あらすじ
全身にみなぎる憤怒と威厳、レーピンの「皇女ソフィア」――凄絶な姉弟喧嘩の末に、権力を握ったのは? 甘やかな香りが漂う、ボッティチェリの最高傑作、「ヴィーナスの誕生」――美の背後に秘められた、血なまぐさい出生の物語とは? 自らを死神になぞらえた、シーレの「死と乙女」――実際に画家とモデルを襲ったその後の運命は? 名画に秘められた人間心理の深層を鋭く読み解く物語シリーズ第2弾。ベラスケス「フェリペ・プロスペロ王子」、ミケランジェロ「聖家族」、ダ・ヴィンチ「聖アンナと聖母子」などなど――。名画に秘められた恐怖を読み解く「怖い絵」シリーズ、待望のオールカラー電子書籍化!
電子書籍版の絵画はすべてオールカラーで収録されています。
本書には、紙版に収録されていた「作品8 セガンティーニ 悪しき母たち」の章と、以下の2点の絵は収録されておりません。
岸田劉生「麗子像 一九二一」
パブロ・ピカソ「朝鮮の虐殺」
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
戦争、争いを人間はいつになってもやめられない。
それは、今も昔も変わらない。
ただ、当時の人間はそれを口にしてはいけなかった。
画家だけが(ギリギリ危ないところで)表現できた。
画家だけが、当時の風景を残すことができた。
証人のようなものだ。
美しく、若い少女が処刑されるところをみたいと願う人々のために少女が犠牲になったこと…
戦争で追い詰められ銃で撃たれた人々…
美しい声のためにカストラート(去勢)された男性歌手…
貴族たちのドロドロとした権力争いに巻き込まれ殺害された兵士たち…
飲み物が高騰しミルクよりも安いからと子供にジンを飲ませ
自らもジンに酔いつぶれ狂態をさらす貧民街の大人たち…
この作品では著者の解釈ありきの作品だけどそれでいい。
絵画の見方は人それぞれで答えなどない。
答えはたぶん、今はなき画家たちに聞くしかないだろう。
でも、そんなことは不可能…だから、読み手は考えなければならない。
画家が世界に怒り、苦しみ、不条理を感じた
その思いをキャンバスに思う様ぶつけたその絵画を見て
画家が後世に遺そうとしたその感情を
読み手は解釈しなければいけない。
人の争い、醜さ、残酷さ全てを受け入れるために思考を止めてはいけないのだ。
たぶん、それが過去を偲び、未来を変える
一つの方法でもあると私は思う。
なかなか今回の怖い絵は重かった。
表題作である「死と乙女」という作品も
争いとは関係はないがなかなか怖い…というよりも「かわいそう」な作品。
著者の読み解く絵の解釈は鋭いものがあるので
読んでいて勉強になるし
自分も独自の解釈を考えたくなる。
良い意味でも悪い意味でも好奇心を刺激される作品。
時代を通した色んな怖さを知ることができた一冊。
Posted by ブクログ
相変わらずの面白さで2日足らずで読み終わりました。
一番印象に残ったのは、ヨルダーンスの『豆の王様』。現代を生きる私たちはハレとケの境目が曖昧になっている、という著者の見解を読んでからこの絵を見ると、確かにここまで我を忘れて酒を飲むこともないな、と感じます。
表紙を飾るレーピンの『皇女ソフィア』もインパクトが大きい。まさかここまで壮絶な兄弟喧嘩が過去にあったなんて、と驚きました。
解説で村上さんも書かれてましたが、本当に一作品一作品、映画を見ているような気持ちになります。絵が書かれた背景を知れば知るほど怖くなる。このシリーズ、もっと読みたいです。
Posted by ブクログ
レオナルド・ダ・ヴィンチの絵はミステリーを見ているみたいで、パーツが符号していく瞬間に快感を覚えずにはいられない。まだ色々な謎や秘密が隠されているのではないかと前のめりになってしまう魅力がある。
アンソールの絵にはグッとくるものがある。描かれた仮面には表情がある。その仮面こそ人間らしいのかもしれない。敵意と自己陶酔と自虐性が複雑に入れ替わる感情があらわされた作品のように感じる。
ゴヤの絵は、見て感じた思いを上手く言葉にできない。実物を見たら離れられなくなるかもしれない。
この本を読んでいくうちに、絵画の楽しみ方の、自分なりのコツが分かってきた。時折、画家の意図に射抜かれるような感覚にハッとする。
知らなかった歴史の裏側を身近に感じさせてくれるような知識が随所に埋め込まれている。人間の一生は思ったより劇的かもしれない。
Posted by ブクログ
中野京子氏の『怖い絵』シリーズ2冊目。
今作も歴史や背景を解説してくれる1冊。
どれも良かったけど、一番のお気に入りは伝レーニ『ベアトリーチェ・チェンチ』かな。
国も時代も超えて、目を奪われる美しさ。
いや、これは僕がオタクだからかもしれない…。
Posted by ブクログ
シリーズ3作目。
2作目を読み終えた時に今までどちらかと言うと興味がなかった絵画に対し、少し自分の中で気持ちの変化を感じ始めたと記しました。
まだ美術館に足は運べてないですが、アート作品に触れてみたくて、予定を入れました。
これって私の中では大きな変化で、間違いなく本シリーズの影響を少なからず受けた結果だと思います。
会期末が近づいてきたバンクシー展にもこれを機に行ってみよう!
説明
内容紹介
ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」、シーレ「死と乙女」、ベラスケス「フェリペ・プロスペロ王子」、ミケランジェロ「聖家族」――名画に秘められた恐怖を読み解く「怖い絵」シリーズ、待望の文庫化第2弾!
内容(「BOOK」データベースより)
全身にみなぎる憤怒と威厳、「皇女ソフィア」―凄絶な姉弟喧嘩の末に、権力を握ったのは?甘やかな香りが漂う、ボッティチェリの最高傑作、「ヴィーナスの誕生」―美の背後に秘められた、血なまぐさい出生の物語とは?自らを死神になぞらえた、「死と乙女」―実際に画家とモデルを襲ったその後の運命は?名画に秘められた人間心理の深層を鋭く読み解く22の物語。文庫書き下ろしも収録したシリーズ第2弾。
著者について
作家・ドイツ文学者。早稲田大学講師。著書に「危険な世界史」シリーズ、『歴史が語る 恋の嵐』『危険な世界史 運命の女篇』『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』『「怖い絵」で人間を読む』などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中野/京子
作家・ドイツ文学者。早稲田大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)