【感想・ネタバレ】古代史の謎は「鉄」で解ける 前方後円墳や「倭国大乱」の実像のレビュー

あらすじ

船をつくるための鉄斧や武器となる刀の材料になるなど、鉄は古来きわめて重要な資源であった。紀元前から倭人は鉄を朝鮮半島から輸入していたが、1~2世紀に『後漢書』などが伝える「倭国大乱」が起こる。著者はこれを、高句麗の南下によって起こった「鉄の爆発」を伴う社会変革だと考える。それ以降、日本に遊牧民の文化である「光る塚」がつくられ、「鉄の集落」が全国で形成された。そして、都市国家連合である「倭」は朝鮮半島の海上権益を巡り、四世紀末から高句麗と戦うことになる。騎馬民族高句麗は非常に強く倭は軍事的に敗北するも、伽耶国の鉄工業が河内に導入され、ヤマトの工業力は高められた。一方、前方後円墳が大量に築造されるが、あの不思議な形は鉄の交易に関わる秀逸なアイデアの賜であった――。船と港の専門家が、鉄の交易に着目し日本の原像を探る。ベストセラー『日本史の謎は「地形」で解ける』著者、竹村公太郎氏も推薦!

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Posted by ブクログ

昔、古田武彦の本を読んで衝撃を受けたが、この本も衝撃的だった。鉄器の副葬品や船の発達状況から物証的に推理し、倭の時代は武装した兵を朝鮮半島に輸送するほど鉄器も舟も発達しておらず、丸木舟で人間のみ輸送され、武器や装備を支給され、傭兵として、騎馬民族に対峙したとイメージできた。また海路からの視点が面白かった。一部の推理は同意できなかったが、しばらく古代史にはまりそう。

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2018年01月12日

Posted by ブクログ

古代の認識を覆す試み。ヤマト中心主義、あらゆる遺跡を祭祀のためのものだったと片付ける日本の歴史研究に対して真っ正面から挑戦している。これまでの歴史認識では、日本書紀等の文献から大きな政治の物語のみが取り出され、倭人が航海民族として日々どのような生活をしていたのかという、目の前の日常が無視され続けていたことを気づかせてくれる。朝鮮からは渡来人以外にも多くの人々が日本列島に落ち延び、独自の文化を形成して日本文化の素地を作った。古墳はただ豪族の墓という機能ではなく、日常的に寝食をする公的な盛り場や商業施設のようなものであった、などあくまで航海民族の視点から、鉄の動向を軸に研究している。古代に関して新たな視座を提示している。

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2016年09月22日

Posted by ブクログ

従来の歴史学は、記紀を中心に据え、神学論争をしてきたようなきらいがある。
長野正孝氏は、船と港の専門家であり、世界史レベルで、人間の活動を歴史的に検証する態度である。
この本は、中国、朝鮮、そして古代日本における鉄の交易を歴史的に分析しながら従来の所謂通説を覆している。
エジプトのピラミッドが、雨期に農作業ができない民の究極の公共事業であったというのが通説になっている。
人間、とにかく、まずきちんと食べていける状況を作ってくれるリーダーに従っていくのが常識だ。
古墳もただ単なる墳墓ではなく、古代交易における「おもてなしの場」であったということ。
出雲の巨木遺跡、それは、船舶の望楼であった。
何でもかんでも祭祀場にしてしまう、安直な歴史学者。
なかなか、痛快な読み物でした(笑)。

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2016年01月10日

Posted by ブクログ

古代史を解くカギとして、鉄を持ち出して色々と推理する一冊。

在野の一介の学者である著者の分析が正しいか、自分にはわからないものの、真新しい見方を知ることができた。

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2016年09月19日

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