あらすじ
廃品回収のアルバイト中に見つけた樋口一葉の手になる一枚の反故紙。小説らしき断簡の前後を求めて上諏訪へ向かった真一は、妖しの美女麻芸に出会う。目が合った瞬間、どこかでお会いしましたねと口にした真一が奇妙な既視感に戸惑っていると、麻芸は世にも不思議なことを言う。わたしたちは結ばれることなく死んでいった恋人たちの生まれかわりよ。今度こそ幸せになりましょう。西原牧湖だった過去のわたしは、平吹貢一郎だったあなたを殺してしまったの……。前世をたどる真一と麻芸が解き明かしていく秘められた事実とは。名匠が幻想味あふれる物語に仕掛けた本格ミステリの罠。/解説=松浦正人
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夢見心地とはこのことだろう
輪廻転生によって、運命の再会を果たした真一と麻芸。前世から現世、そして来世へと時は巡っていきます。波乱の展開を経て、様相が大きく変わりますが、夢から醒めることはありません。再生の先に待つのは、奇跡か、それとも悲劇かーー
氏の才が集結した幻想ミステリの極致。
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ミステリの面白さを味わえる作品です。
輪廻転生というのを背景に細かい伏線を貼りながら驚くほど丁寧に回収するさまはさすが。
3007冊
今年235冊目
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導入の樋口一葉の遺稿というフックにまずグッときた。転生についてのタネ明かし、そして思想にとり憑かれたあの登場人物周りの描写が最後カチカチとハマって一つの絵になるような謎解きにグワーってなりました。ラストも美しい……
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「生まれ変わり」という幻想的なテーマを使いながらも、奇術師らしい仕掛けに溢れた本格ミステリの傑作でした。主人公が随所で感じる既視感で、輪廻転生は事実ではないかと読者に思わせてしまうあたりも秀逸。
そして魅力的なヒロイン。ミステリでここまで可愛らしいヒロインがいたでしょうか?なんて現を抜かしていると、あんまりな展開に絶望。そこから物語は一気に結末を迎えます。
たくさんの人物の思惑が絡まって成された事件の構図は、トリックあり、作者らしい異形のロジックありと本格ミステリとしても申し分ないものです。
事件が収束して迎えるラストも美しく、幻想的な趣を深めています。
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実に上手い。正直、この話はいったいどう着地するのかと不安に思いながら読んでいましたが、広げた大風呂敷が見事に畳まれる様子は実に見事。
序盤の唐突な展開には若干戸惑いましたが、そこだけ乗りきったら一気読みでした。
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超常現象を扱っていながら、すっきりとこれを解いてみせます。でかい風呂敷を、あっという間に畳まれてしまったようです。殺人事件の顛末より、こちらの決着のつけ方が興味深いですね。奇術師でもある作者ならではの作品です。
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夢の中をうろうろするうちに、ガツンと目眩ましを喰らった感じ。
しかも、二、三発。そんな読書体験でした。
廃品回収の古新聞にまぎれて、樋口一葉の筆跡らしき紙の切れ端を発見。その出所を探るうちに、前世やら輪廻転生やらが絡んできて...
おいおい、この話どうなるんだよ、と思いながら一気読み。大満足のミステリでした。
ちょっと話を盛り込み過ぎかなとか、男女関係の描写が甘ったるいなぁ、というのは僕の好みの問題。なので★4つ。
事前に情報を入れずに読むことができて幸せでした。
だから、ちょっとでもピンと来たら、まず読んでみてください。
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前世の恋人をモチーフにした、幻想的な物語がやがて…
伏線と回収が、まるで精巧な寄木細工のように、小さな一片まで余さずぴたりとはまりこむ。
セルフ重箱の隅をつつくような「えっ、こんなとこまで?」という細やかな仕掛け。
伏線のお残しはゆるさしまへんで! …てな向きには、たまらない作品です。
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アーサカさんの第七長編。幻想とロマンスの塩梅が『湖底のまつり』に近い。
樋口一葉の未発表小説の発見から始まる。戦時中という特殊状況が生んだとある奇蹟に発展し、最終的には輪廻転生の真偽を問うミステリとなる。思想を超えて信念を貫いた者の究極の動機の一つと言えるのではないか。どっかの作家が"観念の動機"と読んでいたものかな(うろおぼえ)
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謎をてんこもりにして走る物語は夢中で読んだが、タネをロマンと見るか非現実と見るか……。渋く枯淡な雰囲気は、米澤穂信が影響を受けているのを感じる。
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「生まれ変わり」をテーマに据えつつ展開される前半はとてもロマンチック。前世では不幸があり結ばれなかった二人が、前世の謎を探るうちに明らかになる事実。
ラストでの怒濤の解決編と、しっとりと締めるラスト1行。素敵でした。
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輪廻転生をテーマに、前世で恋人同士だったと信じる男女の恋愛物語から幕を開けます。
二人はあらゆる場所で、あらゆる人から、物から記憶から、二人の前世からの繋がりを証明していきます。
が、そこで突然殺人事件が起きます。
それまでの幻想的な雰囲気や、不可思議な証拠の数々が一気に別の真実をあぶりだしていく怒涛の展開が凄まじいです。
悲しくきれいで、夢のような愛の物語を見ていたのに、突然リアルで厳しい現実に引き戻されるようです。
「どこかで、お会いしましたね?」という魅惑的な言葉の謎が最後まで残っていましたが、真実がわかったときには「そこであったんかい!」と突っ込まずにはいられませんでした。