あらすじ
「ソクラテスより頭の強い人間はいますか」聞き間違えた神託のせいで頭突き勝負が始まって(「ソクラテスの石頭」)。論理学の講義が苦痛で仕方がない未来の大王は……(「アリストテレスの論理が苦」)。若く美しい婚約者とモメた四十男のヘーゲルは思慮深すぎる手紙を書くが(「ヘーゲルの弁証法的な痴話喧嘩」)。哲学史に燦然と輝く巨星たちを笑いのめし、叡智の扉へと誘うユーモア小説。
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Posted by ブクログ
ソクラテスからサルトルまで、有名哲学者に焦点を当てたユーモア小説。専門家ではない作者が真面目に勉強し、わからないところは正直にわからんとぼやきつつも、読者が置き去りにされないよう、おもしろおかしく伝えようとしてくれている。これはあくまで小説なので解釈はあてにせず、考えすぎた人たちの偉大さと変わり具合を楽しむのが無難。熱心に捏ねた結果、とりあえずこうなったでいいと思う。なにより気楽に読めた。
Posted by ブクログ
清水義範の久しぶりのパスティーシュ短編集。それが筆者の本領なのに、最近は旅行記や老後の心構えみたいなのばかり依頼されて欲求不満だったとか。お得意の文体模写が実に楽しそうだが、往年の勢いは失われてしまったな。
例えば、注釈で遊ぶという発想は清水氏らしくて面白いのに、その内容が説明過多になってしまっている。昔はもっと「わかるヤツだけわかればいい、それが教養ってもんだ」的な傲慢さが(謙虚なお人柄なので他の作家ほど露骨ではないものの)垣間見えて、それがパロディを痛快で鋭いものにしていたのに、子供向けやお年寄り向けの噛んで含めるようなウンチク本ばかり書いているうちに角がとれすぎてしまったのかなぁ。
誰しも年を取る。ずっと同じ状態にとどまっていられる人なんかいない。長年見守っていると、自省もこめてそう達観せずにはいられない。日の出の勢いの羽生結弦くんだっていずれ後進に勝てなくなり、引退する日がくるのだ(って、関係ないか)。敬愛する清水氏の久々の挑戦への敬意とエールをこめて、ちょっと甘めの採点。