あらすじ
教会の権威復活のために十字軍結成に心血を注いだ知識人法王ピオ二世。過激な改革を説き、民衆の熱狂的な支持を集めるサヴォナローラと対峙したアレッサンドロ六世。教会領再復のため、自ら軍隊を組織し陣頭に立ったジュリオ二世。芸術と豪奢を愛し、法王庁の資産を食いつぶしたメディチ家出身のレオーネ十世……。権力の中枢を生きたローマ法王の実像を描き出す、塩野文学初期の傑作。 ※当電子版は新潮文庫『神の代理人』を元に制作しています。地図・年表なども含みます。
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Posted by ブクログ
教皇としての「使命を感じすぎ、思いつめてしまった」文化人・ピオ2世、「自分の思想を貫くために世界が滅亡するならば、そんな思想はさっさと引き下げる」と豪語するアレッサンドロ6世、威勢がよく口が悪く「決断力と勇気だけで出来ているような男」として描かれるジュリオ2世、「自己の優越性を確信していた、真に貴族的な精神の持主」と評されるレオーネ10世。15世紀半ばから16世紀はじめ頃まで、つまり「ローマ掠奪」によりローマが廃墟と化す直前までにその座に就いた、4人の教皇を描く連作集。
ローマ=カトリック教会の権威が薄れ続けてゆく時代を描いているから、どの作品も優雅さや勇ましさの影に諦念や虚無感がある。けれど、作品毎に書き方を変え、工夫を凝らしているから、陰鬱なシーンが続くものでも読む楽しさがあった。
特に『アレッサンドロ六世とサヴォナローラ』は、権威対権威、思想対思想のぶつかり合いとしても、貴族的なものと民衆的なもののせめぎ合う悲劇としても、読み応えがあった。
Posted by ブクログ
【ピオ2世】知識が多くあるせいで、教会の権威復活を思い、過去の栄光であった十字軍を提唱してしまう。そこに、教皇になってしまったことへの悲しさが表れていた。また、十字軍も最初の方しか成功していなかったから、この年数がたってからの十字軍の提唱は受け入れがたいものだったのだろうと思った。
【アレッサンドロ6世】サヴォナローラとの手紙での対決は面白く読めた。私としては、アレッサンドロ6世の方に正義があるように読めた。というのも、サヴォナローラは、最初の方は民衆のためにやっていたのであろうが、その民衆の熱狂的な支援を得続けるために、過激で、熱狂的な改革を提唱せざるを得なかったのであろう。その点では、アレッサンドロ6世は、冷静な判断をし続けていった、と思えた。
【ジュリオ2世】教皇としては、どうか、と思わざるを得ない人だと読んでいて思った。好戦的すぎる人物だったと思う。ただ、この人の考え方は教皇としてはどうかと思ったが、どこかの皇帝なら、歴代随一の皇帝になっていただろう。その場その場しのぎの外交方針は、宗教的権威としての教皇にはあっていないものと思った。
【レオーネ10世】教皇として、あるまじきと言える散在の数々に暗殺されかけるというスキャンダル。若くして法王となってしまった人だからであろうか、先を読む力が少なかったからこのような行動に出てしまったのではないだろうか。また、出身が、メディチ家というのも災いになってしまったのであろう。
全体として、中世の俗人的な教皇が描かれており、とっても、教皇が身近に思えるような作品だった。
Posted by ブクログ
ローマ方法3代の物語。世の中を動かす法王になったこと以外、似通ったところのないピオ2世・アレッサンドロ6世・レオーネ10世。その人の人生はどのような道を歩んだかでわかるというけれど、この3人を見比べて改めて自分の人生どうするのかと考えさせられる本でした。
宗教のことだけ考えて動くのは難しいものですね。
Posted by ブクログ
ルネッサンス時代の4人のローマ法王を描く。神の代理人とあるが、それぞれ一癖も二癖もある人物ばかりだ。聖職者どころか、世俗の垢に塗れ、欲の皮の突っ張った人たちである。時代とその時代に生きる人物がよく描かれており、若書きの未熟さは感じられず、むしろ生き生きとした文体である。
Posted by ブクログ
いま「カンブレー同盟」の成立過程を読んでるところです。
いいですね。当時の法王や君主さらに民衆の置かれた状況や考えていることが見えるようです。
もう、メモを取りながら1ページ1ページ、超ゆっくり読んでいます。
でも、気付いたら、ああもう300ページまで来てしまったか、って感じです。
読み終わった。
「アレッサンドロ六世とサヴォナローラ」が読み応えがあった。
サヴォナローラに麻原彰晃が重なった。
Posted by ブクログ
ローマ法王をテーマにした一冊。「ローマ人の物語」以来、新作の文庫本が出ると必ず手に取ってしまうことが続いている。それくらい、クセになる塩野氏の小説。
この時代は、昨日のヒーローが一転して今日の悪魔になってしまうようだ。民衆に教養がないので、感情で動いてしまう。それを操るのがローマ法王だったりするのだ。法王が本当に『神の代理人』かどうかは疑わしいが、世間を動かすと言った意味で『神の代理人』であったことは間違いない。
これは1972年に出された作品という。関係者の日記だけで構成された章もあり、初期作品の試行錯誤っぷりを垣間見ることができて面白かった。