【感想・ネタバレ】坂の途中の家のレビュー

あらすじ

最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない。虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていく。社会を震撼させた虐待事件と〈家族〉であることの光と闇に迫る心理サスペンス。

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説明できない息苦しさのリアルな描写に圧倒されて、読了後の疲労感に包まれています。笑
角田さんの作品は読むたびにこの気持ちになるって分かってるんですが、やめられない中毒性があるんですよね…。

補欠裁判員に選ばれた一児の母・里沙子は、子供を溺死させてしまった被告の環境に自身を重ねていくようになる。義母や夫から暴力や決定的な言葉の攻撃があったわけではないし、言葉にして説明しようとすると軽い不満や何なら被害妄想に捉えられかねない些細な出来事の数々。でも、相手の放った「そんなつもりではなかったかもしれない」一言や行動が、息苦しさや罪悪感と共に静かに本人の中にだけ、澱のようにたまっていく。
被告に共感を覚え、ボタンを一つ掛け違えれば、彼女は自分だったのではないかという里沙子の恐怖と不安に、まるで里沙子は私なんじゃないかと思うほど感情移入するとともに、無意識の悪意について深く考える作品でした。

とりあえず、電車の中やお店で子供をあやすお母さんに出会ったら絶対優しくしよう。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 日々流れる虐待のニュースを見て、「我が子になぜそんなことができるんだろう…」という浅はかな感想しか持てなかった自分を恥じた。自分が産んだ小さな命を前にして、はなから粗末に扱ってやろうと思う親などほとんどいないのだ。自分だって、我が子に手をあげることがあるかもしれない。それがたまたま死に至らしめるような行為となるかもしれない。そんな風に現実味を帯びて感じさせてくるところに、この小説の恐ろしさがあった。

 視点人物である里沙子は、裁判員に選ばれる。しかも、自分と同じ女児を持つ母親の、幼児虐待事件。母親と折り合いが悪く親に頼らず育児をしている、仕事をやめて専業主婦をしているなど、容疑者と自分の間には共通点が多い。次第に彼女は自分を映し出す鏡となり、今までかかわることを放棄していたものと向き合っていく。

 彼女がこれまでの人生で続けてきた「逃げ」には、自分にも身に覚えがありすぎる。母の喜ぶ言葉を発する癖は、30すぎた今でも消えない。窮屈さの原因を突き止めるのが怖いから。考えないのが楽だったから。

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2022年01月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1.この本を選んだ理由 
新井見枝香さんの本にでてきたので。


2.あらすじ 
2歳の子どもがいる主婦が裁判員制度に選ばれ、同じように幼い子どもを持つ主婦が子どもを殺してしまった事件に関わっていく。
わずか10日間程度の裁判の中で、被告の女性と、自分を重ね合わせていく主婦の里沙子。裁判の中で自分の過去も思い出して、自分も被告と同じ道に進んでしまっているような感覚になっていく。
裁判を通じて、自分を、家族のことを深く考えていく。


3.感想
まず、全く自分とは無縁の話だったので、そういう人間の感想になっています。
ストーリーとしては面白かった。次はどうなっていくんだろうという感じを持ったまま、どんどん話が進んでいく。だけど、気持ちいい感じではなく、イライラする感じが強かったです。

こういう人がいるのはわかるし、多くの虐待事件が起きたり、離婚する家庭が多かったりするので、ありうる話なんでろうとは思います。
にしても、こんな人ばっかり揃うのかよ!と、思ってしまいました。こんな人間どうしで結婚するなよ!とも思ってしまう。もう、読んでてイライラしてきてしまうレベルでした。
もうほんと、登場人物のレベルが低い。陽一郎なんか出されたものを食べるだけで、風呂を追い焚きするボタンも自分で押さない。昭和かよ…!!なんでも、自分でやろうよ。食べたら食器ぐらい洗えよ。という感じで、イライラしてしまうのでした。

私も子育てしてきた人間なので、子育ては予定をたてるとイライラするのはよくわかりますが、それにしても里沙子のレベルは低すぎ。旦那にも怯えすぎ。旦那も義理の母も変なやつでした。男の子二人の母親なんてサバサバして男っぽい人が多いだろうに…。
やっぱり専業主婦になった段階で、イーブンな関係は維持しずらいから、これからの夫婦は、共働きであるべきだなとつくづく思いました。

里沙子も、水穂も、なんで、そこまで人が自分をどう思ってるかに囚われるんだろう。まぁ、でも、承認欲求みたいなもんで、人にどう思われるかを考えてしまうのは、現実的に多いのかな。


4.心に残ったこと
子どもを殺してしまった人間と、自分が重なってしまうなんて、よっぽどだ。


5.登場人物  
 
山咲里沙子
  文香 娘
  陽一郎 夫

山咲祐二 弟
  母
  父

芳賀六実 はがむつみ

安藤水穂
安藤寿士

穂高真琴 寿士の昔の恋人
安田則子 水穂の母

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2022年03月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公に感情移入した方が小説は楽しめるし、味わうことができると思っているが、この本では心が疲れすぎるので少し客観的に読むことを意識したかも。自分がもし、子供を産んでまもない主婦だったら読むのが辛くなったかもしれない。それくらい心理描写がリアルだった。

物語が進むにつれて、水穂にどんどん自分を重ねていく里沙子の主観が主に語られるので、読んでいる自分も水穂と里沙子が曖昧になっていった。

こんなに1人の心理描写を描けるのが信じられないくらい精密で現実味がありすぎた。

自分と性格やフィーリングの違う人物についてここまで深く描ける気がしないので、作者の経験や人格も少し入っているように感じた。これは勘違いの可能性も勿論ある。

角田光代の本をもっと読みたくなったので読む。

☆をひとつ減らしたのは単純に自分の好みはもっとあっさり読める本だから。

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2021年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

乳児を風呂に沈め殺害した母親の裁判員裁判の話。

里沙子の夫の陽一郎のモラハラぶりにイライラしてしまう。娘の文香のわざとかと思うようなイヤイヤ期、里沙子の心中が手に取るように分かり胸がざらつく。
水穂に自らを重ね、今の自分の状況が普通ではないと最後は気付く里沙子に安心した。良い方に進んでいけるといいけれど…。

実際にされた事は言葉で表すと『そんなことで?』と思われる事ばかりだけれど、積み重なって見下されて自信がなくなって。でもどれほど言葉を重ねても伝わらないもどかしさが痛いほど伝わった。
陽一郎は里沙子を愛してるのかな?私にはマウントを取って快感を覚えているようにしか感じないけれど。

とても重く苦しい話で、あまり勧めたいとは思わないので✩3にしたけれど、このなんとも言えない違和感を文章にして伝えてくるのが流石角田光代だな、と思った。

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2025年09月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

裁判員制度に選ばれた専業主婦の里沙子。
3歳の娘を義理の両親に預け、法廷に通う10日間の物語。

事件の内容は幼い我が子を浴槽に落として殺害した事件。
嫌々ながらも裁判員補助として通い始めるが、どんどん事件に引っ張られ、容疑者に自分を重ね合わせていく姿が読んでいてとても息苦しく、たびたび怖さから鳥肌が立ちそうになる。
裁判員制度に参加する前と後で、自分の夫への見方が全く違うものになってしまったところは本当に怖い。

・母乳育児に苦しみ、半ば囚われるものの終わってみたらめちゃめちゃどうでもよかったことに気づく
・育児がうまくいかなかったり子供の発育に心配なことがあると周りにうまく相談できなかったり見栄をはってしまったりして余計に1人落ち込む
・優しい言葉でも暗に貶められることを言われていたことに気がつく
・自分がとても頭が悪い人に思え、怖くて意見が言えなくなったり自分の発言に自信がなくなる
とか、あーわかる!と思うことも多々。

里沙子にとって嫌な思い出の数々がどんどん芋蔓式に思い出されていくところはとてもしんどかった。

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2024年03月24日

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