あらすじ
「いったい私たちの毎日の生活を生きるかいあるように感じさせているものは何であろうか。ひとたび生きがいをうしなったら、どんなふうにしてまた新しい生きがいを見いだすのだろうか」神谷美恵子はつねに苦しむひと、悲しむひとのそばにあろうとした。本書は、ひとが生きていくことへの深いいとおしみと、たゆみない思索に支えられた、まさに生きた思想の結晶である。1966年の初版以来、多くのひとを慰め力づけてきた永遠の名著に執筆当時の日記を付して贈る。
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Posted by ブクログ
【生きがいという体験の解体】
本書では、生きがい喪失の深淵をさまよった人の変革体験などを考察し、これらを心理現象として論じている。
1980年、45年前に書かれた本。そしてこれを書き終えるにも10年近く(7年!!)かかったということだから、50年以上前の聞き取り調査とかなのだと思う。英訳されて世界的にもよく読まれているみたいだったので手に取った。
たしか、教科書とかにも載っていたけれど、これまで読んだことはなかった。
個人的には、私の知る日本語では、「生きがい」は一般的な概念として、とても便利だなと思う。感覚的にそれがいいものであることが分かる。(今のサステナビリティみたいな?)一方、実態はよく分からないし実現しようとしてもその方法は分からない。だから言葉として便利であり、実在としてあまり意味を持たない(ように思ってきた。)
そうやってバズワード化した言葉の本来持つ重さ、みたいなものを学べる本でもある。生きがいに求めている人間の欲求とは何なのか、生きがいを奪うものは何なのか、などな、精神医学的に、実際の患者の証言・哲学・文学的思索を分析し、「生きがい」とは何か、解体することが試みられている。
とくに著者が興味を持って研究対象としているのは、極限にある人々。そこで生きがいを見出す人々とそうでない人々。そこでいわゆる悟る人は何をどう悟るのか、みたいなことが具体的に書かれている。だから、ある意味この本は、そのような闇と新たな光を体験をした人々の声を代弁している部分もあると思う。
今、極限状態にいなくても、生きてるといつかそんなときがある。でも生きがいについての知識はその時のためだけじゃなくて、今、自分は自分の生きがいを感じているか、何かうまく行ってないことはあるか、なんで退屈を感じているのか、など、今の生き方を見直したり、意識的に新しい価値体系に適応することを助けてくれるものでもあると思った。
私たちは普段、何かしらの出来事がきっかけを作って、小さな自分の価値体系の変容、適応が起こっていると思うし、そこで欲求不満になったり、生きることへの高揚感を見出したり、し続けているように思う。
読書も、そんな好奇心からしていると思う。
全ての生きがいの体験は個性的であるという。
それぞれにある生きがい感、その喜び、そこにある周りとの関係性、たぶんその多様性、独自性、変化や成長の過程、未来への希望の持ち方、みたいなものがまた自分への励みにもなったりする。だから人は、いろんな本を読んだり、ドラマ・映画を見たり、そこでまた自分の価値形態をずらきっかけに出会ったり、影響しあっているのかなーと思う。
生きがいを求める健全な精神。
Posted by ブクログ
よくある自己啓発本に書いてあるような好きなことをしようとかそういうことではなくもっと本質的な本でした。
光、愛、自然、宗教などに触れて自分の中から湧き上がってくるもの。
人間の存在意義は野に咲く花のように、ただ無償に存在しているひとも、大きな立場からみたら存在理由があるにちがいない。
この言葉が響いた。
もっとしっかり読むべき本だなとおもう。