【感想・ネタバレ】乱反射のレビュー

あらすじ

幼い命を死に追いやった、裁けぬ殺人とは? 街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、職務怠慢なアルバイト医、救急外来の常習者、飼犬の糞を放置する定年退職者……小市民たちのエゴイズムが交錯した果てに、悲劇は起こる。残された新聞記者の父親が辿り着いた真相は、法では裁けない「罪」の連鎖だった!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

久々の読書に初めて読む作家をチョイス。
ストーリーは我が子を失った加山がその原因を追求していくという内容だが、かなり残酷である。
事実関係だけを見ればたまたま診断を怠った街路樹が強風で倒れ、運悪く息子が下敷きになってしまったという表現が正しいはずである。

しかし、なぜ街路樹は診断されなかったか、なぜすぐに緊急外来で処置が施されなかったか、なぜ、なぜ…を全て追っていくと多くの人間の「まあ、これくらいなら」が詰まっていて、それぞれの人物が思い思いに「責任は私にはない」という主張がやるせなさを増幅させる。

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2024年05月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

かなり前に読んだものの内容を忘れてしまって再読。
読み終わってからしばらくぼーっとしてしまうくらいの余韻。
大勢のちょっとしたモラル違反が最終的には2歳の男の子の命を奪う結果になるなんて。
非常に細かくよく練られたストーリー。

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2024年01月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

やー、しんど。きついって…
事故は言ってしまえば全て運命の歯車が狂った結果のものだよな…。あと1分、遅く家を出ていたら、忘れ物を取りになんて行かなければ、この道を通らなければ、あの人と話していなければ、雨なんて降っていなければ、、、みたいな。
本著の事故も、言ってしまえば最悪の偶然。ただただ、不運。でも少しずつ本当に嫌な人たち…
自分は悪くないと思い込み、罪の意識から逃れることができる人は強か。そうはなりたくないけれど…
被害者には謝らなかったけど、罪の意識に苛まれて生きていくであろう車乗り捨て女はまだ救いがある人間かな…。
終わり方、夫婦の今後に少しだけ希望が見えてよかった。


そういえば、似たような境遇のテレビドラマがあったような気がする。仲間由紀恵出てるやつ。

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2025年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【乱反射】とは
表面が滑らかでない物体に光線が当たって、いろいろな方向へ反射すること。(コトバンクより)

ダ・ヴィンチ11月号で俳優の赤楚衛二さんが紹介していたのをキッカケに読み始めました。

*****

2歳の子どもが不運な事故でなくなります。新聞記者である父親が原因を探っていくと、さまざまな人たちの"些細な自分勝手"が乱反射するように色々な方向へ影響しあって、息子が死に追いやられたことに気づいていくのです。

違法とまでは言えない"些細な自分勝手"。息子の死の遠因となった人々は自分は悪くないと主張し謝ろうとはしません。

しかし、主人公は自分にもその人たちと同じような側面があったことに気づき、息子を死なせたのは自分だったのではないかと後悔するのです。

*****

主人公が後悔する場面、彼は自宅のゴミを高速道路のパーキングエリアに捨てたことを思い出して後悔するのですが、私はもっともっと後悔して欲しかったことがありました。

それは、自分の父親の見舞いを、乗り気ではなかった妻に強要したことです。妻が息子を連れて病院に行かなければ、この事故には巻き込まれずに済んだはずです。

「親の面倒を見るのは基本的に実子である」という考えの私からすれば、主人公の"些細な自分勝手"はソコだと思うのです。主人公にはそのことを一番悔やんで欲しかった。

なので★は4つです。

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2025年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

加山聡
新聞記者。心配性。

加山光恵
聡の妻。

健太
聡の息子。二歳。

田丸ハナ
五十代。主婦。昔から困ってる人を見捨てておけない性分。夫は外国人でもその名を知る大企業に勤めている。ボランティア活動に精を出している。道路の拡幅工事で街路樹が伐採されると聞き、反対運動をしようと考える。

阿部昌
ハナの近所に住む主婦。自宅の一軒家の前に、地上十五階建てのマンションが建つ計画がある。
建設差し止めを求める話し合いの場を設けて欲しいと求めている。

三隅幸造
六十代後半。定年退職後、ただ寝ることだけが楽しみの老人に過ぎないことに気づき愕然とする。犬を連れている女性を見かけ、自分も犬を飼うことにする。腰痛で犬のフンの始末するために腰を屈めることが辛く、街路樹の根元に放置してしまう。

久米川治昭
内科医師。三つの病院でアルバイトの掛け持ちをしている。

羽鳥
四十代の女性看護師。久米川の働く病院に勤めて二十年近くになるベテラン。

安西寛
十九歳。大学生。虚弱体質。混雑する待合室で別の病気がうつるのが嫌で、夜間救急を利用する。

佐藤和代
阿部昌子の隣人。同じくマンション建設に反対している。

小林麟太郎
市役所道路管理課職員。二十五歳。道路拡幅に伴う街路樹伐採の事前調査中、大量の犬のフンを片付ける羽目になる。

菊江
三隅幸造の妻。

加山の父

加山の母

上村
道路管理課職員。麟太郎の上司。

雪代可奈
安西寛と同じ大学の法学部の学生。なかなかお目にかかれないレベルのかわいい女性。欠席した授業のノートを写させて欲しいと安西に頼む。深夜にひどい風邪をひき、安西に病院を紹介してもらう。病院で待っていた安西の接し方に嫌悪感を覚える。

田丸佐緒里
ハナの娘。二十四歳。誰にでもできる仕事しかさせて貰えず、男性と同じ立場で仕事をしたいとの考えを恋人に否定され、縁故採用された会社を1年あまりで辞める決意をする。母のような夫に尽くすだけの人生は真っ平だと思っている。

ヒロ
佐緒里の付き合っている相手。

河島
拡幅計画がある道路沿いに住まいを持つ、セットバックに応じないただひとりの住民。計画が持ち上がった際の担当者の態度に未だに腹を立てていて、市役所の人間と聞いただけで塩を撒きかねないような頑なな老人。道路管理課では代々語り継がれるほどの生きた伝説とかした頑固じじい。心臓発作で急死し、佐藤和代が看取る。

榎田克子
軽自動車でさえ上手く車庫入れができない。妹の希望により買い換えられたSUVでは尚更上手くできず苛立つ。

榎田麗美
克子の妹。

トモナガコウキ
麗美が連れてきた男。

ゴミ屋敷に住む女性

海老沢
デスク。

足達道洋
石橋造園土木勤務。樹木医の資格を持っている。三十四歳。息子の誕生をきっかけに潔癖症になる。

足達泰代
道洋の妻。病的なまでの潔癖症になった夫を同情していたが、夫婦の営みの前に体を除菌シートで拭かれ、腹を立て、傷つき、以来夫婦の間にはわだかまりができた。

粕谷静江
ハナが通い始めた英会話教室で親しくなった年配の女性。ハナから道路拡幅に伴う街路樹伐採の話を聞く。市議会議員を夫に持つ知人に話をする機会を設け、反対運動の中心的人物になっていく。

宮崎佳美
静江の友人。夫が市議会議員。

石橋
石橋造園土木の社長。

佐々倉
警察官。

医局長

可奈の女友達

女子高生

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2025年12月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ひとつひとつは些細なものでも積み重なると時には人を殺すこともある「法では裁けないモラル違反」に警鐘を鳴らした作品。
600ページの長編だが半分を過ぎても事件が発生しないスローペースで、出てくるのが短絡的で自己中な行動をする登場人物ばかりのため読んでいてフラストレーションが溜まり、後味もあまり良くはない。
ラスト20ページの勢いはよく、それまで子が死んだ要因となった他者の行動を糾弾していたが、実は自分も同じようなモラル違反をしていたと気づき、冒頭の主人公の懺悔に繋がるという構成は良い。(冒頭で提示しているため驚きはしない)
ただ社会派の作品であり、モラル違反に対する警鐘を鳴らした内容であるにも関わらず所々でリアリティを損なっていたり、善悪の線引きが曖昧な部分があり、そこがどうしても気なってしまった。
また、作者的には狙って書いた訳ではないかもしれないが、後半で加山が子どもを亡くした要因をひとつずつ見つけ出し糾弾していくパートは、私刑を行う人が目立つようになっている今の時代に読むと、作品発表当時とはまた違った感想を持つのではないかと感じた。

以下、具体的に気になったところ
・医師の久米川が患者である安西の個人情報を外部の人間に漏らしている(モラル違反どころか情報流出なのにお咎めなし)
・榎田克子が車を放置してしまった原因のひとつは家族が麗美を甘やかし意見を通し続けてしまったことであり、麗美や両親の理不尽な言動を描写しているにも関わらず麗美や両親にはお咎めなし
・p345で小林が古い糞以外は回収したとあるのに、p351では足達が木の幹に排泄されたばかりの新しい糞があると視認しており矛盾が生じている
・本来生活環境課で受ける苦情電話を受付の判断で、担当でもない道路管理課が受け対応までさせられている(普通は該当部署の職員が戻り次第対応を依頼する運用が多いと思われるため、生活環境課がその日に対応できず、そのうち木が倒れてしまったくらいで収めた方がリアリティを保てる)

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2024年05月13日

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