あらすじ
「あたしの家、幸せにしてくれる?」お稲荷さんがあるために「こんこんさま」と呼ばれる屋敷に、末娘が連れてきた占い師。あやしい闖入者により、ばらばらだった家族が一転して――家族再生のものがたり。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
家族再生のささやかなものがたり、とあらすじにあるのだが、ほんの少し語弊があるように感じる。
一家を牛耳っていたと言っても過言ではない祖母の石。
その陰で生きてきた存在感のない祖父、甲子。
大きな事業を興しては失敗し、石の遺産を食い潰してゆく父の主計。
美しいだけが取り柄で、誰が父か分からない次女を産んだ母、都。
父の不甲斐なさに幻滅し、従順だった娘時代から水商売へと転向する長女、はな。
誰からも、その出生に目を逸らされ、器用に隠れることだけを学んだ次女、さち。
歪すぎる家族関係の中で、それが生々しさの一歩上へ昇華しているのは、「こんこんさま」という不思議な守り神のいる古いお屋敷でのお話、という設定からだろう。
非現実的であることと、現実を手放してしまうことは、別である。
これは非現実的な空間の中で、現実を手放してしまった家族の話なのだと思う。
だから、現実を手放した家族が、現実を取り戻すお話だと読んだ。それがイコール再生であるかは、疑問としたい。
ただ、そう考えると、この設定の妙がものすごく面白くなる。
作者が選ぶ言葉の一つ一つもしっかりとその妙を生かしている。
雑草生い茂る真っ暗闇の中で、「こんこんさま」を救い出すクライマックスシーンは、想像するとかなり恐ろしい場面だ。
だが、各々が自身に向けて救いを求める必死さもよく現れていて、あたたかみを持って読める。
初めて中脇初枝を読んだが、面白かった。
他の作品にも手を出してみようと思う。