【感想・ネタバレ】あげくの果てのカノン 4のレビュー

あらすじ

「好き」ってなに?
「永遠」なんてあるの?
恋愛の命題を突き詰める、大注目作。

境(さかい)への好意をあきらめきれない高月(こうづき)かのん。しかし世界は、かのんの恋を許さない。親友、母親、弟、社会…さまざまな正論と感情が立ちはだかるが、逆に“試練”が高月の思いを強くしてしまう不幸…

高月の“世界を壊す恋”は
境にうり二つの男性、松木平(まつぎだいら)の出現により、
より選択を迫られるが…!?
大ヒット、不倫SF、第四集!

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片思いは、一方的で独善的で暴力的。
なのに、よくある少女マンガは片思いの美しさばかり描いている。
リアルに片想いを突き詰めれば、ファンタジーでグロテスクでバイオレンスなマンガになってしまうはずなのに。
などと思っていたら、『あげくの果てのカノン』が現れた。

舞台は、エイリアンに侵食されつつある東京。
主人公のカノンが8年間思いを寄せているのは、高校時代の先輩であり今は特攻部隊の一員の境。
イケメンで、少しチャラくて人気者の彼は、巷のヒーローでもあり、既婚者でもある。
それでも気持ちを抑えきれないカノンは、ストーカーレベルで彼を想い続けていた。
少しずつ接近していく二人だったが、それをきっかけに世界は崩れ始め…。

この世界での特攻隊員は、体を損傷しても「修繕」されて戦い続ける。
しかし「修繕」には、性格や思考なども変化してしまうという副作用がある。
変わってゆく自分に戸惑う境に対し、何も知らないカノンは「ずっと好き」と告げる。
救いでもあるはずの言葉だが、果たしてそれは本当に信じてよい気持ちなのか。
ファンタジーの世界でなくても、人間の細胞は数年ですべて入れ替わる。
年を取れば性格も変わっていく。それでもなお、一人の人を好きでいる気持ちは正しいものなのか…?

世界の状況がどうであれ、恋する気持ちは常にエゴイスティックに暴走していく。
SFマンガを敬遠しがちな、少女マンガファンにこそ読んでほしい、痛々しい作品です。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

続きが気になる。
カノンの長年の盲目的な思いがプラスへと転じて先輩がそれを嬉しいと受け取っていたのでこのままもしかして終わる?いや、けどそんなわけ…と思っていたらやっぱりそんなことはありませんでした。
体を補修するたびに先輩が少しずつ変わるというのは知っていたけれど、いざそうなるとやっぱりカノンもショックを受ける。私は大丈夫、という驕りを少なからずカノンも持っていたはず。なのにあっけなく先輩に切り捨てられて読んでるこっちも胸が抉れる心地…嫌いじゃない…。笑
カノンの恋は自分の中で完結していたものだったのに先輩が少しでも振り返っちゃったから。
初穂さんもどうなるんだろ。そして松木平くんは???

1
2018年03月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

修繕のせいで好みが変わり、かのんから離れていく先輩。かのんは先輩のことが忘れられないが、それも当然だと思う。9年の一方通行の愛はあまりにも重い。巻の最後あたりの会話、松木平くんの言うことはもっともだが、かのんの「セックスしないとわたしたちの恋愛って価値がないの?」「私はずっと独りのまま先輩を好きでいたけど、幸せだったよ」のセリフが切ない。

0
2018年01月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今巻も物語はどんどん進むけれど、物事が起こるべくして起こっていく、という感じ。しかし「あげくの果て」とは言いながら一体どこまで行き着くのだろうか。

ストーリーはもちろん面白いけれど、今巻もとにかく演出が巧み。
たとえば第18話での「先輩」の回想シーン。(回想の順としては珍しく)近い過去から始まり遠い過去へと回想が展開していく。ことさらに物や言葉、風景によって連想が立ち上がり、記憶をさかのぼっていくのは、まるで手探りで自己を再構成しようとしているよう。過去の自分との非連続性に苦しむ「先輩」の心理や、過去の自分との同一性を証したい切実さが見える気がする。

また第24話の、松木平くんから、かのんへの説教は、それが響かないことを示す演出が面白い(あと、松木平くんは登場自体がとても少女漫画的で、今後の展開が気になる)。
ひとつは、「変わり続ける」「繁栄」「適応」といった言葉がプラスイメージで使われ、背景に首長竜があしらわれるシーン。変化することや進化すること、またその壮大さを演出した次のページ、間髪入れずに見開きで、「変化」を象徴する巨大なゼリーが醜悪に蠢く姿を映し、前ページの言葉のプラスをすべて打ち消してしまう。
またひとつは、「普通」の「未来のある恋愛」をするよう語るシーン。主人公たちがゼリー襲撃により学校へ避難しているせいで、背景には‘校内だより’や‘非常口ランプ’が映っているが、まるでそれらが松木平くんの言う「普通」の家庭や生活への出口を暗示しているようにも見えるし、逆にそれらの言葉の安っぽさを表わしているようにも見えて面白い(もちろんその説教を突っぱねる かのんの方も、本質を口にすることはあれど未熟なままなのだけど)。

0
2017年11月19日

Posted by ブクログ

恋愛のゴールとは何なのか、ということを考えてみたりすることがある。

彼女にとっては「好きで居続けること」こそがゴールであって、
それから先なんて何もなかったし、それ以外はどうでもよかったのだろう。

では、恋愛の「目的」とは何なのだろう?
結婚すること? 子どもを持つこと? 家庭を持つこと?
社会的地位? 自己満足? 存在意義? 生きる糧?

打算もなく、ただ純粋に好きで居続けられる彼女はやはり、少しだけ眩しく見えてしまったりもする。

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2017年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

かのんの異常なまでの愛はある程度理解し、それに魅力を感じるから読み進めていたはずだったのに、今巻ラスト数ページのかのんの「独白」に持っていかれる。彼女は境先輩とどうにかなりたいともちろん思ってはいるのだけど、それがすべてではなくて、報われなかろうが何であろうが、境先輩を好きで居続けることに幸せを感じることができるのだと、そういう人間なのだと。見返りを一切求めないそれは、単純に「依存」とも切り捨てられるが、ともすれば究極にプラトニックな純愛とも読める。高月かのんに圧倒される。

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2017年11月13日

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