【感想・ネタバレ】幸福な食堂車 ― 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」のレビュー

あらすじ

鉄道デザイン王国・九州の秘密

いまや日本中の鉄道ファンが最も熱い視線を注ぐ九州。
かの地に一歩踏み入れば、列車から駅舎まで、かつて体験したことのないユニークな鉄道文化が縦横に広がっている。
“本当の公共性”を問い続け、九州を鉄道王国へと変貌させた一人のデザイナーの挑戦と戦いの記録。

【著者紹介】一志 治夫(いっし・はるお)

1956年、長野県松本市生まれ、東京都三鷹市育ち。「現代」記者などを経て、ノンフィクション作家に。
主な著書に『たた一度のポールポジション』(講談社)、『狂気の左サイドバック』(小学館)、
『前線からのクリスマスカード』(幻冬舎)、『たったひとりのワールドカップ 三浦知良1700日の戦い』(幻冬舎文庫収録)、
『小澤征爾 サイトウ・キネン・オーケストラ 欧州を行く』(小学館)、『失われゆく鮨をもとめて』(新潮社)など。
【目次より】
第1章◆コンセプトとはすなわち「志」
第2章◆色への狂気「絶対色感」
第3章◆ヨーロッパで出合った洗練とタフネス
第4章◆パース画の世界を切り拓く
第5章◆成功へと導く「気」の存在
第6章◆初の鉄道デザインは挑戦的な「花仕事」を
第7章◆100億円の価値を生むデザイン
第8章◆なぜ食堂車が大切なのか
第9章◆感動は注ぎ込まれたエネルギーの量
第10章◆和の素材・伝統・意匠を新幹線に
第11章◆「ローカル線」で日本の田舎を再生する
第12章◆合理主義・効率主義への抵抗
第13章◆答えは子どもの頃に見聞きした中にある

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Posted by ブクログ

ネタバレ

感動は、注ぎ込まれたエネルギーの量に等しい。

「ビートル」
だからクロ。
公共物は中間色、異質なものは目立たないほうが良いという発想を覆した。
ジェットフォイルの走るしぶきを見せるよう、客室の後ろをガラス張りにした。

787型特急「つばめ」
JR各社は改革第一主義で、古い名称「つばめ」「さくら」へのこだわりがなかった。

旅における食の記憶を大切にしたい。
食堂車は五感を刺激する場。
だから、空間の見え方だけでなく、木のぬくもりのような感触にも執着する。
建築空間をつくっていく感覚で、街並みや住宅、マンションを車内に持ち込む」

 ガラスの壁(一部はポリカーボネイト)
 御影石の床(エンボス加工で滑りにくく)
 木材(アルミに0.2mmの板突き板)
と、いった工夫で問題を解決。

 桜の一枚板のテーブルとドーム天井のビュッフェ。
 荷物棚は蓋付き。間接照明。
 椅子の一つ一つから、女性乗務員の制服まで全てデザインした。
 エクステリアは1990年代前半当時、クルマで流行していたガンメタ。

「つばめ」
N7カモノハシとは真逆の美しい顔。不採用案だったもの。これに長さ2mの縦目をつけた。
トンネルが7割と多いため、室内空間を重視し、九州のヤマザクラを採用。ロールブラインドにも。
客席の仕切りには鹿児島のクスノキ。
洗面所の縄のれんには熊本の藺草。
椅子だけは、コストの関係で北海道のカバザクラ。
シートは博多織を検討するが、耐久性と色彩で、西陣織を。

入り口デッキはダークな柿渋色にダウンライトで暗く。
客室に入ると、明るい空間が広がるように。
車体はマンセルN9.5の白。実現可能な最高の白色。

日本社会の停滞は「働かないおっさん」にある。

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2013年01月27日

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