あらすじ
幼稚園で毎年開かれる、資金集めのためのトリビアクイズ保護者懇親会。園の一大イベントが目前に迫るなか、ジェーンの息子のいじめ疑惑は一向に晴れず、ジェーン本人も次第に心がゆれ始める。一方、ジェーンの友人マデリーンは、別れた夫とその妻の子が娘と同じ幼稚園に通っていることがストレスで、爆発寸前。もう一人の友人、裕福な銀行家の妻で一見何不自由ない優雅な生活を送っているセレストは、夫の暴力に苦しんでいた。それぞれ表に出せない秘密を抱えた保護者たちの感情が懇親会で爆発、そして事件が。死んだのはだれか、そして何故? アメリカでドラマ化進行中の傑作ミステリ。
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Posted by ブクログ
その時、いったい何が起きたのか? 誰が被害者で、誰が加害者なのか? フーダニットでもハウダニットでもなく、現代版パット・マガーとでも言うべき、巧みなホワットダニット構成。ややアンフェアな点がある気もするが、女同士の共感やらドタバタ騒ぎやらで読者の気を逸らしつつ、終盤に意外な事実を明らかにする手際はなかなか巧い。
ただ、ひとつ残念に思ったのは、各章の終わりに挟まれる関係者へのインタビュー。主要キャラ以外の様々な人物が、目撃談と称して自分勝手な意見、憶測、噂、当てこすりを述べる様がユーモラスで、箸休めな部分もあるのだが、これを聞き取るインタビュアーが主要人物の一人であるとか、意外な人物だったみたいな設定を盛っておかなかったのは実にもったいない。そうした趣向があれば、疑惑と中傷にまみれた地方都市を描き、語り手の意外性でなお驚かすという意味で、それこそヒラリー・ウォーの『この町の誰かが』のオーストラリア/園ママ版という位置付けの作品にも成り得た筈なのに。
ともあれ、これだけの分量を読ませるページターナーぶりは、なるほどニューヨークタイムズベストセラー一位作品である。同じくオーストラリア出身のニコール・キッドマンが映像化権を獲得したというのも納得。
その後、パット・マガーの『四人の女』の新装版が創元推理文庫で再刊されたが、これが本作と同じく、ものの見事にバルコニーを舞台にしたホワットダニットのようで、これは確信犯ですね。しかし、1950年の作品を参考にした作品が現代に書かれるとは少々驚き。