あらすじ
天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)。
深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか――。
出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。
スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。
やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。
愛とは運命なのか、それとも、私たちの意志なのか?
芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。
2019年秋、福山雅治、石田ゆり子主演で映画化!大人のための恋愛小説。
主人公のギタリスト蒔野と、ジャーナリストの洋子は、わずかの時間話しただけなのに一瞬で恋に落ちる。仕事や、人の嫉妬、戦争など複雑に絡み合い二人を引き裂こうとする。その後二人はそれぞれ別々に結婚して家庭を築き、でも忘れられない二人が再会するとき…というお話。
全体的に著者の言葉選びが秀逸で美しいです。直接的な好きだという表現をしなくても、会話の端々から「それって好きってことだよね?」とわかってしまう感覚が何とも大人だなと思えます。
また、著者の平野啓一郎さんは、他の著作で分人(状況や相手によって異なる自分になる)主義について書かれています。自分の中の複数の人格を認めてあげる(例えば「あの人と話している自分が好き」)。その観点でもう一度読むとまた違った見方ができるのではないでしょうか。おすすめです。
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Posted by ブクログ
★★★★★大人の読み物。難しい漢字と熟語の乱舞。わからなさ過ぎて開き直ったくらいから物語に引き込まれる。蒔野と洋子のすれ違いにその度にハラハラされられ、その後の時の流れが痛々しい。離婚後のケンの親権については複雑な気分。ニューヨークで演奏中の蒔野のギターと溢れさせてしまった愛はもう止めようがなかった。眩しくて美しい再会に乾杯。残された早苗とゆきについてはご想像にお任せしますか。救われることを願ってやまない。
Posted by ブクログ
やっぱり平野啓一郎さんの聡明で堅実な文章が好きだ。
マチネの終わりに私も一緒に泣いてしまった。あくまでも賢い大人である二人の純愛が尊い。
蒔野と洋子、それにリチャードや早苗や武田もそれぞれ違う価値観をもった深い人間味があって、今もそれぞれの人生を歩んでいる気がするから平野さんはすごい。現実にモデルがいるのだろうか。
冷たいと評されていたけれも、大切な家族リチャードに対してもあくまで客観的に評価して真っ直ぐであり続ける洋子の強さに感銘を受けた。真似しようとしてもできないよ。
Posted by ブクログ
鑑賞日 2025/6~2025/8
評価点3.8
過去に打ち勝てなかった人たちに寄り添う作品。
平野啓一郎という作家は、過去に対しての向き合い方を恋愛や家族といった人間関係をテーマにして度々問い直そうとしてくれる。
多分、内容のなかで述べられていたみたいに、現在(いま)以降の結果を変えていかないと過去に向き合うことなんて出来るはずもなかったんだろう。理性でどう言い聞かせ、どう問い直そうとしても、感性が納得しない限りは再定義など出来るはずもないのだから。だから過去とは末恐ろしいもので、未来の可能性に思い馳せるか、単に忘れようとするかでその回想という時制を回避しなければならなくなる。実際、どんなに挑んだところで、打ち負けてばかりなんだから。
でも、向き合うことはやめてはならないんだろうな。結局いつかは未来が途絶えて、過去しかなくなってしまう瞬間が来てしまうんだろうから…。
時間という、誰もが共有しなければならない普遍的なテーマに向き合わせてくれる作品です。
正直煮えきらない終わり方だったけれど、読んで良かったな。とは思えました。
Posted by ブクログ
難しい単語や表現が多く、最初は読みづらかったが、慣れてくると物語の世界観に入り込むことができた。
天才ギタリストと映画監督の娘でありジャーナリストという2人が結ばれて、色んなアクシデントがあって関係を終わらせることになって、お互い別の人と結婚したけど、2人の思い出をずっと忘れずに心にしまっていて、すてきだった。
2人の関係を邪魔することが起きたとき、自分が物語に入り込んで全部説明したくなったぐらい物語にのめりこんだ。
Posted by ブクログ
大人(エリート)の恋愛
現在の考え方次第で過去の捉え方が変わるという考え方は初めて。たしかに。事実と感情の交差があって人によって物事の捉え方が違うんだなあ。
でも、なんか腑に落ちない。そもそも、物事は捉え方次第!と思って生きてるし、捉え方が人によって違うのは肝に銘じてる。そうすると、新しい知見を得ることはできなかったと言えるのかも。
基本的に、登場人物たちは結局自分の社会的な立ち位置、人からの評価を気にしてる。恋愛をテーマにしてるのに、複雑な感情の移り変わりより、自分は他人にとってどういう立ち位置か、という内容が多かった気がする。私は、感情の推移の細かい描写が好き。
ようこは、心の底で自分が愛されて当然と思ってる、育ちがいいお嬢様なのにたまに悲観的で…それが人並みだと思っているのが鼻についた。
みたにに共感しつつも、みたにのまきのへの思いが邪魔だった。こんなに自制がきかない人を横において大丈夫…?
みんな恋愛にうつつを抜かしすぎじゃない?ライフステージを真剣に考えるってそういうものなのか?
友達が純粋にこんな恋バナしてきたら、無意識にマウント取られてるようでイラっとするな〜。
あと、もっと社会や芸術に関する知識があればイメージ湧いたはずだけど。わたしはエリートではないので。
そして、文体が単調なのは良い面もあるけど、つまらない恋愛話が続くところは、とても長く感じた。
Posted by ブクログ
前半の半分くらいはただの恋愛小説?あまり面白くないのかなと思っていたが、三谷が洋子にメールを送ってからはストーリーが加速して一気に読み終えた。有名な作品で評価も高く期待して読んだが、恋愛系の話はやはり何か物足りなく感じてしまったため評価は星3つ。
Posted by ブクログ
ストーリーの面白さと著者の練り上げられた文章に惹き込まれ、一気に読み切った。音楽家と国際ジャーナリストの恋という題材が、作品に知性と美しさを添えているように思う。当時の時事問題が巧みに織り込まれている点も興味深く、最後までドラマチックだった。なかでも「あの池の辺り」で描かれるラストシーンは特に心に残った。
感想
正直スッキリしない終わり方でした。
ご想像におまかせします的なのはよくある手法ですが、この作品で?と
思ってしまいました。
登場人物達の精神状態が不安定すぎて、私のように想像力が貧困な人間には
「その後」を想像するのは難しいです。
でも2人の「愛」については、とても共感しました。
あんなに深く人を愛し愛されたい!片思い中の身には羨ましい限りです(笑)
作品に流れる空気感はとても好みです。
一定した静かさと、ロウソクの明かりの中にいる感じがしました。
「実話を元に」とのこともあり、リアルな人間性も感じました。
読後スッキリしなかったのが残念です。