あらすじ
母親の目の前でマンションの12階から飛び降り、心肺停止状態で搬送されてきた26歳の女性。足の踏み場もないようなゴミ屋敷から瀕死の状態で運び出された50代の男性。仏壇のロウソクの火が服に燃え移り、重症のやけどを負った82歳の女性……。重症重篤な救急患者を24時間態勢で収容する東京下町の救命センター。個々の病状や事情を踏まえて、どこまで医療介入すべきか、最善を尽くすため悩み続ける医師たち。急増する収容要請、緊迫の新型コロナ対応なども含めて、生命と向き合う救急医療を現役医師が綴った本音ノート。シリーズ累計120万部突破!
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Posted by ブクログ
命を救う最前線の現場の状況が分かる内容です。
作中には医療分野でよく聞く表現が使われていますが、その表現について分かりやすい解説がされているため、医療分野で働いていない方でもイメージが付きやすいかと思います。
また、現場の状況だけでなく現在直面している救命医療の問題に言及しているようにも捉えられます。
患者収容不可の話や高齢者の延命治療など、限りある医療資源をどのように使っていくか・命を救うために行ったことがその後の患者の生活へ与える影響について考えさせられるものです。働いている医療従事者は問題と直面し葛藤しながら、搬送されてくる患者を救おうとしているが伝わってきます。
今一度、医療の現状を知り問題と向き合わなくてはいけないと思いました。
Posted by ブクログ
救命救急センターの医師視点による、救急患者やその救命のための医療に関する物語。救命救急センターでの朝の申し送り風景を切り取った形式で書かれている。
ただ、救急医療と聞いて想像するような、ドラマのような医療現場の描写とは一線を画している。本の紹介文には緊迫の医療現場を描いたなどと書かれているけれど、ちょっと違う印象を受ける。脱力系というか、ある種の諦観というか。タイトルに「それは死体!?」とか「それは無駄!?」とかが並ぶのが象徴的。
とはいえもちろん、やる気のない医者であるとか、そういったことではない。むしろ救命の現場で奮闘してきたからこそのリアルな視点なのだろうと思う。救急医療とは対極にあると考えがちな、緩和ケアとか終末期医療の視点が込められている。それは今でこそ珍しくもないのかもしれないが、著者は最初の著作から一貫してそういう視点を持って書かれているように思われる。
新型コロナや、災害医療チームDMATのことも取り上げられている。
個人的に印象的だったのは、第三話で、頚髄損傷となった患者が人工呼吸を拒否するという話。生きるためには人工呼吸が必要なので、医療としては人工呼吸器の装着を進めるというのが”正解”だし、本書で描かれている医師たちもそのように進めていくのだけれど…。果たして何が正しいのか、救命することが本当に正義なのか、といったような葛藤が垣間見える。
Posted by ブクログ
救急救命センターの部長さんが書くブログの書籍化だそうです。カンファレンスの様子だけなので、治療中の様子を描いたものではないですが、運び込まれた患者さんの病状や症状や関連する体・脳の動きなど詳細かつ分かりやすく書いてあるので、現場は大変だったんだろーなーというのが伝わってきます。救急救命士さんとお医者さんの考え方の違いなんかも興味深かったです。命を救うという点では同じかもしれないけれど、救急車を呼ぶ側的には、救急救命士さんの考え方の方が受け入れやすいかな。
人間の体がいかに奇跡の産物であるか、思い知らされたのはよかったけれど、傷の説明とかが丁寧すぎて、ちょっと貧血起きた…(内臓系苦手)
とはいえ、24時間365日動き続けるこの体、ちゃんと大事にしないと、いかんなぁと痛感させられた本でした。
Posted by ブクログ
人の命の在り方は人それぞれであって、また、救急に運ばれてくる理由もそれぞれ。
医療に従事する者として“命を救う”ことによって救われる者もいる一方で救命を望まない者もいる。その全責任も負っている方々には改めて感謝しなければならない。
Posted by ブクログ
救急救命の症例を翌朝のカンファレンスで報告し、部長ドクターがぼやくという型で軽妙に続く。症例と言っても特異なものという訳ではなく、むしろ家庭環境や発見時の状況等が語られ色々面白かった。遡ってシリーズを読もうと思う
Posted by ブクログ
救命センターの最前線の医師同士の会話をメインに切迫感を感じられる文体。ノンフィクションならではの、医療の裏を知ることがでる。
人間という生き物の弱さと尊さを感じつつも、衰弱していくこと、死んでいくこともまた自然なことであると、我々一般人も受け入れながら病気に対して冷静になることが結局は身を助けるのだと思う。
Posted by ブクログ
『救命センターからの手紙』で、日本エッセイストクラブ賞を受賞した著者6冊目のエッセイ。
彼が勤める下町の救命センターで、カンファレンスの時に取り上げた様々な事象をリアルに、ときには軽妙に(もちろんそれぞれの出来事は命と向き合う深刻な医療行為であるが)綴られている。
緊迫した医療や医師たちの悩みが、現役の医師である著者ならではの視点で綴られており、医療現場を理解する一助となる1冊。