あらすじ
さびしさを包みあう、女ふたり旅。
四十歳を目前にして離婚した「私」と、親代わりに育ててくれた祖父母を亡くしたばかりの、幼なじみで従妹のちどり。孤独を抱えた二人は、一緒にイギリスの西端の田舎町・ペンザンスに小旅行に出かける。淋しさを包みあう二人の間に、三日目の夜、ある「事件」が起きる……。日々を生きる喜びが心にしみわたる傑作小説。
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大切な人との死別、離婚とそれぞれ大きな別れを経験した主人公と従姉妹の旅先での話。
主人公が元夫のことを、薄っぺらくてかわいそうな人と表しているのが、とても辛く感じた。育ちがそうさせた部分が大きいと思うからである。でも大人だから、変わっていかなくちゃいけないと言われればそれももっともである。
自分が人に優しくするとき、その理由はいったい何だろうか?愛されたいがために優しさを振りまいてはいないだろうか?ちゃんと考えようと思う。
後半の展開に驚きはしたが、全体的に穏やかな流れで、とても好みの本。
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こころの落ち着け方が分からない時、吉本ばななはいつもヒントをくれる。しかも善や悪を分ける方法ではなく、受け入れるという方向性の中で。
私もこの寂しい街に行きたくなった。
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そうか、こうならないとほんとうには打ち解けられない超不器用なタイプなんだな、と私は思った。
どんなに積み重ねても、ずっとホームっていうものができないから
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それぞれの境遇でめいっぱい愛されて育った人達でも、噛み合わないとすれ違うこともあるし、ほんの一点を共有して、それがお互いにとってだいじな時間になったりする。当たり前のことなんだけど忘れがちで、でもそれを思い出させてもらった一冊。
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吉本ばななさんが好きなので、読み終えていない作品を埋めていくように読んでいる。
ばななさんの作品は、するすると入ってきて染みる。(読み慣れなのかもしれないが)
話は変わるが、最近クロテッドクリームというワードによく出会う。
これは食べるべきという啓示か。
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いまの自分の生活が、まるで借金を抱えている人みたいに、今だけは借金のことを忘れていようってむりに見ないようにして楽しいと思うような、そんな日々の積み重ねに思えてきた。
じゅわぁ~っと心があたたまりつつ重くなる、きれいごととごまかしで生きてても人を幸せにできないな、そんな感想を持った。すごく好きな小説!1年に1回は読みたいステキな本!だけど、4月はいろいろ鬱な月だからいろんなことを痛感させられて今のままではだめだ、と思う。自分に自信のある生活をコツコツ地味に地道に積み重ねていきたい。
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いとこと女2人イギリス。の田舎街に傷心旅に向かう。宮古島旅の「なんくるない」からよしもとばななさんが扱う離婚にまつわるお話が好きです。 別れて終わった相手でも尊敬の気持ちを大事にすることで自尊心を保ち自立。見習いたい。
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彼女たちほどではないが、気持ちが落ち着かなくて、ちょっと憂鬱だった。
寂しい風景そして清々しい空を感じ、クリームティーを味わう。
私自身も彼女たちととも、ちょっとずつ前に進もう、そんな気持ちになれた。
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この物語は筆者自身がお父様の死という重い出来事から、立ち直っていく心境を「私」と「ちどり」という2人の主人公の女性に投影したとあとがきに書いてあるように、喪失と再生というのは、中年以降の人生の大きなテーマであるように思う。
年を重ねるにつれて、いつかは来るであろう、大切な人との別れ。そうなった時にどれほどの喪失感や悲しみ、苦しみが自分に襲ってくるのか、今は想像もできないけど、常にそういう覚悟だけはしておこう。自分に起きるすべてのことをこれも運命とありのままに受け入れ、最後は「それでいいのだ」と思える人生でありたい。
お互いの孤独や淋しさを癒しあい、「ちどりはすごいね」「さっちゃんこそ私の憧れの存在だよ」と認めあえるこの2人の主人公の関係は永遠に続くんだろうなと思えた。
物語の中でセントマイケルズマウントのクリームティーやホテルのイケメンシェフの作るスタイリッシュな盛り付けの朝食やイギリス人とタイ人の夫婦が営むタイ料理屋など、要所要所で食べ物や食べるシーンが効果的に使われててよかった。
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つらいことを忘れるには、
時間とおいしい食べ物と静かな景色があればよい。
もちろん、まずは時間。
すぐに忘れようと、助かろうは無理なので、
その間は耐えるしかない。
次に食事。
食べ物に味が戻ってきたら、復活は近いのかも。
最後に外出。
どこかに行きたいという意欲が湧いて来たらもう大丈夫。
その間に誰かひとりでも心の支えになってくれる人が
いれば、いうことなし。
そういうことを再確認させてくれる小説なのかな。
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気ままに、かっちりしすぎず、気の向くままにゆったりと過ごすことも大事なんだな〜と
安心できる居場所のありがたさとかが、さっと読める量で感じることができた
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それぞれ違う傷心を抱えた2人が、触れたり触れなかったりして心の隙間を埋め合うように旅をするお話、まさによしもとばななを読んでいる感じがしました。
普段は作者と作品を結びつけながら読むことは好みませんが、この作品においてはあとがきを読んで完結といった印象を持ちました。
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「彼と暮らしていた今よりも少し若き熱い日々を思い出すたび、やはり目の前が暗くなった。あの日に戻れないなら、もう私の人生にはなんにもない、そんな気持ちがしょっちゅうこみあげてきた。楽しさだけを基準にするなら、話し上手で勘がよく、人の気持ちをさっと察して的確なことを言える彼との暮らしはやっぱり楽しかったのだ」
「誰かの生きがいを生きるという重み」
「自分自身のことを愛してない人といると、それだけでとてもつらいしら苦しいんだ」
「先の約束をひとつする度に、未来に小さな光がひとつ灯った。それを実感できるくらい弱っていた。このところずっと今日を泳ぐのでせいいっぱい、明日は溺れるかも、そんな感じだったことをこの町に来て私は悟った」
「目から涙がぽろりと出てきた。ほんとうは心許してほしかった。もっと無言の時間をもてるくらいに。そして、静かに過ごしたかった。特別な言葉がなくても、相手をほめ殺しにしなくて も、派手に料理を作って並べなくても、特に面白いニュースがなくても、人と人はそっと地味な光が内側から照らすような寄り添い方ができるんだよ、ということをわかってほしかった。」
「人をほんとうにほんとうに愛するって、それはそれはたくさん時間かかるんじゃない?」
ちどりは言った。
「そうだね・・・・・時間をかけてもよかったのかもしれないのにね。 なんで離婚に至ったんだろう?自分のつごうを差し置いてまで愛せる気が全くしなかったからなんだろうと思う。毎日が楽しくて、それを重ねていったら愛になりましたって、そういうものでは決してなかった。まるで借金を抱えている人みたいに、今だけは借金のことを忘れていようってむりに見ないようにして楽しいと思うような、そんな日々の積み重ねだった。入院している人が一時帰宅して、病院のことは今だけ忘れようって思うような切実でありがたい忘れかたではなく、明日の朝仕事上の重要なミーティングがあるけど、すごくいやな人がいて気が重い、だから飲んじゃえ、みたいな甘えた逃げの時間だった」
「でもね、ほんとうにほんとうに愛してたら、いや、愛せそうな予感がしたら、どんなに自分と価値観が違ったって続けたと思うよ。」
「クマさんともしも寝たら、脱いだシャツもハンカチも、みんなクマさんの奥さんが毎日の中でもはや義務感さえなく、普通のリズムで取り揃えたものなんだよね。クマさんのカバンも、靴下も、みんなふたりの家、子どもたちを育てた家からやってきたものなんだよね。不倫っていうのは、要するにとことんそういうものなんだよ。一見楽しく見える。ホテルはそうじもしなくていいし、シーツだって換えなくていい。おいしいもの食べ
て、お酒飲んで、セックスして、いいことずくめ、最高じゃない?と思う。
でもそれは、さっちゃんの元だんなさんの思ってるきらびやかでいつもふんわり楽しい人生と同じで、実はすごくつまんないものなんだよね。ひたすら皿を洗ったり、ふきんでふいたり、ばかほど洗濯物干したり、シーツ換えて腰痛めたり、なんかそういうのがないと、人との関係って深くはならないんだよ。どうしたって。どうしてだかは知らないよ。でも、そういうふうにできてるみたいね。」
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わたしにも同い歳で近所に住むいとこ(同性)がいるがここまでの関係性では無いので何かきっかけがあればこの2人のように寄り添っていけるかな…と思った
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この本を読んでいた頃、失恋したばかりでなかなか内容が頭に入ってこなかったことを覚えています。
そんな経験は今までなかったので、ある意味印象に残っています。
精神的にしんどいときはよしもとばななさんの本が読みたくなります。
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久しぶりに読んだ吉本ばなな。やっぱりしみじみ良かった。
久しぶりの吉本ばななだから、このくらいのボリュームもちょうど良かった。
まだ若い女性二人が主人公なんだけど、還暦をすぎたおっさんのぼくが読んでもなお、なんとも甘酸っぱい懐かしさや不思議な既視感を覚えながら気持ち良く読み進められる。
そしてぼく自身にも、この本に登場する「スナックちどり」みたいな忘れ得ぬお店と、そこでの素晴らしい出逢いが幾つもあったな、と、ちょっとニヤニヤ思い出せるのが嬉しい♪
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角田光代「世界は終わりそうにない」で紹介。
祖父母を亡くしたちどりと、離婚したさっちゃんの従姉妹同士(30代後半?)が、イギリスの海辺の小さな町で過ごす数日。
お互い深い悲しみと喪失感に苛まれているのに、物語の雰囲気はサラッとしている。イギリスは湿度がないせいか?イギリスの冬の寒さ、暗さが彼女たちの心情を表しているようで、でも直接的な暗さは文面では現れない。
異国では非日常だから、従姉妹同士で、女性同士で流れでセックスしてしまうのにも何となく納得。現実だけど現実ではない。けれども、現実は受け入れて、現実に戻らなければならない。
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40歳手前の主人公が従姉妹と二人でイギリスを旅する物語。
思ってもみない展開があったりして驚いたけど、大切な人をなくした二人が最後に少し元気になって良かった。
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きっと内容はふわーっと忘れてしまうだろう。
ちどりとさっちゃんの会話は、
全体的に夜の、眠る前の、
いろんなもの落としきって心が裸になっているときの
それだったような気がする。
私はその瞬間がいちばん素直になれるから
そういう意味で、こんな夜ってあるよね、と思った。
そんな夜を過ぎたあとの
朝ごはん描写がおいしそうだった。
Posted by ブクログ
気付かぬほど些細なものたちでいつの間にか傷が埋められていく、そんな主人公とちどりの旅に私も救われた。
形は変わっても傷さえ癒えれば日々付きまとう痛みは忘れられる。
もう少し頑張れるかも。
少し先の未来を私も見つけられるだろうか。
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夫と別れたばかりのさっちゃんと、育ててくれた祖父母を亡くし1人になったちどりは従姉妹同士。同時期にヨーロッパにいた2人は落ち合い、ペンザンスという英国の田舎町に旅をする。
数日目の夜、2人に起こったことにはびっくりしました。そういう展開!?。同性っていうのは今時別に気にならないけれど、従姉妹だよ?いいの??と、本当にびっくりした。でもその後も後腐れなくやっていける2人は大人だと思いました。
辛い時期にお互いの存在は大きな支えとなっただろう。前向きな終わり方がいいです。
Posted by ブクログ
1日で!というか数時間で読んでしまった!(笑)
「あとがき」を読んで、よしもとばななさんにとってお父さんがどんなに偉大だったか知った。そりゃそうか。ばななさんも、主人公二人も、悲しさや寂しさの中にいるのだけれど、その悲しさや寂しさを自分でこんなに分析できて表現できることはものすごく幸せですごいことだと思った。
Posted by ブクログ
途中までよかったのに、あれ?なぜそっちへ?な展開にある意味吉本さんらしい作品ではある。
あるのだけど、ちょっと作品の印象が変わってしまったので星は三つ。
Posted by ブクログ
気づかないんだよね、自分自身のことは。
気づいたとしても、簡単には変えられないし。
苦い想いは、自分に非があると自分で信じようとする弱さ。これがまた、真っ直ぐあげようとする目を曇らせる。繰り返し、また繰り返す。
許して、繰り返す。終わりまで繰り返す。
Posted by ブクログ
祖父母に育てられたいとこのちどり。職場結婚だったが離婚した私は、祖父母が亡くなり傷心のちどりとイギリスの田舎町に旅行に行く。
日本人はほとんどいない町で、二人はそれぞれと向き合い、これからの自分を見つけていく。
二人の間に起こった事件はビックリだけど、スルリ納得できてしまうところが、この小説の真髄なのかも。