【感想・ネタバレ】荒野のおおかみのレビュー

あらすじ

物質の過剰に陶酔している現代社会で、それと同調して市民的に生きることのできない放浪者ハリー・ハラーを“荒野のおおかみ”に擬し、自己の内部と、自己と世界との間の二重の分裂に苦悩するアウトサイダーの魂の苦しみを描く。本書は、同時に機械文明の発達に幻惑されて無反省に惰性的に生きている同時代に対する痛烈な文明批判を試みた、詩人五十歳の記念的作品である。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

市民的なものを嫌う隠者が、わざわざ最も市民的で規則に囚われた生活をしているものの提供する家に住む。

狼(本能的と厭世的)とハリー(市民的で俗物的)の2面性の板挟みになり、どちらも身を投じて楽しむことの出来ないハリー。前半では「狂人しか立ち入り禁止!」という自分と通ずる張り紙を見つけて、入る方法を模索するが、ついぞ入れることは無かった。
ある日飲食店に行った帰りに、墓に立ち寄ったら(この辺うろ覚え)狂人しか立ち入り禁止!を掲げていた男が葬式の参列者として参加していた。話しかけてみるが、なんのことか分からないとしらを切られてしまう。その帰りにハリーはオオカミに内心笑われつつ、旧友である教授にであうことになる。かつては学問について議論しあった中である彼は、ハリーを狼ではなくハリーとして認識しているため、親愛と尊敬を持ってハリーに話しかけ夕食に招待してくれる。傷心中のハリーは、市民的であっても愛情の欠片に甘んじてしまい、承諾してしまった。何か予定がある市民性に辟易としながらも、約束を守るべく教授の家へ行く。結果は散々だった。世間からすると堕落したハリーは、教授の認識するハリーと今のハリーが変わらないかのように嘘を積み重ね続ける。しかしハリーの好きなゲーテの肖像画が、イメージと著しく違っているのを目に止めると弾けて本当のことを言った。帰り道、自己嫌悪にのたうち周り居酒屋をハシゴする。泥酔したハリーはそのままカフェ(キャバクラみたいなとこ)に行くと、ヘルミーネと出会う。ヘルミーネ母親のようにハリーを見透かして、規律してくれた。しまいには家に帰ったら首を吊るかカミソリで自害してしまうから帰れないと見透かされて、生きることを強制される。

ここからハリーとヘルミーネの関係は始まる
ヘルミーネはハリーの鏡像のように、ハリーの考えを言語化して映し出してくれる。ハリーの荒野の狼の部分を取り除こうと、ダンスや舞踏会やジャズなど次々とハリーに俗物を馴染ませていく。そこでヘルミーネが提供してくれた、マリアという女性にハリーは惹かれてダンスや性行為を楽しむことになる。パブロという美しく寡黙で薬物を魔法のように扱う音楽家とも知り合うことになる。

大目玉の舞踏会にハリーは参加した。
そこでは皆が皆仮装しているため、ヘルミーネもマリアもついぞみつけることができなかった。帰ろうとしたハリーに「ヘルミーネは地獄にいる」という知らせが届く。弾かれたように地獄(ホールのひとつの名称)に向かうハリー、途中でマリアと出会い、キスを迫られるがヘルミーネに会いに行くために拒む。
ヘルミーネはヘルマンに男装していた。以前から女性と男性の2面性を併せ持つ彼女にヘルマンはとても似合っていた。男装をしているヘルミーネとは踊れないが、お互い見知らぬ夫人と踊り、休憩時間の度顔を合わせた。しかしヘルミーネは気づいた時にはいなくなっていた。ハリーがヘトヘトに疲れた頃、結いたての髪の毛に、綺麗な服をきているひとがいた。他の人はみなダンスでよれていたため、ハリーの目に留まる。よくよく見てみるとそれは女装に着替えたヘルミーネだった。晴れて2人は踊りキスする。

舞踏会も終わり、パブロが「狂人しか立ち入り禁止」の魔術会のようなものに招待してくれた。
そこでハリーは複数の魔術にかけられ幻想の最中に飛び込むことになる。最後にヘルミーネとパブロが裸で寝っ転がっていて、パブロがヘルミーネの体に噛み付いたあとを見た時に、「あなたに私を殺されるために、私はあなたを惚れさせる」というはるみー音の宣言通りナイフで殺してしまった。
その後に崇拝するモーツァルトと対話し、それがパブロであったり、モーツァルトであったりした。
へるみーねは死ぬ直前に驚いていたが、ヘルミーネはハリーの鏡だったため、殺して欲しいというのもハリーの気持ちを汲み取ったうちに過ぎなかったのかもしれない。

前半は隠者の生活と思想として理解出来たが、後半はずっとパブロの魔法にかけられていてよくわからなかった。その混沌さえ楽しめるけど。孤独と母性を摂取しながら思想を貪ることができる本。ヘルミーネのような1歩引いて自分を規律してくれるような存在になりたいし、愛されたいなあ。

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2025年11月18日

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