【感想・ネタバレ】あげくの果てのカノン 5のレビュー

片思いは、一方的で独善的で暴力的。
なのに、よくある少女マンガは片思いの美しさばかり描いている。
リアルに片想いを突き詰めれば、ファンタジーでグロテスクでバイオレンスなマンガになってしまうはずなのに。
などと思っていたら、『あげくの果てのカノン』が現れた。

舞台は、エイリアンに侵食されつつある東京。
主人公のカノンが8年間思いを寄せているのは、高校時代の先輩であり今は特攻部隊の一員の境。
イケメンで、少しチャラくて人気者の彼は、巷のヒーローでもあり、既婚者でもある。
それでも気持ちを抑えきれないカノンは、ストーカーレベルで彼を想い続けていた。
少しずつ接近していく二人だったが、それをきっかけに世界は崩れ始め…。

この世界での特攻隊員は、体を損傷しても「修繕」されて戦い続ける。
しかし「修繕」には、性格や思考なども変化してしまうという副作用がある。
変わってゆく自分に戸惑う境に対し、何も知らないカノンは「ずっと好き」と告げる。
救いでもあるはずの言葉だが、果たしてそれは本当に信じてよい気持ちなのか。
ファンタジーの世界でなくても、人間の細胞は数年ですべて入れ替わる。
年を取れば性格も変わっていく。それでもなお、一人の人を好きでいる気持ちは正しいものなのか…?

世界の状況がどうであれ、恋する気持ちは常にエゴイスティックに暴走していく。
SFマンガを敬遠しがちな、少女マンガファンにこそ読んでほしい、痛々しい作品です。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

ネタバレ 購入済み

どうしようもない片恋

最終巻を読み終わって最初に感じたのは、ああ賛否が分かれそうな最後だなということだった。
わたしは、この終わり方が好きです。
主人公は1人の人に長い間、執着にも近い片恋を続けてきた。いくら距離をとって打ち込めるものができたところで、やはりあってしまえば強烈な感情が押し寄せてくる。共感はできないけど理解はできるし、片恋の心苦しさがリアルに描かれている作品で本当に面白かった。

0
2020年02月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一度目、読み終わった時は「結局くっつくんかい!」と思って終わった。
だけど二度目を読み終わったとき、なんだか涙がボロボロ出た。



皆さんは一目惚れというのをしたことがあるだろうか。
私はある。その人は私にとってとても美しい人で、その人は既婚者だった。私は20でその人は29で、私はあの時ほどの恋を知らない。なんにも相手にされなかった。その人は奥さんのことが大好きで、その奥さんは見た目も性格も私と正反対の人だった。そりゃ相手にされない。相手にはされないが、優しくはされた。
それが救いだったし、呪いだった。今もまだ執着のようにその人のことを思うことがある。なぜなら一目惚れだったから。一目惚れというのはまったく厄介だ。だって頭じゃなくて心で恋をするのだ。本当に心が踊るし、その人から溢れ出る美しさに救われる。作中に出てくる先輩はまさに美形だったけど私が一目惚れした人はそうではなく、太っていたし目は細かった。一般的には美形ではないだろう、でも一目惚れだった。電流が走るというのはたぶんああいうことをいうのだろう。

私はもう29になる。あの時のあの人と同じ年だ。それでもまだ思い出す。呪いがとけていないのだと勝手に感じる。
でも中学生の時に一目惚れした相手のことは20のときの恋で忘れられたので(たまにTwitterで現状確認してるけどそんなもんは可愛いもんなので許してほしい)、やっぱり必要なのは新しい一目惚れなんだと思う。恋じゃない。一目惚れ。婚カツが上手くいかない理由がよく分かる。だって一目惚れなんて中々しないから。そう簡単に心に電流は走らない。

私もカノンと同じストーカータイプなのでよく分かる。分かるんだよなぁ。狂気でしょ、もう。自分は第三者目線で見るとこんな怖いんだと知ったんだよ、この漫画で。気持ち悪いほどの執着。周りの意見聞かないし。自分のことばっかりだし。何か才能があるわけでもない。だから距離を置くしかない。私も一目惚れの人と離れる為に仕事やめてその人着信拒否したし。物理的措置。

だからこそラストで泣いてしまったのかな。一度目で泣かなかったのは自身の一目惚れの過去を忘れていたからだ。二度目でそれを思い出した。すると涙が出てくる。理由は分からない。あのラストに自分は救われたのか、それとも死ぬほど羨ましいのか。ただ心がえぐられるように泣いてしまった。

この作品が刺さった人には綿矢りさの「勝手に震えてろ」も読んで欲しい。小説だけど。そっちはカノンより現実的だ。でもどっちも読んでる時に恥ずかしくて死にたくなる。共感性羞恥ってやつかもしれない。
私たちのような人間は本当に生きづらく、人を好きになりにくく、いざ好きになったら気持ち悪くなる。それでも死ぬまで生きていかなくちゃならないんだから大変だ。私のあげくの果てを早く見たい。楽になりたい。

3
2018年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「最終兵器彼女」以来のセカイ系をガワにして、なんと不倫ラブコメに仕立てました、という。
一気読みしてしまった。
また「勝手にふるえてろ」「寝ても覚めても」「ラ・ラ・ランド」などを思い出す、「恋愛(についての)漫画」だった。
一体恋愛って何なの、最終的に何がゴールなの。もうわからない。
人は変わるということをこういう描き方をするのは面白い。
作者本人のインタビュー、編集者を交えた座談会、女子たちによる座談会、村田沙耶香との対談、大童澄瞳との対談などの記事も面白い。
「推し、燃ゆ」が流行っている今にもつながるか。

0
2021年02月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

完結巻。
物語は終わったけれど、恋に懊悩しながら生きることは続くといったところ。
ゼリーの細胞を用いて人体を「修繕」することで心変わりが起きる、という設定は、主題のひとつであったと思うけれど、その部分の掘り下げが、結局突き詰められないまま終わってしまった印象。第27話で、「修繕」を受けた隊員は、その副作用によりゼリーと同化した姿になることが明かされるが、それが「先輩」にどう降りかかるか、カノンがそれにどう向き合うか、という展開が描かれなかったことに消化不良を感じる。

2
2018年11月10日

ネタバレ 購入済み

どこまでも自分のことだけ

アイドルの追っかけをする素質がある人が身近(?)の一般人に惚れ込んだら?というifの話かと思っていた。
しかし実際には、子どもの頃の傷や空白を埋めるどころか無視して他人へ執着する、その恐ろしさを感じた。だから変わらないし、いつまでもこども。

なんて真面目な感想はさておいて、カノンのキャラクターが気味が悪いくらいに貫かれていたラスト!最後までひたすら続きが気になるお話でした。
ただ、SF要素があまり掘り下げられず、現実の不倫で起こるイザコザを派手にするだけの舞台装置なのかな、と感じました。ゼリーと修復の設定が面白そうだっただけにさみしい。

1
2020年07月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どう終わるんだ終わるんだと…かのちゃん…
とりあえずヒロが最後まで可愛くて報われなさすぎて最&高でした。
少しは学んだのか?大人になったのか?と思ったけどかのんはやっぱりせんぱいが大好き。かのんは変われないし変わらない。強い…強すぎる…。もうよく分からない、好きってなんだろう?かのちゃんみたいに他人に依存できないのである意味とても羨ましい。いや、他人に依存する自分が救いなのかな?居心地の悪さの先を常に求めてたのかな〜放棄だけど彼女にとっては幸せなのかな〜
自己肯定感って環境に恵まれなきゃ育たないものね。

0
2018年06月17日

「青年マンガ」ランキング