あらすじ
名著『日本語練習帳』の著者で国語学の巨人・大野晋は、その研究に八十八年の人生を捧げた。東京下町に生まれ、小学校の時に父親から『広辞林』と『字源』を与えられ、大戦下、一高から東京帝国大学に学ぶ。還暦を過ぎてから発表した「日本語の起源はタミル語」であるという研究は、学界論争を巻き起こす。司馬遼太郎をして「抜き身の刀」と言わしめた大野晋の波瀾万丈の生涯を描いた傑作評伝。
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Posted by ブクログ
たとえ童児の言っていることでも、真実であれば信ずるべきである。
まず、ものごとを細かく観察すること。観察した上で正確に言葉で表現すること。
学問に対する姿勢と日本語に向かう姿勢。今の先生に伝えてたい。言葉は変わるとはいえ、基本を理解した上で、日本語を使っていきたい。
Posted by ブクログ
とても面白かったです。
私は国語教育に関わる仕事をしています。
そのため大野さんのことくらい知っておこうと軽い気持ちで読み始めたのですが、大野さんの人柄や人生そのものが面白い。それに日本語がこれまでなかなかに危ない橋を渡ってきていたとは。知識で知っているのとは全く印象が違っていて驚きました。
国語教育の重要性についてもお話があり、大野さんが日本語には論理性があると断言しているのがとても嬉しかった。
過去に自分もほんの少し言語学を研究していましたが、大野さんの徹底した用例採取と古典知識から照らし合わせて現在の日本語を研究する姿勢には程遠い。
改めて文法や日本語学を学びなおしたいと、学問を極めることの楽しさを教えてもらえます。
タミル語に関してこれほどバッシングを食らっていたとは。こんなふうにハッキリ物が言えるのは、徹底して追究し、学問を極めようとしてきたからなのでしょうか。
Posted by ブクログ
亡くなってもう、十年になる。
改めてすごい人だったんだと思う。
研究のしかたの徹底ぶり。
橋本新吉仕込みの、確証の持てないことは口にしないという姿勢。
教員としては、鬼教師。
学会とも、マスコミとも、意見が違えば闘う。
一方で、下町育ちの、歯切れよく話す、おしゃれなおじさん。
いろいろな面が丁寧に取り上げられていて、面白かった。
伊藤忠兵衛(伊藤忠商事の創業者)のような、懐の深い財界人も、昔はいたのね。
それから、やはりいつか岩波の古語辞典を手に入れねば、とも思う。
大野晋さんの本のお世話になるようになって、それほど久しくない。
日本語学のセンセが、「あの人も、タミル語とか言い出さなきゃ、すごい人なのに」なんて言っていたのを聞いたことがある。
それがその後、ずっと自分の中に残っていた。
タミル語と日本語の関係、その後どう考えられているのだろうか。