あらすじ
「強いってのはこういうことだ」。
シーズンオフを迎え、鷹森雄星は一軍強化キャンプへの参加を許される。
しかし一軍は、雄星の想像を超えた厳しい世界だった。
「二軍じゃどうだったか知らんが、ここじゃ、おまえは特別じゃない。“その他大勢(ワン・オブ・ゼム)”だ――」
既に慣性制御は普及し、“生みの親”である雄星以上の使い手がチーム内にもごろごろと現れる。
憧れの存在たちに厳しい言葉で叱咤される日々。
だが、決して隔意だけではない“一軍の矜恃”に触れ、雄星はプロとしての生き様をその身で学んでいく。
そんななか、紅白戦でリーダー機を務めたアデーレが、一軍リーダー機のケイトリンを撃破してしまい……?
波乱の新シーズンが、幕を開けようとしていた。
“王の御手”を持つ黒騎士もついに復活!?
SF界の俊英が放つ疾走スペースグラフィティ、騒然の第3弾!!
※「ガ報」付き!
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※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感情タグBEST3
うわ~!!
このシリーズは本当に本当に面白いです!
特に終盤の試合が素晴らしかったです。まさに興奮冷めやらぬ状態で、読み終わった後しばらくシルバーハンズとホライズンズの試合のことばかり考えてしまいました。まるで実際に試合を見ていたかのようです。凄すぎます。
雄星とアデーレが本当にかっこよかったです。アデーレの蛮族思考、スカッとしていてめちゃくちゃ良いです(^^)
Posted by ブクログ
3巻にして初試合という、シリーズやジャンルで見ると何ともスローペースなのだが、1、2巻の積み重ねは大きく、じっくり描くことの大切さを教えてくれる。若き俊才アデーレがケイトリンを撃破したというのは、最初は地味に感じたものの、じっさいに読んでみるとその衝撃度は極めて大きく、チーム内の苛烈かつ貪欲なポジション争いはスポーツものらしくて非常に良いと思う。特に慣性制御によるストライクフォールの戦術土台そのもの変化や歴史の分岐点の激動を一プレイヤー視点で追う興奮は凄まじく、手に汗を握る展開ばかりである。慣性制御によって一度否定された戦術が、逆に戦術によって才能頼りのアデーレが完封されるというのもシビアで面白い。それらで積み上げた希望や敗戦の悔しさ、練習の手応えが結実する初の公式戦への期待と不安感はまさにスポーツのそれであり、スポーツの楽しみを余すところ無く伝えていると言えよう。
最初に闘うのが昨年度覇者のホライゾンズという強敵に挑む構図のワクワク感もさることながら、初手から散兵戦術という奇策に相手が打って出たのも意外性があってよかった。慣性制御と戦術のハイブリットというのは、強化キャンプで指摘された不安点であり、開幕の絶望感が凄い。そこからアデーレへのバトンタッチと雄星のハンズ・オブ・モナークの起動まではテンションが上がり過ぎて血管がブチ切れそうになった。まさに王道的な試合運びであり、「掴め!コントラクター!」というキメ台詞はロボットアニメらしい外連味がある。獅子奮迅ではあったものの、0−2という大差での敗北はスポーツが決着した時の「ああ〜……」といった安堵感は如実に表れており、長回しの試合も含めて本当に一つのスポーツ中継を見ている気分になった。ラノベでここまでの読後感は味わったことがない。単なる描写のバランスの良さだけでなく、登場人物の心理描写や戦術の説明などは小説というフォーマットを存分に活かしており、まさに小説でしか味わえない最高のロボットバトルだろう。
そこからケイトリンの脱退やアデーレの新リーダーへのフラグ、また戦争をギリギリでスポーツの枠に押し込めているが故の危うさと、歴史の重要参考人になってしまった主人公の運命。政治的な暗闘の数々。ストライクフォールというスポーツを巡るこの危険すぎる綱渡りの展開に、魅了されっぱなしである。間違いなく2017年度最高のライトノベルであり、傑作のSFロボットアクションものであると言えよう。