あらすじ
東京下町の救命救急センター。運ばれてくるのは、酔っぱらい、自殺未遂、クモ膜下出血、交通事故などで生死の際の患者たち――。最先端の医療現場では、救命だけが仕事ではない。助かる見込みのない患者を、いかにその人らしく安らかに逝かせてあげるか、それもセンターの医者の役割なのだ。危機に瀕した患者をめぐる医療の建前と現実を知り尽くした医者が描く、緊迫のヒューマン・ドキュメント。
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Posted by ブクログ
予習無しで多様な重症患者が運び込まれ、
その場で即判断を下していく迫力を感じた。
自分の判断は正しかったか
ーそれは治療そのものだけではなく、治療をやめる判断も含むー
それを問い続けなくてはならず、
人の生き死にを左右する究極の判断には
常にわかりやすい正解があるわけでもなく、
人によっては考えることをやめてしまう。
自分がその立場になったら、
重い問いを抱えていられず
同じく考えることをやめてしまう可能性大だ。
すっきりした答えは無く、
患者にとって、遺される家族にとって
自分の判断が正しかったかどうかを自問し続ける。
この本から感じた迫力は、
その問いを引き受ける医師の迫力でもある。
我が子の亡骸に声を限りに呼びかけ続ける母親に
その子の死亡宣告を決然と行う場面には涙が出た。
Posted by ブクログ
まず、注意してほしいのは、この本がちょっと古いということ。
2004年を古いとは言わないかもしれないが、
作中の話題にタイムラグがあることを忘れてはいけない。
医師から見た救命センターの現実をとても分かりやすく記録した一冊。
血なまぐさい現場と雰囲気がよく描かれていて、
何かない限りお世話になることのない(ならないのが一番いい)救命センターをよく知ることができる。
この本ではいろんな患者や家族が出てくる。
酒を飲むのをやめられず、肝硬変になって運ばれてくるおっさん、2人乗りでバイクに乗り、暴走して運ばれてくる中学生、植物状態で「かかりつけ」となっている物言わぬ患者……。
それらはすべて救命センターではよくある風景だ。
私たちもいつ彼らと同じ立場になるか分からない。
いろいろと難しい言葉を並べようとしてみたが、どれもなんだか薄っぺらい。
何の知識もない今の私に出来ることは、こうやってレビューを書いているその瞬間も、どこかで誰かの命を救うために奮闘している医師たちがいるということを忘れないこと。
そして、もし彼らにお世話になることがあったなら、尽力してくれる彼らに感謝することだと思う。
願わくば、昼夜のない救命センターの労働環境が少しでも良くなりますように。
医療を考えるなら読んで損しない一冊。