかと私は感じる。

ただしそこには、「代替できるということは、ただの軽薄な愛だった」という諦観はない。愛は愛であり美しく、ただ、資本主義における愛の一つの形が示されただけにとどまる。

0
2024年03月06日

Posted by ブクログ

「お母さんが良く言ってたわ シアワセじゃなきゃ死んだ方がましだって」
「お母さんは?」
「····· そのとおりに死んだわ」

本作を語るうえでまず外せないのが、とにかくワニです。「スリルとサスペンス」のワニ。ジャングルを夢見、力強いその顎でなんでも噛み砕いてしまうワニ。生きてるのが窮屈そうだから、殺されて鞄にされてしまったワニ。浅い読みかもしれませんが、やはりワニとユミちゃんは表裏一体で、ユミちゃんがあってこそのワニ、ワニがいてこそのユミちゃんだったのでしょう。
·····いや、なにもワニに限った話ではありません。愛だって同じようなもの。人生だって同じ。みんなみんなみんな、最終的には窮屈な鞄に収まるものなのかもしれませんね。

0
2022年10月30日

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資本主義と消費社会の話。
こういう生き方もあるかと思う一方で、やはり我々は消費社会に抗えないのだと思った。
人は消費してはいけない。

0
2022年09月24日

Posted by ブクログ

作者の絵が上手い下手で賛否両論分かれがちだが、このある意味で現代を風刺する、底抜けに明るく愚かで痛ましくもおかしい話に、ゆるゆると脱力した線はよく合っている。
欲しいものは欲しい、手に入れる為なら体を売ることも辞さない。昼はOLとして商社で働き夜はホテトル嬢としてカラダを売る主人公は、自宅で飼うワニに愛情を注ぐ。
ワニは肥大する物欲のメタファーであると同時に、けっして満たされない渇望を象徴している。
後半でワニのモノローグが挿入されるのだが、ワニもまたふるさとへの郷愁に駆られ、常にここではないどこかを求め続けている。

ワニのように貪欲な主人公を取り囲む家庭環境は複雑だ。反りの合わない継母と天衣無縫な義妹、母は嫌いだが妹は好き。そこへ母親のヒモが現れ、妹も加わった奇妙な共同生活がはじまるのだが……
特に印象的なのはラスト近く、OL仲間とカフェでお昼をしていた主人公の言葉。
欲しいものはなんとしても手に入れなきゃ気が済まない彼女は、ある意味では足るを知り、自分の身の程をわきまえた友人へ凄まじい怒りと反感を抱く。
彼女が本当に欲しかったものは何か。幸せといってしまえば短絡だ。居場所といってしまえば安っぽい。
彼女が本当に欲しかったのは、言葉にできない何か、よるべない自分が依れるリアリティだ。
ヒモと義妹が共同制作した寄せ集めの切り貼りが、「小説」として立派な賞をとってしまうように、彼女たちのアイデンティティはすかすかだ。
世間の評価なんててんであてにならない、外側さえ辻褄が合ってれば一人の人間として認められてしまうもどかしさ。
明るく笑えるシーンもたくさんあるのだが、そのくせ乾いた諦観が漂っている。
誰も彼もが誰かを妬み何かを欲しがり決して満たされることがない、今の世の中では誰もが虚無を食べるワニだ。

結局彼女は何も手に入れられなかった。
やっと手に入れたと思ったしあわせは夢と消え、だが空港で薔薇色の未来を夢見る彼女はそれを知らない。
ここで切るのは非常に憎い演出。
未完成のまま放り出された小説のように、リアリティのないリアルを生きる彼女もまた、白昼夢のような現実のただ中に放り出された。
実の母の言葉を忘れられないまま大人になった彼女は、心のどこかで「永遠」も「王子様」も信じていたのかもしれない。
そんなモノどこにもないのにどこかにあるかもと期待して、それが報われず渇望に変化しなお探し続け欲しがり続けて、どこまでも転がり落ちていく。

ワニは肉食だ。
ピンクの薔薇では腹はふくれない。

0
2019年12月23日

Posted by ブクログ

1980~1990年代に活躍したといわれる漫画家、岡崎京子さん。漫画を普段読まないのでその存在を知らなかったが、近年「ヘルタースケルター」という作品が沢尻エリカ出演で映画化されたようで、名前がまた知られるようになったという。
絵は全く古くなくかわいらしいが、登場人物の髪型に時代を感じる。時代背景はバブルだろうか。裕福な家庭に育った主人公だが、ペットのワニを養うために、OLの他に売春もして稼ぐ。継母も主人公の恋人を買っている。嫉妬に狂う継母は…。
主人公に感情移入はできないものの、とても現実的でしっかりとした女性にエールを送りたくなる。幸せになってほしかった。が、なんともむなしく切ない。
作者の岡崎京子さんは、1996年に交通事故で生死をさまよう大けがをされて、それ以降制作活動からは遠ざかっているそうだ。とても気の毒で、少しでも回復していただきたいと思う。

0
2019年12月16日

Posted by ブクログ

そんなにお金が欲しければ カラダ売ればいいのに
みんな ワガママなくせにガマン強いんだな 王子様なんか
待っちゃって
あたしは 欲しいものは欲しくて欲しくていてもたってもいられなくなっちゃう

というユミちゃん

ジャングルに連れていってもらうのを待ってたワニは
カバンになって
最上の幸福がやってくるのを待つ気持ちでハルヲくんを待っている ユミちゃんは ハルヲくんが死んだのをまだ知らない

まずは 爪をピカピカにしようと思う漫画でした

0
2018年09月03日

Posted by ブクログ

なんとなく予想できるラストではあったけど、辛い。あと切り貼りして作った話で大賞とっちゃうってンな斬新な!!

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2013年08月24日

Posted by ブクログ

ペットのワニと暮らす昼はOLで夜はホテトルのバイトしてる女子のお話。バブル時代のあっけらかんとした乾いた空気感…自由、ある意味では我儘。どんどん手に入れたモノがすり抜けてゆく様は哀しくて残酷。今はもっと窮屈で生きにくい時代だと思ったりして。

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2012年09月20日

Posted by ブクログ

いまさらながらに岡崎京子さんのマンガ。でも読んだことない。青山ブックセンターで見かけて、「マンガは文学になった。とまで言われた岡崎京子代表作」「すべての仕事は売春であり、愛である・・・」というコピーにひかれたまたま手に取る。

絵も書き込んだ精緻なものではないし、さらりとストーリーが描かれているのだけれど、だからこそOLしながらホテトル嬢もふつうにこなす、主人公の「ユミちゃん」の生々しい存在感やセックスの描写とかリアルなエピソードがへんに重たくならなくてちょうどいい感じ。(作者はそのあたりをねらってあんな画風にしているのだろうか?)

この漫画の醸し出す空気、読んだあと引く感じ

あと、やけにリアルに現実を捉えた描写も面白い!

ホテトル嬢の仕事のときに、コトをすませたあと、「いつまでこんなことをしているつもり?」「いまどきの子は・・・」と説教する男性客に、「イッパツしたあとになにエラそーなコト」という描写とか。

ちょいちょい面白くて気になるところがたくさんあった。

0
2012年02月12日

Posted by ブクログ

遅れて読む名作。90年代の刹那的がすばらしく的確に表現されているようで、マンガが文学になった、と言わしめたこともナットク。

0
2012年01月30日

Posted by ブクログ

すべての仕事は売春である。

東京という街で普通に暮らして、普通に壊れてしまった女の子の
愛と資本主義をめぐるお話。

印象的な言葉ばっかり。

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2012年01月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

POP?というか本の表紙に書いてあった「マンガは文学になった」って言葉がぴったりな感じ。

最後がちょっと、、、、悲しい。けどそこがいいかも!

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2011年02月26日

Posted by ブクログ

「マンガは文学になった」とまで言われた岡崎京子の代表作。

teto/高層ビルと人工衛星、Cody•Lee(李)/悶々などなど、好きなバンドの歌詞にも度々登場するから気になってて買ってみた。

「すべての仕事は売春であり、愛である」
は読み終わっても完全には理解できなかったけど、主人公のユミちゃんみたく欲望のままに生きてみるのも悪くないのかなあと思ったりした。

あとなんか、普通とはって少し考えるきっかけにもなった気がする。読後感ヨシ。

0
2024年06月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

二階堂奥歯の推薦図書と思えば容易に想像はつくのだけれど、エッチなシーンも全然感じない、何とも気持ち悪く後味の悪いハードな作品だった。ワニ可愛いのに可哀想。ユミちゃんも可哀想。後味は悪いんだけど、嫌いじゃない。でも、もう一度読むことはないかもな…。

0
2013年11月07日

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