あらすじ
「地形図を作り始めたのは、どの国でもたいてい陸軍である。もちろん海図は海軍が作った。陸であれ海であれ、国を守るために正確な地図が必要であることは当然である。しかし一方で、他国を侵略するにも、先立つものは地図であった。」(本書「はじめに」より)
軍港や飛行場などの軍用地、重要な工場や発電所、ダム、鉄道操車場といった場所の地図は、敵国の目から隠すために、ときに別のものとして描かれたり、まったくの空白とされることもあった。とはいえ、正確に描かれた地図のなかでこのような改描は逆に目立つことも多い。呉や佐世保、横須賀といった地の空白が意味するものは、歴史を知るわたしたちにとっては明らかだ。この本では、さまざまな用途や時代の地図をもとに、日本がかかわった「戦争」の痕跡をさぐっていく。 軍用地や軍用鉄道は戦後どのような変遷を遂げたのか。また、日本の支配下にあった朝鮮や台湾、満洲国の地図はいかに描かれていたのか。 地図から日本の歩みが立体的に浮かび上がる。掲載地図130点以上。領有をめぐって揺れる尖閣諸島や北方領土の地図も掲載。 【電子書籍版では地図を多数カラー化しました】
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Posted by ブクログ
例えば西新宿の異様なビル群だったりとか、再開発地域だったりとか、昔ここは何だったのか?ということが割と気になるので、かなり興味深く読みました。
第二次世界大戦後、ドイツで戦争未亡人たちが手作業で瓦礫処理をした結果、山ができた、みたいなびっくりするような話が満載です。
Posted by ブクログ
2枚の地図を比較することによって、戦争前と戦後の違いを見ることができる。また、戦局が厳しくなるにつれ、地図に記載される軍事的に重要と思われる情報(軍港、飛行場、師団本部等々)が消えていくことがわかる。
Posted by ブクログ
昔の地図を眺めるのは楽しいけれど、改めて昔の地図眺めてみようかと思えた一冊。
戦時改描自体は知ってたけど、まぁこれほどまでに稚拙な表現だったとはねぇ。筆者は色々と考察してるけど、一番の理由は人出が足らなかったのではないかと思う。
なかなか面白く、読みやすく本だが、白黒のため地図が見づらいことと、筆者の要らぬコメントが何点か目についたのが残念。
Posted by ブクログ
著者は、鉄道を中心に地図を解説した著作を数多くだされている。あとがきにも“一介の地図愛好家”と書かれているが、その歴史観の根底には、しっかりしたものが流れている様に感じた。
本書の多くも鉄道が取り上げられているが、戦争との関係では重要なインフラであり、地図を語る上では避けられないだろう。そこから庶民の生活も読み取れる。
地図と歴史をお好きな方には、肩のこらない良書だと思います。
Posted by ブクログ
自分も地図を眺めるのはキライじゃないが、これだけの情報を地図から読み取れるとは。やはりその道の達人は違うと感心する。
戦争を経て変わる土地の様子を年代ごとの地図で追うのと、軍事施設を地図上から隠してしまったりする戦時改描が2つのテーマ。
・観光用の路線などは廃止して線路を供出。鉄道の上り坂を迂回して補助機関車を不要にして輸送力アップ。駅を間引きして燃料節約。
知恵はあるが、余裕がない。。。
・ベルリン市街には瓦礫でできた小山がある。木造建築だった東京との違い。
・しかし、ちょっと前まで等高線を描いてあった地図を慌てて改描しても遅いのでは。やれることをやるということだろうが、やっている姿勢を見せるのが肝腎の官僚主義の香りもする。
・見知った場所の地図も。変なところだと思っていたのが腑に落ちたり。
新川崎の操車場は荒地に改描、しかし戦後にホントに荒地になる。。。船橋市行田の「丸」は通信所。光が丘公園は成増飛行場→グラントハイツ跡。
Posted by ブクログ
本の雑誌で、「名指揮者が楽譜を読むように、地図も読み手によって見えるものが全然違う」と名言をおっしゃっていた今尾さんの本。地図の読み方がすごいのはもちろんだが、そのベースに、権力の地勢にとらわれずに土地上の人々の暮らしにもとづくものの見方が信頼できて、安心できる。自分が地図好きだったらもっと楽しめただろうな。