あらすじ
福岡県の夕築市にある寺院・道然寺には、中学2年生の双子が住んでいる。「寺の隣に鬼が住む」が信条のレンと、「仏千人神千人」が主義のラン。性格が正反対の双子たちは、それぞれの論理で事件の謎を解決しようと試みるのだが……。
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Posted by ブクログ
“珈琲店タレーラン”シリーズの作者による、福岡県のお寺が舞台の日常ミステリ。
道然寺の若和尚・窪山一海(くぼやま いっかい)の周りで起きるさまざまな謎の出来事を、中学生の双子・姉のランと弟のレンが推理する。
一海は、真面目で考えも深いし、ちゃんと若和尚を務めているのだが、何かといじられてトホホな感じ。
お人好しだからか。
双子は、寺に捨てられていたという過去を持つ。
そのせいか、レンは物の見方もシニカルで、人間の行動をナナメに見るきらいがある。
ランは逆に、性善説にのっとって推理する。
物の見方が逆ならば、推理も真逆。
反対から光を当てることで、見えなかったものが見えてくるのが面白い。
人気シリーズを持つと、“○○の方が良かった”などと言われがちだが、この作品は、一海さんのフラットな視線も良いし、双子や、お手伝いさんのみずきのキャラも良い。
加えて、お寺という舞台は様々な人間模様が垣間見られそうだし、たくさんの檀家さんともかかわるし…シリーズとして続いてほしい気がします。
キャラ達の、この後の成長を見たいです。
第一話 寺の隣に鬼は棲むのか
資産家のお葬式で、香典袋の中身が無くなる。
若い後妻は、受付のお手伝いさんを疑うが…
第二話 おばあちゃんの梅ヶ枝餅(うめがえもち)
商店の子に生まれたことへの複雑な思い。
第三話 子を想う
水子供養をしたから新しい子を授かった、と吹聴する若い主婦の真意は?
第四話 彼岸の夢、此岸(しがん)の命
彼岸の入りの日、一海と双子たちの夢枕に女性が立つ。
見知らぬ人が伝えたかった願いを解く。
Posted by ブクログ
道然寺の住職の息子である一海さん視点の語りで物語が進みます。この寺に住む中学二年生の双子、ランとレンのふたりが一海さんの身の周りでおこった様々な出来事に対して推理をおこない事の真相を解き明かし当事者を救うという構成になっています。
双子による推理は事件の性質と二人の性格とも相まって、片方の推理にちょっとした誤りが含まれており、もう片方の推理がそれを正すという構図なのですが、1~3話まではいわゆる”安楽椅子探偵”の様相を呈しており、後から語られるほうの(=真相を言い当てている)推理がなぜそのように行き着いたのかの手がかりが乏しい、あるいはラン or レンだけが知っている事実によって推理が展開されており、読者として作中に散りばめられたヒントを回収する(回収してもらう)機会がないのがちょっと残念なところ。
が、最終話である4話だけは双子の生みの親かもしれない人物を巡って、赤ん坊の隠し場所や南京錠の番号など、事前のヒントを手繰り寄せながら読み手としても謎を解決してゆく楽しさを味わえる構成になっていました。1~3話を読んだ時点では二巻は読まなくてもよいかと考えていましたが、やっぱ二巻も読んでみようと思えた最終話の面白さでした。