あらすじ
ジャズが目を覚ますと、あいかわらずトランクルームのユニットに閉じこめられたまま。そばにはふたつの死体が……。これではジャズが殺したと疑われることは必至だ。一方、コニーは、脱獄してニューヨークに潜伏しているビリーの手に落ちてしまう……。ジャズの、コニーの運命は? ハット・ドッグ・キラーの黒幕は? みにくいJとは? 祖父の墓に納められていたビリーの本に書かれている謎の言葉〈カラスの王〉とは? ジャズはシリアルキラーであるビリーの跡継ぎとなってしまうのか? そして驚愕の……。驚異の青春ミステリついに完結。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
「さよなら、シリアルキラー」の三作目。
前作の続き。
ジャズは銃で撃たれたまま、
トランクルームに死体二体とともに閉じ込められていた。
そこへ父親ビリーが助けに現われ、匿名で通報もしてくれる。
一方、ビリーに捕まっていたコニーは、ジャズの母親ジャニスの助けで
怪我をしながらも逃げ出すことができる。
その後、ジャズは自分の能力をフルに使ってニューヨークから戻るが、
最大の危機は脱してしまったように感じだ。
カラスがシリアルキラーたちのネットワークというも意外性がなかったし、
アメリカの支配階級となり殺人し放題の社会にすると言うのは現実性がなく、
殺人者を統べる者、カラスの王が女性でも良いが、
突然そう言われただけでは説得力がない。
苦労して祖父の棺から手に入れた父親のノートもそれほど役に立ったと思えないし。
ジャズに殺人者の道を歩かせるために、
母親がジャズの祖母を病院で殺したというのも意味がわからなかった。
そう、カラスの王はジャズの母親だった。
父親が母親を監禁していると思って助けようとしていたジャズだったが、
結局父親を半身不随に、母親を植物状態にしてしまう。
コニーの父親が言ったように、かわいそうに。
Posted by ブクログ
「さよなら、シリアルキラー」シリーズ三部作の完結編。ぶつ切りで終わった前作と違い、今作は最後まで手抜かりなくきっちりと描き切っている。果たして主人公のジャズは殺人を犯すのか?という命題の熱を冷まさずに最後まで引っ張りつつ、誰もが認める大団円にまで持って行ったのには驚嘆に値する。主人公以外に止められない、止めるためには殺すしか無いという難題に対して出した主人公の解答は素晴らしく、よもやすれば漫画的な解決ではあるが、主人公のシリアルキラー設定というスパイスのおかげで成り立った主人公らしい裏技的な解決であろう。非常に小説的でいいと思う。また主人公が罪を背負って生きたり、主人公が死んで終わるパターンにしなかったのは立派である。血脈や人種といった変更不可能な属性というテーマに対して真摯的に取り組んだ結果だろう。クライマックスやエピローグのまとめかたも上手く、少年少女が主役の青春ミステリにおいて、大人がしっかりと大人の役割を果たしたのにも好感が持てる。最後の母との対面や、いつでも殺せるけど人間的で要るためにあえて殺さないという、生殺与奪の権利を持ったまま終わるという締め方も印象深い。設定やキャラクター、シチュエーション、ストーリーテリング、どれも高水準な本作ではあるが、何よりもその風呂敷の畳み方に感動した一冊でした。これぞエンタメ。