あらすじ
その誇りに、囚われるな――。鉄砲百人組の老武士、山岡晋平。伊賀衆ながら伊賀を知らず、門番の御役目とサツキ栽培で活計(たつき)を立てていた。だがある日、伊賀同心の友が殺される。大金を得たばかりという友の死の謎を探る中、晋平は裏の隠密御用、伊賀衆再興の企て、そして大火の気配を嗅ぎ取った。老いてこそ怯まず、一刀流の俊傑が江戸に澱む闇を斬る。『流水浮木―最後の太刀―』改題。
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Posted by ブクログ
2013年『流水浮木 最後の太刀』の改題文庫化
家康の危地脱出に手を貸し公儀隠密となった伊賀者は、吉宗が既存の隠密を信用しなかったため、30俵の扶持で江戸城の門番となっており、百人町の大久保組の者は内職でサツキを育てていた。
剣の使い手だが山歩きをしてサツキの株を探して栽培することに心血を注いで老境に到った山岡晋平にとって「伊賀者」であることはほとんど意味をなしていなかった。幼い頃から一緒だった3人が「伊賀者」であろうとアイデンティティを求めることで次々と命を落とす。
晋平は最初の一人の死から、私的な隠密稼ぎが横行している事を知り、残る二人も頼まれ仕事から放火事件を未遂に終わらせたもののそのために命を落としてしまい、事件の真相を探り始める。娘婿が実は本当の公儀隠密の家柄で、探ろうとしてくる者立ちの目くらましの役を負っていて、協力を受ける。(ちょっと都合が良すぎ。私は一番怪しくないのが犯人かと最初娘婿を疑った。)
時流に逆らってひたすら伊賀者であろうと私的に訓練していた親に育てられた子が成人し、軽業師に身をやつして晋平に伊賀者の再興を求めてくるという時代錯誤は、全然話の本筋ではなく肩透かし。
解説を葉室麟が書いていて、久しぶりに文章に触れて嬉しかった。