あらすじ
帰りの遅い父を待ちながら優しく甘い夢を紡ぐ孤独な少年の内面を、ロマネスクな筆致で綴る「夢みる少年の昼と夜」。不可思議な死をとげた兄の秘密が、やがて自己の運命にもつながっていると知った若い女性の哀れ深い生を描いた「秋の嘆き」。ほかに「沼」「風景」「幻影」「一時間の航海」「鏡の中の少女」「死後」「世界の終り」「死神の馭者」「鬼」など、意識の底の彷徨を恐ろしいほどに凝視し、虚構の世界にみごとに燃焼させた珠玉の短編全11編を収録する。
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Posted by ブクログ
不安定な少年、少女期の果てしない空想(妄想)。思春期を過ぎ、変化に乗り切れなかった女性の妄想に壊れていく姿、妄想に巻き込まれていく男性。常に死やおしまいの予感の漂う中、強い感受性によりそれを綺麗に包み隠そうとしつつ、読み手を導いていく印象でした。戦争と言う大きな傷、変化を踏まえたこその作品のような気がします。それゆえ抱える重さもひとしおです。
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ぶんがくーなアイテム(鏡とか)がたくさんちりばめられた、幻想的で素敵な短編集なんですが、何で引用文がわざわざそこなのっていうとこ登録しちゃったよ。
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福永武彦の美しい短編集。やはり表題の「夢みる少年の昼と夜」は傑作だと思います。この子供の世界の不安定であやしい感覚、誰でも持っているものなのですね。美しく妖しい絵物語みたいなお話です。
クックウ、と一つ。夜の女王があでやかに笑う。
クックウ、と二つ。直ちゃんが顕微鏡を持った手で行く先を示す。
クックウ、と三つ……。
Posted by ブクログ
短編11編を収録しています。
表題作の「夢みる少年の昼と夜」は、ギリシア神話に興味を示す少年を主人公にした物語で、感受性の強い少年の不安定な心をていねいにえがきとろうとしています。
おなじく強い印象をのこす少年が登場する「死者の馭者」や、画家の父をもつ少女を主人公とする「鏡の中の少女」は、すこし神秘的な内容を含んでおり、ロマン派の小説の影響が感じられます。
一方「鬼」は、『今昔物語』から想を得てつくられた作品です。人間の心のありようを冷徹に見つめようとする著者のまなざしが印象的です。
兄の自殺した理由を知る女性をえがいた「秋の嘆き」や、精神に異常をきたす医者の妻をえがいた「世界の終り」は、題材にどうしても古さを感じてしまいますが、整った短編小説にしあげられていて、著者のストーリー・テラーとしての卓越した手腕にあらためて目を開かされました。
Posted by ブクログ
草の花の美しさに中てられて読み始めたので、長編と短編の違いで少し戸惑った。しかし読み進めるうちに、短編は短編で瞬間の風景を切り取る力に魅せられた。幻想の中に住む人たちについての短編集といったところだろうか。「鏡の中の少女」「死後」「世界の終り」のような夢遊病に近い感覚を持つ小説は夜に読みたい。
Posted by ブクログ
再々読……くらいでしょうか、記憶も曖昧ですが。
1954-1959年に書かれた短編集。
長~いブランクを経て読み返すことの醍醐味を再確認。
その昔、気に入っていたお話が、
今、この年で(笑)読んでみると、
どうにも感傷的過ぎる気がして評価が低くなったり、
逆に、かつて今イチとか思った作品が、
すこぶる面白かったりするというアレです。
Posted by ブクログ
短編集。
どれも共通して昔の児童文学のような独特の古めかしさを持った文体。
有島武男みたいに、
話の内容の幼さと文章の媚びない感じがちぐはぐでいい。
表題作は長野まゆみの小説のような、
キラキラした単語の羅列が美しい。
空想少年はいつも素敵。