【感想・ネタバレ】ハイ・ライズのレビュー

あらすじ

【映画化原作】ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす、新築の40階建の巨大住宅。1000戸2000人を擁し、マーケット、プール、ジム、レストランから、銀行、小学校までを備えたこの一個の世界は事実上、10階までの下層部、35階までの中層部、その上の最上部に階層化されていた。その全室が入居済みとなり、ある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配しはじめた。3カ月にわたる異常状況を、中層部の医師、下層部のテレビ・プロデューサー、最上層の40階に住むこのマンションの設計者が交互に語る。バラード中期の傑作。/解説=渡邊利道

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

借りたもの。
祝・映画化記念の再販!
映画鑑賞後に読んだことで、映画との明確な違いを意識する。

映画では”ヴァニタス”――タワーマンションと階級社会に見る人間の傲慢とその儚さ――虚栄を強く意識させられたが、小説ではタワーマンションという空間での環境問題――近隣住民の心身に与える影響やテクノロジーは人間を幸せにせず暇を持て余した人間が刺激を求めて暴力的になってゆく様を強くしている。

世界の縮図、閉じた円環の中で機能する完璧な世界を構想しながら、ただ高みへと目指す一方的な構造は次第に住んでいる人間を不安定にさせる。
公共施設の不備や故障、次第に外界から孤立し、物資も滞ってゆく……
階級意識と不満、近隣の人間との距離の近さも災いして、自身の権利ばかりを強く打ち出す住民たちは次第に文化的・文明的な生き方を放棄する。

停電などの電気設備の故障は、需要と供給のバランスがとれなかった当時を反映しているのかもしれない。
それが脳神経の伝達とリンクし、タワーマンションが人間の身体に見立てられたり、階級社会制度そのままだったり、様々な変容をする。
どの様な解釈をされながらも、それらは閉塞し停滞し、崩壊してゆく。

それがまるで正しい事のように、3人の男たちの視点から描かれている、狂気に魅せられる。

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2016年08月25日

Posted by ブクログ

高層ビルに住む人々が、小さな綻びをきっかけにおかしくなっていく話。想像の範疇を超えた……という感じはあまりないし、淡々と話が進んでいく面があるのでスリルみたいなものはないが、普段から平然と平和に生きている自分の環境が当然じゃないかもしれない……という身近な所に恐怖を感じるという面で良い作品だった。

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2022年11月25日

Posted by ブクログ

ロンドン中心部に聳え立つ高層マンション。
40階建て1000戸、商業施設や小学校もある
一つの《世界》に生じた異常事態について、
三人の住人の視点で綴った作品。
1975年の時点で、
21世紀現代の俗に言う「タワマンヒエラルキー」を透視・描出し、
当時の“近未来”消費社会のヴィジョンを提示した怪作。

25階に住む大学医学部の上級講師ロバート・ラングの
過去2~3ヶ月の回想。
マンション上層部、中層部、下層部の居住者が
共用設備の使用法やマナーなどを巡って
反目し合っていたが、停電が発生した際、
37階の住人である女優のペットの犬が溺死させられ、
また、最上階の宝石商が転落死したことで
不穏な空気が流れ始めた――。

階級闘争をスタイリッシュに描いた小説かと思いきや、
グロテスクなスラップスティックの様相。
悪臭芬々たる血みどろの無惨絵が展開されるのだが、
主要登場人物がクールで、語り口がスッキリしているので、
そのギャップがおかしくて、つい笑ってしまった。

映画版も観てみたい。

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2021年11月10日

Posted by ブクログ

マンションが内部崩壊していく感じは、なんかやたらと高いビルが好きな香港にはありそうなイメージで、中国人ならこうやるに違いない、この下等民族め!と思いきや白人も一皮むけば一緒だ、というか、そもそもモデルが香港だったりして。
犬を食ったり、ていうのはまだ許せるけど、まぁ別に腹減ったらしょうがない、だけど、なんでうんこやらションベンを撒き散らすのか。しかも自分の家の周辺にすら。
それさえなければ後は無問題。

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2021年03月21日

Posted by ブクログ

バラードはこれまで2作品しか読んだことがありません。扱うテーマは魅力的で本屋でもついつい手に取ってしまうのですが、どうもその回りくどい文体に忌避感を覚えてしまっているらしく、結局レジまでもっていかないことばかり。本書はたまたま古本屋で発見し、もともと興味のある作品であったので、ええいままよ、と購入。

回りくどい表現は相変わらずでしたが、読みにくいほどではなく、結構すいすいと読み進めることができました。さて、その内容。最初の方は隣人同士のよくあるトラブル。それが苛烈になってきて…までは理解しうるのですが、その後、いつの間にやら狂気が支配してしまいます。狂気の階段を一段一段あがって、というのではなく、気付いたら狂気の霧が濃くなっていた、というそのシームレスさにびっくり。ただ、読み手までその狂気に囚われるかというと、そうではなく、異常すぎる様に途中から引いてしまうのが実態でしょう。隣人トラブルの延長線上の物語と捉えていたところ、予想もしない方向に話が展開したため、親近感が薄れ、気付けば頭のおかしな舞台を遠目で眺めている、といったところかと。

本作は、バラードの作品の中で「テクノロジー三部作」に数えられるようで、科学技術の産物と人間の関係を追及している模様。そう考えると、最後まで狂気が去らない筋書は物語としてとても魅力的。最後の最後、もしかしたら、正常に戻るかも、と思わせつつ、狂気が更に周りを覆い始める描写には薄ら怖ささえ感じました。
食べず嫌いせず他のバラード作品にも挑戦してみよう。

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2020年08月06日

Posted by ブクログ

「犬鍋オイシイ!シュゴイアッタマルヨオー!」ある日電車の中で上海出身の留学生は叫び、周りはドン引き。

本編。超高層マンションのダストシュートの設備の崩壊に始まり、電気水道エレベーターが止まり人間らしく生活できる環境を住んでる人間自ら崩壊し、狂気のハードル(ドン引きライン)をピョコピョコ飛び越えていく。
主人公に始まり、この世界ではライン越えの瞬間は特になく、最初から狂気の中にいて、ただ静かに生活していただけなのである。その静かさが恐ろしいが大袈裟にラインなど引いて「私は正常」などとのたまう方が狂気だ。

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2019年02月16日

Posted by ブクログ

見上げるほどの都心の高層マンションに住む成功者は、更にその階層ごとに自ら分類する。
その隔たりは、人種差別や現代の経済格差のように。

常に、下に住むものは頭の上の重みを感じ、上に住むものは足元に踏みつける優越感に浸る。

羨望と侮蔑
不安からくる集団心理
同じ階層の住人間で起こる同調圧力
汚物や破片のなかでのディナーパーティー
ベランダから投げ捨てられるゴミを待つ屋上のカモメたち

やがて暴力が蔓延して、狂気に身を委ね、いつしかそこに陶酔を見出していく。

いやになるほど嫌な物語、なぜこれを読み進めるのか……と、思いながら全て読んでしまう。

SFでもミステリーでも無い、現代のディストピアを描く狂気の読み物。

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2025年01月27日

Posted by ブクログ

高層住宅が舞台というのが気になって読みました。
マンション内の秩序が崩壊し、住人たちが本能の赴くままに生きていく姿に妙なリアリティーを感じさせます。
階層化された人間関係も現代の縮図のようです。

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2024年09月04日

Posted by ブクログ

1975年に書かれたと知って驚いた。

隔絶された社会で秩序がどんどん崩壊していく様子が恐ろしすぎて、その進行の様を本を閉じるたびに家族に「この本ヤバい、みんな狂ってく」と吐き出さないとやってられなかったw

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2024年03月23日

Posted by ブクログ

つくづく一人でいる時に読まなくて良かった。高層マンションの住人が次第に内なる階級争いとそこから始まる暴力に支配されていく様がなんとも不気味だった。何が怖いって、みんな、抜け出そうと思えば抜け出せる環境にいるのに、どういうわけか誰もそこから抜け出すことを選ばなかったこと。。。警察ですら欺いて暴力と殺人を謳歌する様はグロテスクすぎて気持ちが悪かった。著者は隔絶された環境に置かれた人間が野蛮に戻るさまを描きたかったのかと思うけど、これを読んでどんな感想を持ったらいいのか。。

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2020年05月05日

Posted by ブクログ

40階建て一千戸の巨大マンションで、15分ほどの停電の後に一匹の犬の死体が見つかったことをきっかけに、上、中、下層の住民の不満が爆発。衝突が始まる。

SFか?と言われると、そうなのかもしれない。外界と隔絶されているあたりは、宇宙船なり無人島でも描けるテーマなのだが、そこが高層マンションというところがこの作品の面白さでもある。

この作品の大きなキモとなるのが、抗争を恐怖として捉えるわけではなく、住民たちがマンション内だけに与えられた楽しみであり、ゲームであると認識している点であり、このあたりは筒井康隆を読んでいる人にはわかりやすい。ただの恐怖小説だと思って読んでいる人には、全くピンとこない話であろう。

また、上層=上流階級はリーダーを置いて結束し、下層は結束できずに混沌とし、中層はリーダを置くんだか置かないんだかというのは、設定として非常におもしろい。

上層のロイヤル、中層のラング、下層のワイルダーの、それぞれの視点が交錯するが多少難があるものの、わかりやすいストーリー展開であった。

ただ、訳が悪い。比喩を訳すんだか訳さないんだかという部分が多くあり、文章になっていないものもある(主語述語がない)。訳すなら訳すでもう少し厚くなっても良いから丁寧に訳して欲しい。

ストーリー☆4、訳☆2というところ。

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2018年02月01日

Posted by ブクログ

SF。サスペンス。
創元SF文庫から出版されているが、これはSFなのか?近未来ディストピアものということか。
最初の1ページで感じたとおり、作品全体を通して不穏な空気が漂う。
結局、たいしたストーリーはなかった気がするが、なぜか惹きこまれる不思議な作品だった。

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2017年04月01日

Posted by ブクログ

「蝿の王」っぽさを感じるSF小説だけど、当事者が大人同士で、それぞれ見栄だの地位だの、やっかみだのがある分、秩序が崩壊した後の混沌ぶりはひどい。
はじめは読み進めにくかったけど、最後はするする読めた。

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2017年01月26日

Posted by ブクログ

面白かったです。この高層住宅に住むことは最先端のように思いましたが、住人たちがどんどん暴力的になっていくところが、退化なのかもしれないと感じました。渦巻く不穏な狂気の空気が好きでした。でも犬はいけない…この描写だけは好きになれませんでした。映画化されているのですね。この世界がどう映像になっているのか気になります。

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2017年01月14日

Posted by ブクログ

何もかもが整った快適な住まいが、あっという間に異常な世界になっていく。そんなことあるわけないよ、と笑えればいいけど、なんだかありそうな気にさせられるのが本当にこわい。

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2016年12月08日

Posted by ブクログ

SF?SFなのか?これ。
ロンドンの中心部にそびえ立つ超高層マンションで起こる不条理劇。
世間的地位はあるものの知的な感じが全くしない住人たちなので普通の感性を持ってる人なら最初から住みたいとは全く思わないマンションが舞台。
その時点で既にもう歪んでる。
その上全てが整えられた環境が少しずつ崩されていく。
住民たちは対処法を考える。という理性はなく
人間の本能のまま行動する。エロ&グロがあるのだがなんとなく紗幕1枚隔てた所で行われている感じがあって「生々しい」というより「浮世離れ」している。
そういう点では「SF」のカテゴリーに入れて良いんだろう。

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2016年11月02日

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